はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

歌麿殺贋事件

2007-04-18 22:42:41 | 小説
「歌麿殺贋事件」高橋克彦

作者の出世作・浮世絵三部作に登場し、その後も「パンドラ・ケース」など多くの作品に顔を出し続ける人気キャラクター塔馬双太郎。彼を敬愛してやまない美術現代の雑誌編集・ガスタンクこと杉原を主人公に据えた番外編だ。天才に心酔する凡才の視点から見た短編集である。
・歌麿の首
・歌麿捜索願い
・歌麿真贋勝負
・歌麿の秘画
・歌麿カタログ
・歌麿因果
各章の題名どおり、今回のテーマは喜多川歌麿。美人画、特に大首絵(上半身のみがモチーフ)で世の多くの美女を描き一世を風靡した繊細流麗なる浮世絵師だ。歌麿の贋作で甘い汁を吸おうとする悪党どもの悪巧みを、快刀乱麻を断つが如くばっさばっさとぶった切る塔馬の推理は相変わらずの切れ味だ。敷き写し絵、真贋勝負、直し色ざし、歌麿=写楽説、カタログ商法と、各章ごとに手を変え品を変え、様々な角度から歌麿という絵師に迫る作者の豊富な知識と愛情にはほとほと感心させられる。「日本の○○」なんて言葉は好きじゃないが、これはまさに日本のダ・ビンチ・コードだ。美術ミステリの大家の職人芸をうっとりと堪能していただきたい。
また、杉原だけではなく、普段は目立たない塔馬の美人アシスタント糸島奈津子や、かつての主役津田良平にもわずかに出番があるのもファンにとっては見逃せないポイント。一見から常連まで幅広い層をおさえた贅沢な一冊なのだ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿