はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

魔女

2011-06-26 13:55:41 | 小説
魔女 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋


「魔女」樋口有介

 アフロヘアーの母、テレビリポーターにして自由奔放な姉・水穂、実業家にして雇い主な恋人・美波。3人の強い女に囲まれた主人公・広也は、大学を卒業したにも関わらず定職を持たず、美波のガーデニング業を時折手伝うモラトリアムな日々を過ごしていた。未来への展望も気力もない広也は、ある日、大学時代の恋人・千秋の死を知る。
 特ダネの匂いを感じた水穂の命令で、千秋の死の真相を探る広也。次々と浮かび上がる、とても同一人物とは思えないような様々な千秋の姿に、広也は困惑する。いったい、彼が付き合っていたのは誰だったのか。死んだのは、本当に千秋だったのか……。

 ま、いつものやつです。さすがにぶれない、青春ハードボイルド職人、樋口有介。
 広也と千秋のつき合いは、たかだか3か月だけのもので、実際たったそれだけのつき合いで彼女の何がわかるという感じはするのだけど、それでもあまりにも証言者と自分の持っているイメージの食い違いがひどすぎて、そこがミステリな部分なわけです。死んだのは千秋なのか。千秋だとして、じゃあ20何年かの人生の中で、広也に見せたその一瞬の姿は、いったいどういう意味のあるものだったのか……。

「あんた、フロイトの初歩も知らないの」
「なんだよ」
「忘れるためには分析と認識が必要なの」 

 ところで、作中のこんなセリフにふと感じるものがあったのは、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」の影響がまだ残っているせいかもしれません。分析と認識、知ろうとしなければ、考えようとしなければ、忘れられないことってある。そういうことですかね。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿