恐怖だったァ！

　月末の高野山への遠足、今の仕事を終えなくちゃいけねぇ。オイラの持ち分は見通しがついたが、Ｓ専務クンはどうも出来ない様子だ。忙しすぎるのか、この仕事に向いてないのか、全部が虫食い状態なのだ。
　
　さて、見通しがついたとは言え、残すは一週間、休憩時間を削りながらパソコンに向かっているが、コーヒーだけは飲みたくなる。それと糖分補給の飴玉は一日二個と決めている。コーヒーと飴で、黙々とこなすオイラなのだ。
　
　先ほど居間のコーヒーメーカーへ、レースカーテン越しにベランダが見える。ベランダに、人が倒れている・・・。オイラにはそう見えてしまった。見慣れた妻の茶色のダウンコートだ！。
　
　もう、心臓が口から飛び出すほどビックリしたのだった。早鐘のような心臓は治まらないが、どうにか落ち着き、よく見れば、風に吹かれて落ちたコートだった。「わぁ～ビックリしたぞ！。ちょっと見なよ」って妻を呼び、二人で笑ったのだった。
　
　思い出せば、婆さまがコケたときもそうだった。ベッドから落ちた時もそうだった。オイラたちも当然歳を重ね、足腰が弱ってきた。お互い気をつけような、と言ったのだった。おしまい。