- 「橋下維新圧勝の波紋」
大阪のダブル選挙は、やっぱり大阪維新の会候補が圧勝した。
何しろ口八丁手八丁の橋下徹氏が相手では、現職の市長平松邦夫氏、到底勝てる筈はないと思っていた。
それにしても既成政党に対する市民の見方は厳しいものであった。
民主党、自民党、共産党までが応援したのに票を見ると驚くほどの大差である。
既成政党が嫌われた第一の理由は民主党にあると私は思っている。
「政権交代」と華やかに登場した民主党政権だったが、いざスタートするとマニフェストはただの羊頭狗肉、いいことづくめは表向きの看板だけ、次々と変更して国民は騙されたと、たちまち気づかされた。
しかも、わずか2年間に3人も総理大臣が変わる。任命された大臣はどれも己の立身出世ばかりを考えて、資質の無さを露呈したいい加減な言動ばかり、 こんな政党では駄目とすっかり嫌われてしまったのだ。
残念ながら自民党も野党としての追求はパッとせず、そもそも政権奪取の勢いが感じられない。その上、前回の知事選挙で橋下氏を応援したのに何故と、そこのところが分からないという声も多かった。
まして、思想の全く違う共産党まで参加しての戦いだ、一層訳が分からなくなる。一応公明党は自主投票ということになってはいたが、いずれにしても既成政党全体が一体何をしようとしているのかさっぱりわからない。
その上、世の中を覆う閉そく感、大阪の長きにわたる地盤沈下、そんな鬱積した心から市民は「継続」より「変化」を求めた。
府と市を解体し新たに大阪都を創るという橋下氏の声高な構想に、ぼんやりした期待をもって託そうということになったのではないか。
それにしても各週刊誌の橋下氏に対する攻撃も酷かった。父親や身内のスキャンダルめいた話題から、はては彼の出自に至るまで執拗なまでに記事にした。
私にも週刊誌に親しい記者が大勢いる。みんないい人たちなのに、なぜ今回はこれほど叩くのか、他人事ながら不満だった。
一方の橋下氏も黙ってはいない、「バカ文春」「バカ新潮」と連呼し続けた。
選挙直前までの極端な批判記事は、選挙違反ではないかと思えるくらいであったが、選挙民は逆に判官びいきになっていった。
当選の記者会見で、橋本氏は「バカ文春」「バカ新潮」のお陰で勝てた。感謝しているとまで語っていた。
選挙中のテレビの場面で驚いたことがあった。平松候補が市役所前で演説した時、なんと市の職員が大挙集まってきたではないか。演説が終わるとぞろぞろ役所に帰っていったが、何とも異様な光景であった。
橋下氏は当選後の記者会見で、市の職員に対して、「民意を無視する者は去れ」とはっきりした意思表示をし、選挙に深入りした者は自主的に身を退けと言っていた。気持ちは分るが、これから市民のために働くとなれば当然市職員の協力が無ければならない。好んで敵を作ってはならないのだ。
やっぱり独裁者だと言われないように、これからは大きな度量を持つことも大事だと、老婆心ながら思ってしまう。
ところで、大阪府知事になった松井一郎氏はどうなっているのか。橋下氏の陰ですっかり霞んでしまって存在感ゼロではないか。
まあ、今までは府と市が対立し二重行政の弊害があったから、傀儡と言われようと、何でも言うことを聞きそうな松井氏でもいいのかもしれない。
橋下氏は「平成27年4月に大阪都への移行を目指す」と言っている。
大阪都構想では、人口267万人の大阪市と84万人の堺市について、それぞれ人口30~50万人で10前後の特別自治区に分割し、選挙で選ばれた区長を置いて各区に中核市並みの権限を持たせる。都に府市の公益行政を一本化して権限と財源を集約すればインフラ整備など無駄なく進められる。
つまり、今の東京都と23区のような仕組みを考えているようなのである。(この辺りはあまり明確になってはいない)
余談ながら、23区には市と同じような権限は長らく無かった。区長会を中心に長年自治権獲得運動が続けられたがさっぱり進まなかった。その夢をかなえてあげたのが不肖私で、自治大臣になった時のことである。
橋下構想の実現には三つの壁がある。
一つは府市議会でこれに賛成する決議だ。府議会は今春の地方統一選挙で維新の会が過半数を占めたから可決するが、市議会では第一党だが過半数には届いていない。今後の対応次第でどうなるかわからない。
二つは憲法95条で定める住民投票だ。人の心は移ろいやすい、これから先、住民の反発は起こらないか、50%以上の住民が果たして賛成するのか、そのあたりは不透明である。
三は国会での地方自治法の改正が必要で、実はこれが一番難しそうだ。橋下氏は維新の会の国会進出をほのめかせてはいるが、そんなことは簡単でない。
今の人気が続くのか、何よりも現在敵になっている既成政党の協力は不可欠で、それが無ければ終わりなのである。
一体4年で実現できるだろうか。率直に言って私は難しいと思っている。
私が一番恐れるのは、壊すだけ壊して放り出されることである。機を見るに敏なところがありそうなので、ひたすら「変節」することのないよう祈るのみだ。
大阪都構想実現は難くても、勿論できることは沢山ある。府と市が一体となれば今まで抱えていた無駄を一掃することが出来る。
心配なのは、大阪都構想について本当に分かっている人が少ないということだ。言葉だけが先行しているのが現状だから、早くそのメリット、デメリットを整理して、市民に丁寧に説明していくことが大事である。
激しい血みどろの戦いは終わった。
「政権交代」の大騒ぎの後の、お粗末な民主党政権の轍を踏まないよう、また、独断専行で独裁者とならないよう、しばらくは目が離せないと思っている。
※橋下徹氏は「平成27年4月に大阪都への移行を目指す」と言っていますが、大阪都構想について深谷隆司氏は、元自治大臣として分りやすく説明されていると思いました。
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