812話)苗を育てる

 植物園のスタッフが育苗作業をしています。碣寺山の自然林などから、種子を集め、苗に育てて、敷地内に植え広げたのです。でも、経験がありませんので、最初はたいへんでした。ナラの種はドングリです。青いものは発芽しませんし、熟して落ちるとリスその他に食べられてしまいます。熟す時期がわからないので、何度も何度も通って、それでも200kgものドングリを集めました。

 それを二重のポリ袋にいれ、協力拠点の地下室で貯蔵しました。12月に私がいったとき、袋の口をゆるめると、プ~ンといい臭いがします。アルコール発酵してしまったのです。その年はなかなか気温が下がりませんでした。

 苗が育ってから、べつの拠点に見本園をつくるため、ナラの苗を届けてもらいました。それができ損ないばっかり。李向東が、いい苗は自分のところに残し、そうでないものだけを送ってよこしたのです。

 同じ苗でも、買ったものより、自分で育てた苗を大事にします。自分で育てた苗でも、種子を購入したものより、自分で集めた種子から育てた苗のほうを大事にします。その報告を立花先生にすると、「それがふつうなんだよ。だから日本で植物園をつくるときも、職員を誘って、種集めに歩いたものです」ということでした。

 育てたことのない種子を入手すると、数名のスタッフで、等分に分けます。そして、各自が数通りの方法で育苗を試みます。ほかの人間がどうやっているか、チラッ、チラッと気にしながら。けっこうライバル心もあるんですよ。そのおかげで、1年で10通りもの方法を試すことになります。
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