はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

ツマヌダ格闘街(1 )

2007-10-10 19:46:27 | マンガ
ツマヌダ格闘街 1 (1) (ヤングコミックコミックス)
上山 道郎
少年画報社

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「ツマヌダ格闘街(1)」上山道郎

 町おこしの一環で、路上での格闘技の試合と興業が合法化されている格闘技特区・妻沼田。文科系100%の温厚男・八重樫ミツルはイラストレーターを志して上京したものの、誤ってストリートファイター専用のマンションに入居してしまう。
 満足に喧嘩もしたことのないミツルは、諦めて辞去しようとするものの、メイド服を着た謎の少女・ドラエさんとの出会いもあり、流れのままに選手登録することに。筋力も体力も格闘技経験もないミツルだが、格闘技に精通するドラエさんのいう通りにしていたら、これがまさかの連戦連勝。ボクシング、テコンドー、キックボクシング、空手、ジークンドーの使い手達を、投げ技一本で倒しまくる。
 自分に格闘技なんてできるわけがない、自分は弱いんだと思い込んでいたミツルは、戦いを通して強さの意味を考えさせられた。見るからに強そうな人が、組み合ってみると意外とそうでもなかったり。逆に強そうに思えない人が強かったり……と思うと意外と脆かったり。強さってなんだろう。弱さってなんだろう。その答えを知るために、いつしか彼は、自ら格闘技の道に踏み込んでいく……。
 そんなミツルを心配して田舎から妹が上京。早々に不良に絡まれたのをミツルが助けたところで一巻は終了。
 メイドに妹と萌え要素をとり揃え、話間のページには格闘技講座もしっかり設置。加えてぶっちゃけた設定で、数ある格闘技もの漫画に一石を投じた良作。
 格闘素人がストリートファイト、というと「ホーリーランド」などを思い出すが、こちらは暗いところが一切ない。イジメも自殺もドラッグもないし、闘いはあくまで「試合」。割り切った関係が心地よく、気軽に読めるのがいいところ。 ドラエさんが日本古武術をベースにしているせいか、格闘薀蓄も身体運用に関するものが多い。ちょっと健康本みたいだが、気軽に実行できそうなのは○。
 難をいえば、ちょっと「理」に走りすぎること。古武術や中国拳法なんてのは「理」そのものだからしょうがないけど、ミツルの戦い方はおとなしすぎる。泥臭さが感じられず、そういった意味でのリアリティは感じられなかった。
そこでひっかかるのが、先に触れた「暗いところ」がない、という点。どんな綺麗事で包んでみても、とどのつまりは「相手を叩きのめす」ことが目的なのだから、もう少しミツルの心に陰が存在してもいいはず。百点満点の模範的解答には疑問が残る。

とめはねっ!(2)

2007-10-08 20:20:46 | マンガ
 ジャンジャジャジャ ジャンジャジャジャ
 ジャン! ジャジャジャジャジャジャジャジャジャ……
 聞き覚えのあるテーマが駅前のステージに流れる。暗幕を割って表れた3名の女の子が身を包むのは、二人の旅人と杖をついた老人のコスプレ。3人はバケツに溜めた墨汁と筆を手にとり、大きな画紙に歌詞を書いていく。
 1人目は「人生楽ありゃ苦もあるさ涙のあとには虹も出る」
 2人目は「歩いてゆくんだしっかりと自分の道を踏みしめて」
 3人目が「助さん格さんこらしめてやりなさい」でオチをつけると、観衆からどっと笑いが起こった。

「とめはねっ!(2)」河合克敏

 最近よく目につく文科系クラブの漫画。中でも一際異彩を放つ「書道部」漫画。それを「帯をギュッとね!」や「モンキーターン」の作者が書くということでなおさら興味深い本作。
 市民書道大会が終わってからは文化祭くらいしか目標とするものがないと知った元柔道少女の望月は、青春の情熱の傾け先がないことが不満だった。部活に出ても先輩の三輪や加茂はぐうたらしてるだけ。部長の姿は見えず、縁がこつこつ書き続ける以外はだらけた空気の漂う環境にイライラ。
 部長の双子の妹で、やはり他校の書道部の部長をしているよしみがバトルを仕掛けてきたことで事態は急展開を迎える。闘いという言葉に過剰反応する望月。よしみに一泡吹かせようと悪巧みする加茂と三輪。人前で揮毫することを恥ずかしがる部長。主体性のない主役・縁は事の成り行きの急激さにおろおろするだけ……。
 書道なんてどうやって話を見せていくつもりなのかと思っていたら、観衆の目の前でコスプレして揮毫するパフォーマンス、というのにはびっくりした。字の綺麗さだけではなく、音や見た目と奇抜な発想で勝負というわけ。
 それにしても作中に出てくる字はうまい。高校生の作品を転載しているものがほとんどだが、バランスの良さと大胆な構成には素人が見てもうならせられるものがある。
 各自の心の動きもいい。大勢の観客の前で、理解されるかどうかもわからない「自分の好きなもの」を表現することへの恐れ。反応が返ってきた時の喜び。努力と感動の分かち合い。それぞれに青春を味わっている様が微笑ましくくすぐったい。

花田少年史~幽霊と秘密のトンネル~

2007-10-07 12:28:42 | 映画
 時に空を見上げ、時に闇にたたずむ。
 ひっそりとしんみりと、言いたかった言葉やかなえたかった願いを思いふける。
 でもみんな知ってる。後悔先に立たず、覆水は盆に帰らない。過ぎてしまった出来事はどうにもならない。
 だけど煩悶は続くのだ。もしあの時ああしていたら、こんなことさえしなければ。強い思い入れが残響のように己を苛み、そして……。

「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」監督:水田伸生

 某大作RPGが人気で、発売日には徹夜の行列ができていたあの頃、花田一路(須賀健太)は母・寿枝(篠原涼子)と庭で対峙していた。いつもの光景にぴくりともしない家族をよそにエスカレートするだけしたバトルの末に、一路は自転車で脱走する。親友・村上壮太(松田昂大)と合流した一路は山道を疾走し、有名なお化けトンネルに抜け出たところで暴走するトラックと衝突し、涅槃を垣間見る。
 トラックを暴走させる原因を作った「成長する幽霊」香取聖子(安藤希)は猛省し、なんとか一路をこの世に連れ戻すことに成功する。
 事故が元で頭に九針縫う怪我を負った一路が、あの世の存在と触れ合うことのできる霊媒体質を手に入れて、あの夏は始まった……。
「ピアノの森」の作者・一色まことの手による人情幽霊話。ちょっと昔の日本のどこかの港町で、幽霊とコンタクトできる少年・一路がその能力を生かしてご近所の人々や父母の心の澱を洗い流すというストーリー。
 もともと外れの少ない分野だし、「ALWAYS~3丁目の夕日~」などで好演を見せた須賀健太ののびのびした演技や、篠原涼子、西村雅彦、北村一輝、杉本哲太、もたいまさこなど脇を固める役者陣の安定した技量のおかげできっちり見れる作品に仕上がった。安藤希の女子高生役はちょっと無理があった気もするけど、そのへんはご愛嬌。ほろりと泣ける死者との対話を味わっていただきたい。

ショートソング(1)

2007-10-05 20:31:33 | マンガ
 俺だけじゃなく、歌人というのはほぼ例外なく短歌を始めた頃が最大級に輝いていて、あとはその輝きの残像を追い求めていくしかない。そういう存在なのだ。
 
「ショートソング(1)」原作:枡野浩一 画:小手川ゆあ
 
 産みの苦しみに苛まれる売れっ子歌人・伊賀寛介が主人公……ではない。ハーフで美形で腰が低くて素直だけど童貞で英語が話せなくてファッションセンスのない大学生・国友克夫が主人公だ。
 ある日、同じ研究室の先輩・舞子にデートに誘われた国友。ファッションセンスのなさや自信のなさをガシガシけなされながらのハードなデートのさ中、連れ込まれたのは古いビルの一室の短歌サークル「ばれん」の歌会。本気で互いの歌を批評しあう熱い異空間に戸惑う国友は、慣れない短歌を詠まされた末に、ようやく自分が利用されていることに気がついた。舞子は自分に興味があるのではない。顔だけはいい自分を連れているところを恋人・伊賀に見せつけ、嫉妬させることだけが目的だったのだ。
 当の伊賀は策略の効果てきめんで嫉妬した。だが相手は舞子の男・国友ではなく容姿と文才に恵まれているくせに自覚のない男・国友だ。故に事態は混迷する。国友のことがうらやましくてねたましくてたまらない伊賀は、国友に見せ付けるように舞子とべったり。事あるごとに呼び出しては短歌の作法を教えつつ舞子とべったり。国友が振り回されて苦しむ様に不思議な快感を覚えていく。その感情は恋にも似て……。
 なんとびっくり。小手川ゆあの最新作は短歌がテーマ。原作つきということもあってか、今までの作風を覆すようなエロさとマニアックさを醸し出している。産みの苦しみや短歌への愛という本筋はさておいて、特筆すべきはキャラクターの秀逸さ。完全サドの伊賀。伊賀への強い執着を持つ舞子。AVに出演してまで自費出版本を出した美女・瞳。舞子や瞳に振り回され、さらには伊賀にいたぶられつくしながらも清潔な精神を失わない国友。作中に出てくる短歌の良し悪しはわからないが(プロの作品らしいが)、キャラ同士の絡みを見ているだけでも十二分に楽しめる。良作。

K-1ワールドMAX世界一決定トーナメント決勝

2007-10-03 23:37:15 | 格闘技
 K-1ワールドMAX世界一決定トーナメント決勝

○魔裟斗VSブアカーオ・ポー・プラムック× 3R判定3-0
 ダントツの優勝候補ブアカーオとの3年ぶりの激突に真剣な表情の魔裟斗。
 1R。コンディション良好の両者。パンチもキックも届く手ごろな距離でのバチバチの打ち合い。
 ローが走るブアカーオ。パンチに活路を見出す魔裟斗は、左ジャブとフックに右アッパーを混ぜたコンビネーションがかなり有効。縦軸と横軸の絡み合う攻めでブアカーオのガードに隙を作り、2:35左アッパーから右ストレートを当て、ダウンを奪う。
 2R。アッパーを多用する魔裟斗。ブアカーオはローに狙いを絞り、魔裟斗が嫌がる場面も。
 3R。金星の予感に沸く場内。スタミナある魔裟斗は最後まで休むことなく攻め続け、何発かは有効打も奪った。判定だが完全勝利。

○アルトゥール・キシェンコVSマイク・ザンビディス× 3R判定3-0
 テレビ放映では3Rからの開始。
 3R。回転の速い横軸での攻めが特徴的なザンビディス。対するキシェンコはリーチ差を生かしてミドルレンジで蹴る。時折あるザンビディスの飛び込みはガードを固めて凌ぎ、打ち終わりにきっちりパンチやキックを合わせる。
 EXR。3Rでは決着つかずの延長戦。どちらも運動量は落ちない。キシェンコ膝を有効に使いそのまま判定勝利。

○アルバート・クラウスVS佐藤嘉洋× 3R判定3-0
 1R。佐藤いつも通りのリーチ差を生かしたミドルレンジでの眠たい試合……にはしない。インファイトで果敢に打ち合う。ガードが甘く、クラウスのパンチを何発も被弾するも、膝とローを効かせ優勢。
 2R。クラウスはパンチに出足へのローを加える。
 佐藤は方針変更なしだが、上下に散らされた攻撃に幻惑されパンチ被弾量増える。後半左フックもらいぐらつく場面も。
 3R。クラウス上下の打ち分けがうまい。何度もラッシュをかけ佐藤を追い込む。
 佐藤はいつもと違う。最後まで引かずに打ち合った。判定破れはしたが、根性見せた意義ある敗戦。

○アンディ・サワーVSドラゴ× 2RKO
 スロースターター……というよりは変速機を搭載しているサワーに対し、変則強打のドラゴという面白い組み合わせ。
 1R。サワーがローブローをくらった他はおとなしい展開。とはいってもさすが実力者同士で、動きひとつひとつの速さ重さが違う。
 2R。ギアを上げて優勢に進めていたサワー。1:40電光迸るライトクロス。実力者ドラゴを一撃で切って落とした。

○魔裟斗VSアルトゥール・キシェンコ× 2RKO
 1R。ザンビディス戦で痛めたキシェンコの出足を狙う魔裟斗。ローの連打がめちゃめちゃ効いている。しかし意識が下に集中しすぎてパンチをもらいぐらつくお茶目なシーンも。
 2R。8人の中では見劣りするとはいえ十分に強いキシェンコだが、今日の魔裟斗はものともしない。打ち合いのさ中カウンター気味の左フックを直撃させて00:41KO勝利。

○アンディ・サワーVSアルバート・クラウス× 3R判定2-1
 1R。クラウス、パンチで前に出る。ボディがいい味を出しているが、出足へのローを効かせられ今後のラウンドに不安を残した。
 2R。まだまだギアを上げられる絶好調のサワー。全力を出すとクラウスクラスでも手が出せない。パンチキック膝も含めた全方位のコンビネーションにローを折りこみ、完全に圧倒する。
 3R。劣勢のクラウス。一歩も引かない意地の打ち合い。判定までもつれ込む根性を見せた。

○HIROYAVSクオン・オルチャン× 3R判定3-0
 この試合はハイライトのみ。

○アンディ・サワーVS魔裟斗× 3RTKO
 1R。サワーへのローブローで始まった決勝。互いにローを打ち合う両者。パンチでは手数の多い魔裟斗が若干有利か? だがこれまでの試合での足のダメージそのものの累積を考えると微妙なところ。
 2R。さらにスピードアップの全力サワー。魔裟斗果敢に打ち合うもローの被弾が積み重なり苦悶の表情。
 3R……はなし。魔裟斗立てずセコンドタオル投入。
 確実に強くなっている魔裟斗。ブアカーオ倒したところまではよかったが、ほとんどダメージの残っていないサワー相手では勝てなかった。残念。

Vフォー・ヴェンデッタ

2007-10-03 10:12:26 | 映画
「死ね! 死ぬんだ! ……なぜ死なん!?」
「仮面の下にあるのは理念だからさクリーディ君。理念は決して死なない」 

「Vフォー・ヴェンデッタ」監督:ジェームズ・マクティーグ

 第三次世界大戦後の、米国が植民地化されるなど混沌とした世界。アダム・サトラー(ジョン・ハート)議長が全権を揮う全体主義の英国は、夜間の外出が禁止され、公然と盗聴がなされ、秘密警察が闊歩する陰惨な国家と成り果てていた。国営放送局に勤めるイヴィー・ハモンド(ナタリー・ポートマン)は上司との約束を守るため夜中に外出したところを秘密警察に捕まり、暴行されそうになる。そこに現れたのは黒ずくめの衣装にガイ・フォークスの仮面(1605年に英国で起こった火薬陰謀事件実行犯の面。見た目は「翁」の面に似ている)を被った謎の男。卓越した短剣二刀流で秘密警察を叩き伏せると、男は自らをV(ヒューゴ・ウィーヴィング)と名乗った。国家転覆そして無政府状態を狙って暗躍するテロリストである。
 裁判所を爆破したVとの関係を疑われ、家に戻れなくなったイヴィーは、やむなくVの隠れ家・シャドウギャラリーで共同生活を営むようになる。まず驚いたのはVが普段から黒ずくめの格好で生活し、片時も仮面を外さないことだ。花柄のエプロンを腰に巻いてフレンチトーストを焼く姿はシュールどころの騒ぎではない。フェンシングの構えで中世の甲冑を相手切り刻む時だって、もちろん仮面つき。表情がわからないから見た目がものすごく怖い。
 国営放送局を乗っ取るVの手助けをし、Vの仇・リリマン主教をたぶらかす役をこなしたイヴィーだが、彼との生活が怖くなり、その足で逃亡する。しばらくは国営放送局の番組司会者ゴードン(スティーヴン・フライ)の家に潜伏するが、当のゴードンが家にいるところを秘密警察に襲われて連れ去られてしまう。イヴィーはその光景を目の当たりにしながら何もできず、しかも家から脱出しようとしたところで頭から袋をかぶせられ、捕らわれの身となる。
 イヴィーは独房に収監され、頭を丸刈りにされた。粗末な食事と不衛生な生活環境、水責めでの尋問と、見てるほうがかわいそうになってくるような仕打ちのさ中、彼女は壁の裂け目からトイレットペーパーに書かれた手紙を見つける。それは同性愛を咎められ、ここに閉じ込められていた女性・ヴァレリーの手記だった。ヴァレリーのパートナーへの愛の深さ、悔しさや孤独を知り、イヴィーは勇気付けられる。今まで何に対しても受身で、びくびくと暮らしていた自分が小さな存在に思えた。もう迷いはない。最期の瞬間まで戦うのみ、と臍を固めた。
 一方で、エリック・フィンチ警視(スティーヴン・レイ)は、かつてテロリストによって爆破された収容所にVがいたことを突き止める。同時に、彼が効率よく人を死に至らしめる薬の被験者になっていたことを知る。薬効を乗り越え生き延びたことにより超人的な能力を身につけたこと、血の復讐(ヴェンデッタ)への思いも含めて……。
 
「マスク・オブ・ゾロ」のような爽快な活劇を想像していたから、ダークなストーリー展開に呆然とさせられた。Vはイギリスのコミックを原作とした存在で、だが正義のヒーローではない。理念なんて言葉で武装してはいるけど、実際にはただの復讐鬼にすぎない。醜く焼け爛れた顔と心。Vは己の矮小さを知っている。人を愛していい存在ではない。だからこそというか、イヴィーへの想いは歪んでいる。話の後半のイヴィーへの仕打ちは、たとえそれが本人のためだったとしても、あまりにむごい。だけど、それが自分の知る中で最も効率のよいやり方だった。
 面白かったか? と聞かれれば首をかしげざるをえない。アクションシーンはあまりないし、全体に説明不足。だが、異様異彩を放つ映画であることはたしかだ。人が何かを願い、何かを望み、そのために手段も犠牲も厭わぬ姿はそれだけで感動的だ。そこには強い人の意志があるから。源が愛であるならなおさら。

少女ファイト(3)

2007-10-02 20:12:39 | マンガ
「少女ファイト(3)」日本橋ヨヲコ

 新入生同士の3対3マッチが終わり、ようやく始動の黒曜谷高校女子バレー部。部員不足でまともに試合も出来なかった前年の悔しさから、今年は一人の脱落者も出したくない犬神キャプテンの目の前でいきなり新入生のナオがサボり……どころか学校にも来ない。
 小学生の頃からの親友延友の電話にも出ず、メールも総シカトときてはただ事ではない。もともと男運のない女だから、どうせまたろくでもない男にでも捕まって泣いてるんだろうと突き放す口調の延友の表情にも、隠しきれない焦りの色が浮かぶ。
 練達女子部員やミチルの懸命の捜索の末、ようやく発見したナオの居場所は「池袋ガールズベットバレー」。扇情的な格好をした女子バレーボーラー達の賭けバレーが行われているという秘密クラブ。なんとナオはその首謀者本間と付き合っていて……。
 ミチルはウエイターになりすまし、女子部員たちはツクッた私服姿で観客に紛れ込む。昔太っていた小田切や優等生の伊丹、スケ番延友の女の子ぶりが板についてなさすぎて微笑ましい。知人や学校関係者にばれてはならない緊張感も、なんだか楽しげ(外野だからこそ?)。
 ナオを解雇させるために飛び入り参加のチームとして直接対決。という流れは予想通り。しかし練の昔のチームメイトが対戦相手にまぎれていたり、さらにはなぜか黒曜谷の先輩3人衆までもが混じっていたりと、常に一本調子にならない工夫がある。
 日本橋ヨヲコらしさはそれだけにとどまらない。海外へ渡っていた練の友達・唯隆子。男バレの元中学MVP三國の弟・広之。陰湿で狡猾な、この新キャラ二人の徹底した腹黒さがよかった。本当に、最初から最後まで休む暇がないほど見所充分。早くも次巻が待ち遠しい。