治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

こよりさん論 謎の見張り合い社会

2017-07-11 09:21:21 | 日記




こよりさんただ働きの件につき「確認しなかったのが悪い」というもっともらしい人がいますが
これこそ「いじめはいじめられている方が悪い」と同じく筋の悪い議論だということはご自覚くださいね。
いじめはいじめられている方が悪い、っていう人がいたら集団でそろって非難しそうな人たちが同じ口で確認しなかったらただ働きも仕方がないみたいなことを言う。
佐々木先生の名誉を守りたい気持ちはわかりますがこれとそれとは話が別。
多くの親御さんが佐々木先生に癒しを見出したことを否定するものではありません。私は一度もご本に心を動かされたことはありませんが、ちゅん平さんでさえ弱っていた時は癒しを見出したようなので、弱っている人にはちょうどいいコンテンツを提供していらしたのでしょう。
そして昨日の記事にいただいたコメントによると、当事者の方にも冷たかったようですね。というか少し、面倒だと思っていらっしゃったのかな。面倒ごとを避けたい、というギョーカイのDNAをしっかりお持ちだったのかもしれません。だったらまあ、YTの件は死んだふりするのは当たり前でしたね。

今回こよりさんのただ働きを知り、ちゅん平さんもフラッシュバックがあったそうです。
それは、謎の罪悪感。
「私はこれまで講演をしたらそのたびに報酬をいただいてしまった」という謎の罪悪感です。
でもニキさんもこの点思考回路は似ている。
他人と比べて恵まれている自分をずるがるんです。
私には謎。だから自閉由来かと思っていたのですが、どうやら見張り合い社会(当社比)を知っているとこういう思考回路が定型の人でもできあがるようなので、必ずしも自閉由来ではないようです。

そしてちゅん平さんがこれまで報酬をもらいそこねたことがなく、こよりさんはもらえないこともあった、主催者にひどいこと言われたこともあった、という事実から皆さんは何かを学べると思います。ギョーカイがどういう人たちなのか。

弱者の味方? とんでもない!
バックがある人とない人ではころっと態度を変える。(精神的な)田舎者の集まりです。

見張り合い社会に関してはむしろ私の方がレア。諸条件が重なって、育ちの中でうまいことそういう見張り合い社会を避けてきたんですね。だから猿烏賊山が初の出会いだったわけです。
だからその卑屈さにびっくりした。でも傍で見ていて「ああいう集団はどこにでもいます」という感想を持った人も多かったのですね。

さて。

セントレアからのこよりさんの便と羽田からの私の便は同時刻に那覇空港に着くはずでした。まあ理論的に。現実には無理です。着陸は一本ずつでしょ?
でも羽田のテイクオフはお約束どおり飛行機がラーメン屋に並ぶ人間のように並んで順番待ち。10分遅れで那覇空港に着きました。電波入れていいと言われたとたんにこよりさんと山城さんからメッセージが。山城さんは車をどこに停めてあるか教えてくれていて、看板を目印にしていた。でもこよりさんは目の病気で視野に欠けもありますから看板を目印はきついかな、と思って予定通りの場所で待っててもらうことにしました。そしてそこで荷物をたくさん持った上に杖をついているこよりさんをピックアップして車を探します。

車内では最初こよりさんの独演会。これはまあ、自閉っ子あるあるです。初対面の緊張を解くためなのか、沈黙の時間を作ってはいけないという謎の義務感なのか、会った直後の自閉圏の人が独演会を続けるのは羽田のテイクオフ待ちと同じくらいあるあるな現象です。いったんは独演会のシャンパンタワーを満たしたほうがいい。というわけで私はじっと聞いていました。山城さんも聴いていた。きっと勉強になったと思います。

私はこよりさんの子育て方面等の話はもう結構聴いていますが、改めて聞く生い立ちと、そして現在のお友だちづきあいが新鮮でした。

実は今回の話が決まるとき、山城さんとメッセージを光の速さでやりとりして、さっと私のスケジュール→こよりさんのスケジュール→会場という順番で抑えました。その速いやりとりの中で私がきいたのは「この日私と一緒に沖縄に行けますか?」ということで、「行けます」という返事がきました。そしてしばらくしてきた質問は「ところで沖縄はなんのために行くのでしょう? 観光ですか?」というもの。

いや、そんなわけないでしょう。私がこよりさんを誘ったら、お仕事以外にないじゃないですか・・・

と思ったのですが、これが「あのさ~それくらいわかるだろうふつ~」という「モンダイな想像力」かもしれません。こよりさんは家庭の主婦。そういう人を費用も時間もかかる沖縄観光旅行に気軽に誘ったりしません。でも佐々木先生は何十万円もするノースカロライナへの旅行に誘ったそうですけど。

まあともかく、沖縄に行くということで、息子さんからもだんなさんからもこよりさんはお小遣いをもらってきたそうです。だからお土産を買わなくてはと言っていました。そしてそのお小遣いに関してもお友だちはぶつぶつ言うらしいのですね。

こよりさんの話を聞いていると、周囲のお友だちの民度の低さ(ブ)にびっくりすることがあります。でもそれがスタンダードな世界もあるんでしょう。

そしてニキさんとかは、その世界で「なんとか叩かれまい」と必死になって自責に走る感じ。ちゅん平もそっち系なのかも。ニキさんほど自責的ではないけど。でも「私は報酬もらえなかったことなかったごめんなさい」みたいなのはそっち系の発想ですね。

私はそもそもそういう世界を知らないから、レアな出会い(猿烏賊山)があると「なんだこいつら」と蹴散らす感じ。「○○さんだけ報酬もらってずるい」とか言う人がいたら「仕事したら報酬が発生するのは当たり前。ひがみっぽくてやだね!」って言い返す感じ。

そしてこよりさんはもっとのらりくらりとやり過ごして喧嘩もしないけど同化もしない感じです。
決して無理していない。でも喧嘩もしなければ同化もしない。

これはなんなんだろうなあ、と私はこよりさんのおしゃべりを聴いていました。

あ、ちなみにこの「シャンパンタワーを満たすおしゃべり」についてあるときニキさんに言われたことがあります。

「浅見さんは大して真剣に聞いてないんだよね。だから気軽にしゃべれるんだ」

ばれてたのか~と思いました。