移動都市 (創元SF文庫)フィリップ・リーヴ東京創元社このアイテムの詳細を見る |
暗い荒れ模様の春の午後。ロンドンは小さな岩塩採掘都市を追いかけて、旧北海の干上がった海底を失踪していた……。
「移動都市」フィリップ・リーブ
核とウイルス変成爆弾の嵐吹き荒れた60分戦争により、世界の秩序は変わっていた。大地が荒廃し人の住める土地が少なくなり、よりマシな土地を目指して都市そのものがキャラバンのように、国家まるごとが私掠船のように移動と補給を繰り返す必要性に迫られた。
はるか未来のスチームパンクは、なんと都市にどでかいキャタピラの足が生えている。口には牙が生え、大砲や飛行船、果てはとりついての肉弾戦その他もろもろを駆使し、互いに食い合う乱世となっていた。
かつての栄光を思わせる巨大な7層構造の移動都市・ロンドンの史学ギルドに所属する三級見習いトム・ナッツワーシーは、獲物を追うロンドンの勇姿を見たくて言いつけを破り、ために衛生状態劣悪な最下層での作業に追いやられた。だが捨てる神あれば拾う神ありで、トムは伝説の冒険家にして史学ギルド長サディアス・ヴァレンタインに出会う。自分なんかに親しげに接してくれるヴァレンタインの優しさに触れ、有頂天となったトム。なんとかいいとこ見せようと捕獲した都市の残骸を漁っていると、謎の少女へスター・ショウがヴァレンタインの命を狙うところを目撃する。これに果敢に立ち向かい、暗殺を未然に防いだはいいが、事態は二転三転し、トムはロンドンより転げ落ちてしまう。不浄で野蛮な反移動都市同盟の住む大地で、彼は夢想もしていなかった数々の危機に直面する。それはロンドンを、そして世界そのもののバランスを揺るがす大事件の発端だった……。
設定勝ち。1行目の掴みからして別格のユニークさが漂う。かつての大航海時代の海賊たちのように都市同士が相食む様は、熱く面白い。トムとヒロインのへスター・ショウのやり取りはいかにも少年少女らしくて微笑ましいし、頑固な史学ギルドの面々との掛け合いや、各都市に住む個性的な人々との出会い、均一でない都市ごとの性格の違いなど、見るべきところは豊富。翻訳体の文章もくどくなくて読みやすく、ページを繰る手が止まらなかった。
シリーズものだということもポイント高い。2巻「掠奪者の黄金」を速攻注文してしまった。
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