治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

はじまりは佐々木正美先生(かもなあ) 猫本続報!

2015-11-20 17:57:03 | 日記
最初にこよりさん(当時賢ママさん)とお付き合いが始まったのはもう10年以上前からです。そのときから、すごいお母さんだなあと思っていました。介護するご高齢者がおうちに四人いて、お子さん二人が凸凹で、だんなさんは別に協力するでもなく、でもそれに不満を持つわけではなく、しかも当時は本屋さんでバイトまでしていたのです。

そしてその後、賢ママさんはときどき佐々木正美先生の相方として講演に呼ばれることがありました。かといって、佐々木正美先生の説を裏付ける役ではないのです。「先生それは違います」と突っ込む役なのです。「頑張らせてはいけません」という佐々木先生に対し「教えるべきことは教える」方針の賢ママさん。「偏食は治してはいけない。治すのは自閉症の子にとって苦痛なことです」という先生に対し「偏食は治すべきだし治せます」という賢ママさん。「自閉症の子は跳び箱なんて跳べないので学校で教えないでほしい」という佐々木先生に対し「ウソ言わないでください。うちの子は歩くのもおぼつかなかったけど修行の結果今では七段跳びます」という賢ママさん。ギョーカイの大メジャー佐々木正美先生も、賢ママさんに言わせると「自閉症に関して間違ったこという気のいいおじいちゃん」だったようでした。

それでも賢ママさんを重用するところを見ると、佐々木先生実はなかなか器が大きいのかもしれません(じゃないかもしれないけど)。まあともかく、その後賢ママさんはご子息二人が職業人となり、お子さん二人にお小遣いもらって楽隠居。横浜にもよく来てくださいます(お子さんたちからもらったお小遣いで)。そして佐々木先生が齢を重ねてなお親業を引退なさらず、せっせと働いている講演現場に出かけ「子どもからお小遣いもらってきました」とかドヤ顔(?)しているそうです。

ずーっと前から佐々木先生は「あなたは本を書きなさい」と言っていらしたそうです。それは賢ママさんから聞いていたのですけど、そういうの私反発感じるんですよ。嫌いなんです。そういう無責任な発言。本を書けというのなら、きっちり版元まで紹介したらいいじゃないですか。でもまあ私も賢ママさんの子育てには魅了されていたんで、ぽつぽつ書いて送ってもらって一応PCには「賢ママさん」のファイルがあったんです。それでもね、なんとなくまだ神様が降りてこなかったんですよ。単なるスーパーお母さんの手記じゃいじける人いっぱいいるしね。いや、いじけてもいいんだけど、役に立ててもらえないと版元として出す価値がないし。

そして神様が降りてきたのは、この夏、鹿児島行ったあと、休暇に旅立つ前の日です。この間にご存じのとおり私はギョーカイに愛想つかし、鹿児島でさえいろいろ有って、それでようやく、ママ業を引退して賢ママさんからこよりさんになられたこよりさんのマーケティング方法がわかったんですよ。「支援者なくとも、自閉っ子は育つ」を地で行っている人だから。

十年前はみんな、夢を見ていられたでしょ。支援があれば支援があれば支援さえあればどうにかなる。ところが支援がそれなりに行き渡ってみれば、支援者いても役立たずのことも多いとわかった十年だったでしょ。

でもその間にこよりさんは、老人介護して四人看取り、だんなさんの一時的な失職やなんかもあって、そしてお子さんの不登校の時期もあって、それでも上のお子さんは勤労学生→バイト→正社員採用、下のお子さんは高等養護のお受験からの就職、とか、どんどん親をラクにしていってくれてたんですね。

最後にご主人のお父さまを送り出し、おうちにたった一人になったこよりさん。

その朝、メールをくださったのです。

嫁いで二十数年間。やっと家に一人になりました。

私のような気楽な者には考えられません。やっと、一人。それまでは、つねに世話をする誰かがいた状態。

しかも、ご自分も二ケタに上る持病を抱え

そのしんどい身体がだいぶ栗本さんのおかげでラクになって、数値もよくなって薬も減ってきたのを感謝してくださっています。

みんなね、「あれがない」「これがない」言うでしょ。もちろん私も含めてね。

療育だって「もっと支援者がいれば」「うちにもっとお金があれば」「夫の理解があれば」と色々思うでしょ。

そういうのを求める気持ちは否定しません。ほしがるな、とは言わない。

でも時間もお金も夫の理解もとにかくなんにもなくて、ここまで見事にお母さんをやった人がいた。

そしてそれは再現可能なんですよ。

なんでかっていうと
支援者もいなかったしお金も時間も夫の協力もなかったけど

こよりさんには○○があったんです。
そして支援者につながらなかったから、自分の中にある○○をおおいに発揮できた。誰にも邪魔されずにね。

そしてその○○は皆さん、持ってるはずなの。でも支援者はしばしば、それを使うなというのよ。そして親子ともに病んでいくの。

南雲さんが「当事者の中にあるものを使おう」と提言した。

そして今回はこよりさんが「お金も時間も夫の理解もなくても、親が持っているものありますよ」と教えてくれる。

そういう本です。

お楽しみに。