治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

脅迫メールが届いたよ!

2012-11-08 23:28:06 | 日記
横浜にオフィスウィングさんという高機能の人専門の作業所があります。
今や有名ですよね。ご存じの方も多いのでは?



私もずーっと前に取材に行ったことがありますが
今晩、そこの利用者を名乗る人から、会社に脅迫メールが届きましたよ。
一応オフィスウィングさんにすぐに知らせておきましたので
その文面を公開しますね。

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発達障害関連の書籍を出版しております花風社という出版社の代表を務めます浅見と申します。
だいぶ前ですが、○○氏とともにオフィスウィングさんを訪ね、取材させていただいたこともあります。
さて、本日ご連絡申し上げましたのは、貴法人の利用者を名乗る人物から、下記のような脅迫メールが寄せられたためです。

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浅見淳子さん。 大阪の姉殺し事件の大東一広被告の裁判の時も、裁判員をして被告に刑を課するのに賛成した一人ですね。 横浜市にあるオフィスウィングという所で、テープ起こしという音声情報を文字化させる仕事をしているから、色々と情報が(漏洩されるかのように)入手出来ちゃうんですよ。 情報を知ったついでに発煙筒でも投げつけに行きます。
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もちろんこれは事実無根です。私は立場上、裁判員を務める可能性はとても低いと思います。
また、この文面からは、貴法人があたかも情報の漏洩をなさっているような印象を受けますが、ご存じのとおり貴法人と弊社には一切のお取引はございません。
またこの人物が本当に貴法人の利用者ならば、顧客の情報を漏洩をにおわせるようなことは信用にかかわると思います。
私は十年間にわたり、自閉症者による法的被害を受け、今年有罪判決が下ったのをきっかけに先日「自閉症者の犯罪を防ぐための提言」という本も出しました。 発達障害の人が自分の意に沿わない事柄や人間に不快感を抱き、それを行動化し、犯罪行為につながるケースを一件でも減らしたいと思います。ですからこの件も、はっきりと公表いたします。
この人物についても、法的措置を前提に動きます。貴法人へも関係機関から、問い合わせがいくかもしれません。
当該のメールアドレスは×××××です。お心あたりがありますでしょうか。
取り急ぎお知らせまで。

(株)花風社 代表取締役社長

浅見淳子

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えーと、発達障害と犯罪は、関係ないんでしたよね?
ほんとだー(棒)。


先進国でなくなれば

2012-11-08 10:48:45 | 日記
読むのがつらい本を読み終えた。
石井光太著「レンタルチャイルド」。



皆さんは、四肢のない物乞いに出会ったことがあるだろうか?
私は、二度ある。両方とも、日本国内ではない。一度は先進国で、一度は発展途上国で。

胴体で直接道路に立ち
お金を求めて叫び声を上げていた。
その悲惨な姿に、思わずいくばくかのお金を差し出したのを覚えている。

こちらは物乞いに免疫のない日本人だ。
アメリカでさえ、サンフランシスコの路上でコーヒーカップを差し出してきた物乞いはいたけれども
日本ではそういうタイプの物乞いって見ない。
きっとコンビニの賞味期限の切れたお弁当とか食べてるのだと思う。
そしてそれでさえ、貧しい国の庶民から見ると、きっとごちそうなのだろう。

そういった物乞いのいない国から出かけ
四肢のない物乞いの姿に、思わずお金を差し出した私はウブだったようだ。
貧しい社会の物乞いたちは、たくさんお金をもらえるように、子どもたちの四肢を切り落とすという。
目をつぶしたり、やけどを負わせたり
できるだけ悲惨な姿にして、さらすのだという。
そのほうがお金をもらいやすいから。

そしてその子どもたちは、子どもらしくなくなったら捨てられる。
障害のある身体で道ばたに放り出され、やがて悪の道に入っていく。

国全体が貧しいということは、こういうことなのだ。

でも、日本もいつまでも豊かでいることができるか、それはわからない。
そういう瀬戸際に、私たちは立っている。

私たちの年代で、国内で食べて行けず、移民を余儀なくされた人はいなかった。
私たちのパスポートが、どこの国でも比較的自由に出入りできたのは
日本人がよその国に住み着いて不法就労するおそれが非常に小さかったからだ。
国内で食い詰めて移民し、差別されながら底辺労働に従事する。
そういう日本人は、私たちの世代にはいなかった。
でもその豊かさは、当たり前のものではない。
次の世代では、他国に出稼ぎに行かなければ食べていけない人間が出てくるのではないか?
私は今、本気でそれを心配しているし
自分にできる範囲で、それを阻止したいと思っている。

考えてみてほしい。

貧しい国で、子どもの四肢を切り落とすモラルハザードを
私たちは、他国のものと片付けられるだろうか?

生活保護の不正受給と、それに群がる貧困ビジネス。
知的障害のない子でいっぱいの支援校。
福祉の世話になるのを最小限にしようと頑張る障害のある子を「名誉健常者」と揶揄する障害者の親たち。
不登校・引きこもりを放っておく風潮。
地道に労働し、自活している発達障害者を誹謗中傷する発達障害者。理由は、働ける人がいると自分たちの年金がリスクにさらされるから。
公金を預かって治療や療育にかかわりながら「目標は家事のできる引きこもり」と断言する医師。
知的障害のない子に「君のような子は働かなくていい。将来は国にお金をもらえばいいんだ」と自説を押しつける児童相談所の医師。
勇気のある人たちが、自分たちなりの工夫を重ね、障害のある子が発達する姿を喜んでいる人々をインチキ扱いして溜飲を下げる人たち。
たとえ自分の子じゃなくても、誰かが治るのはいや。治っては自分たちの子への国の援助が薄くなる気がするから。

こういう人たちは、たしかに四肢を切り落としたり、目をつぶしたりはしないかもしれない。
でも「disabling children」っていう観点から見ると、スペクトラムの範囲に収まる。
日本でそれほどラディカルな手段を執らないですんでいるのは
たんに国にまだそれだけの余力があるからではないのか。

だったら

今度の選挙では、たんに社会保障の額だけじゃなく
本当に国の金回りをよくしてくれる人を選びましょう。
それぞれ、その観点から情報収集することも必要なんじゃないかしら。
障害のある子を抱えているからこそ。

そして、障害のある子・大人が納税者になろうと頑張る姿を揶揄するのは
百害あって一利なし。
自分たちの首を絞めることだとわかってほしいわね。

誤解している人もいるようだけれども
私は、本当に必要な人が福祉の世話になることはまったく否定しませんよ。
そしていつまでも
そういう国力がある国であってほしいと思う。

みんながもらうことばかり考え
与えることをしなくなったとき

障害のある人が、国に頼れなくなったとき

そのときには、道ばたに姿をさらし
道行く人の情けにすがるしかなくなるのですからね。