身近な口利き、危ういねぇ

　大臣が口利き疑惑で辞職して一ヶ月。かなりのお金を懐にしたことでしょう。口利きの理由が現金なのは、誰にも分かる理屈です。しかし世の中には理由が分からぬ、気色の悪い口利きもあります。今日はそれを書きます。
　
　私の団地は、全戸に一台の駐車場があります。正規の駐車場ですから、車の買い替えに必要な車庫証明がもらえます。持ち家の場合は、自分で警察署に届け出なければなりません。近頃はディーラーが代行してくれますが、悪質なディーラーは、車を売りたいばかりに、一台の駐車場に複数の車を当てる、いわゆる車庫飛ばしをすることがあります。悪質な場合は逮捕されます。
　
　いま住んでいる団地や以前住んでいた公営アパートの場合は『駐車場係』が警察の代行をします。つまり、団地の組織が公文書の発行ができるのです。
　
　数年前、駐車場係の方から、電子データーの変換を依頼されました。本来、車両台帳は部外秘です。駐車場係が保管して、次期係に引き継がねばなりません。しかしマック使用者がいたり、エクセルのバージョンが異なっていたりしますので、紙媒体の台帳が正本となります。しかし、住人の車両買い替えのたびに追記していたデータが壊れ、過去資料の閲覧ができなくなりました。
　
　データの修復は簡単でした。確認のため、駐車場係の人と台帳と突き合わせていたら、駐車場係が驚きの表情で、過去データの一カ所を見つめ「この部屋の人は毎年買い替え？そんなバカな！」とつぶやきました。
　
　私は、過去に理事長も経験していますので、車庫飛ばしを疑いました。間違いであっても、悪質ならば車庫証明発行の資格が取り消される場合もあります。
　
　車両係が当該部屋の住人に尋ねたところ、娘さん達の結婚祝いに車を購入し「車は嫁ぎ先で使う。団地の駐車場は使わない」と、当時の駐車場係に話したそうです。すると当時の車庫係が「貴殿は善良である。貴殿のような方にこそ、車庫証明は発行されるべき」と・・・。「いけないことと知りつつ、不法な車庫証明を利用してしまった」と謝罪されました。
　
　「善良な人には恩恵を与える」って気色悪いですねぇ。「金をもらっていないから良いだろう」なんて理屈は許されません。「発行するからゲンナマをよこせ」って言うなら、『あ！お金が欲しいんだ』ってねぇ。街の怪しげな月極駐車場にありがちな話だけど・・・。
　
　人間って、小さな権力でも握ると、口利きがしたくなると思います。小さくても、この種の権力は己の見栄を満たすからです。
　
　記録台帳には『駐車場係は署名捺印。台帳は永久保存』とあります。当時の係の方は既に故人です。ちょっとした見栄から芽生えた小さな口利きは、時にして汚名の元になるかも知れません。私は口を閉ざしますが、いつかは公開され、誰かが気づくでしょう。良かれと思って成された『政府の密約』のようにネ・・・。