398ページの小説を読むには、学校に行っている場合ではない。
死んだ妻が隠していた「過去」(過去は悪事のイメージがあるから、過去の謎のほうがいいのかも知れない)を解き明かすために、灯台巡りをする。その謎が明らかになるにつれ、生前に知ることのなかった妻の一面(これも、一面ではまずい。本質、度量、優しさ、を合わせた言葉が見つからない)に気づいていく。
やはり、彼の作品は、人間讃歌なのだろうと思う。
私の家系について、曾祖母が寝たきりで、幼いときに、まだ若い母と栃木に見舞いに一度行ったことを覚えていることが、遡る最古のもので、曾祖父の名前はおろか、何も知らない。「新田」という地名の土地だから、祖先はどこかからやってきて、田畑を開墾して住み着いたに違いないが、どこかからやってきたのか、誰がどんな苦労をして家族を支えていったのか、恥ずかしいくらいの無知である。
家系図などはいらないが、私に繋がるものは、何とかして聞き、調べ、せめて息子に伝えたい。
が、可能かどうか心細いほど、周りは死亡、高齢、離散している。