あいあいネットワークofHRSのブログ

人間関係づくり・人間力育成の授業

「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」から見える主体性とキャリア(8)

2011-12-26 08:15:44 | コラム
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「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」から見える主体性とキャリア

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8)

【終章】

大悟は、電車の運転が楽しくてしかたがないという肇の姿から、自分自身のことを問いかけます。一つの大きな事件をきっかけにして、肇は退職願を出しました。大悟という若者を前にして、肇自身が責任を取ろうとした行動は、肇にとって当然の結論だったのかもしれません。プロ野球への道が閉ざされ、半ば自棄気味に運転士になった大悟にとっては、肇とともに、地域の人たちのために働くということが、実は自分自身にとってのなかみをつくっていく行為となっていたのでしょう。

一方、将来の仕事に、不安を感じていた倖も、肇の姿を通して、働くということへの意味を感じ始めていました。絹代の世話を献身的にしてくれた介護士の森山さんの姿から、倖は、将来の自分を見つけ出していたのです。

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【倖は、介護士の森山の姿を見て、自分の夢を託せる仕事を見つけたと感じていた。働くということは誰かの楽と楽しみのためにある。父からそんな言葉を聞かされたことがある。だから「働く=端楽(はたらく)」なのだと。

自分のためにではなく、誰かの笑顔のために人生を使うこと。それは自分の楽と楽しみのために人生をただ消費していくことよりも、ずっと充実した幸福感をもたらしてくれる。倖はその幸福感は、「母親が子供を見つめる目の中にある幸福感」なのだろうと思う。婆ちゃんの、父さんが運転するバタデンを見送るときのその目の中にある幸福感。子供が幸せそうにしているのを見守る充実感。同じことを仕事は感じさせてくれるべきだ。そう思った。そんな仕事がどこにあるのかと考え、道に迷いそうになっていた倖が見つけた、自分の将来。それが介護士、森山の中にあるように感じていた。】

【肇は倖のことを思い、由紀子のことを思う。由紀子がこの病院に通っていてくれたこと。倖が婆ちゃんの看病を通して、他人への奉仕を仕事にしようと考え始めたこと。それをあの、「あなたを諦めている」と言ったときの由紀子の冷めたため息や、「だったら何?」と会話を遮断した倖と比べてしまう。

何が変わったのかと、肇は問う。

何が変わったのか。と肇は問う。

心の中にいるもうひとりの自分が「それはおまえさんがだよ」と答える。「変わったのはおまえさんなんだよ。世界ってやつはそれを見ているおまえさんの心が映っている鏡だ。スポーツの試合を観戦しているとする。勝者の側に身を置けば最高の試合だったが、敗者の側に立てばぶざまで最低な試合になる。同じ試合結果なのに心の置き場が違うと世界は正反対の色合いになる。だからおまえさんが変われば世界も変わる。見ている世界が変わる。当然のことだろ?」肇の心の中に住む、もうひとりの自分がそう言った。」】

********************

【「やっと乗ってくれたね、俺の電車に」

「うん」

笑うと、由紀子は少し言いづらそうにして下を向いた。そして思い切ったようにして再び肇の目をとらえる。

「・・・・・実はね。ずっと私、悩んでたの。私たち、このままでいいのかなって」

東京と島根に離れ離れのままで、互いに夢見た仕事をしていて、家族なのに一緒に暮らしてなくて、本当にこれでいいのかなあって。そう言いたいのだろうと由紀子に肇はドキリとする。やっぱり不自然よ。分かれましょう。そう切り出すのではないかと。心臓がはね上がった。しかし、由紀子はやわらかな笑みの中で続けるのだった。

「でもいま、あなたが運転している姿を見て安心した。私たちはこれでいいんだってそう思った」

肇は由紀子を見つめる。由紀子は続ける。

「このまま私たち、夫婦でいいんだよね?」】

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私は、この錦織さんと小林さんの小説を読み終え、私が研修会等で訴えてきた事に対して、揺るぎない確信を得ることができました。

「依存的なあり様」から「主体的なあり様」をめざして!!

人間の成長とは、まさに、このことではないかということなのです。依存的なあり様から生まれる攻撃性、侵略性、破壊性というものが、実は、肇の中に宿っていたのでしょう。多分、それは、肇が初めて仕事を選んだ段階で、そうであったのだと思います。成績優秀・スポーツ万能のエリート人間であったとしても、依存的だったのです。あるいは、依存的なあり様を受け入れなければならない現実に負けた姿だったのではないでしょうか。

49歳からの肇のあり様の変化というものが、義務教育の中でなぜ実現できなかったのか。ものごとは、そんなに単純ではありません。作者の錦織さんが、故郷の島根を去り、今こうして島根にもどってこられたことと共通点があるのでしょう。

しかし、それでも、子どもへの教育を通じて、「主体的な人間」に育つためのノウハウやツールが必要とされているのは事実です。「いじめ」や「不登校」の問題は、解決の糸口がない、解決不能な問題であると論じられることが多々あります。けれど、依存的なあり様から「いじめ」や「不登校」が生まれてくるということも事実なのです。となれば、肇が主体性を会得したプロセスを学校教育の中に組み込むということさえすれば、このような課題が解決する方向へとベクトルを向けることができるのです。そのゴールが「人間としての幸せ」だからです。誰もが願い、誰もがめざす方向であるからこそ、可能だということなのです。

「もしドラ」でドラッカーが言っていました。「自らの事業は何かを知ることほど、簡単でわかりきったことはないと思われるかもしれない。・・・・・・しかし、実際には、・・・・・わかりきった答えが正しいことはほとんどない。」

このドラッカーの言葉は、「ものごとを表面的に見たらダメですよ。その奥底にある本質を見極めて、そこをえぐり出すことが大事なのです。」という事を言っているのです。つまり、「学校って何するところ?」その答えが「勉強するところ」・・・・では、ダメってことなのです。

ここに、実は、「主体的な人間になること」それは、「端を楽にするところ=端楽=働く」ということだったのか、と私は気づきました。そして、そのゴールが「しあわせになる」です。「もしドラ」の記事を書いていたときに、気づいたフレーズのなかみを、ここで発見することができました。つまり、主体的になること自体が、自分もまわりの人たちも幸せにできるということなのです。

日本の教育のカリキュラムの中には、そんなことが一般的ではありません。ここに問題があります。「いじめ」がなくならないのも、「不登校」や「長欠」が増え続けていることもここに問題があるのです。

いみじくも、年末のニュースにこんな記事がありました。(以下の記事を情報メモに載せています)

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《「RAILWAYS49歳~」を地でいっている人が・・》

びっくりしました。Railways49歳~を地でいってる人たちがいました。

自腹700万円で、養成費を自己負担して、「いすみ鉄道」(千葉県大多喜町)の公募で訓練生となった40~50歳代の元会社員4人が、ディーゼル列車の運転資格である国土交通省の「動力車操縦資格試験」に合格されたそうです。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/111221/trd11122122170016-n1.htm(産経新聞)

40~50歳台の方たちですが、ほんとうに切り換えポイントをご自分で換えられたのですね。

すごい

この項、おわりです2012/1/10

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Bataden

 

一畑電車HP

 

 

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このページは、深美隆司の情報メモ&ブログです

2011-12-20 21:17:08 | コラム

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2011/12/27

【「労組は出て行け」橋下市長】

昨日の毎日新聞より、http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111227k0000m010099000c.html

大阪市の橋下市長が「労組は出て行け!」という発言をしました。対立候補を応援したということでの報復なのでしょうか。

しかし、もっと気になったのは、今日の朝のテレビで報じていたことですが、庁内に「告発制度」を設けるということです。まさに、「独裁」のエレメントを導入していこうとしています。

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2011/12/24

【東京の主婦、「地下鉄乗り換えマップ」で起業】

朝のテレビ番組で、スーパー主婦の特集をしていました。その中で、特に気になったのが、東京の「地下鉄乗り換えマップ」を開発した福井泰代さんの紹介でした。子育てをしている歳にベビーカーを押しながら、地下鉄のエスカレーターを探してホームの端から端まで歩いた結果、結局エスカレーターが無かった、という経験から、地下鉄の駅の調査を始めたそうです。初めは、家庭では「道楽の金食い虫」と呼ばれていたそうですが、土日を使って続けた調査はノート60冊分になったそうです。しかし、それが地下鉄の駅に採用されるまで、2年という期間がかかりました。今では、誰もが恩恵を受けているマップですが、そんな弱者としての発想がユニバーサルデザインの根本なのでしょう。

Norikae

女性いきいき応援ナビ(内閣府男女共同参画局)http://www.gender.go.jp/re-challenge/jirei/jirei16.html

あったらいいなを形にした「乗り換え便利マップ」でした(ビズオーシャン)http://www.bizocean.jp/column/president/president62/

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2011/12/22

【橋下市長、文部科学大臣にかみつく】

昨日のニュースで、大阪市の橋下市長と文部科学省の大臣が会ったようです。例のごとく教育に関して大臣にかみついていました。大臣は、次の選挙で対立候補を立てられることを覚悟して、返答していたのかもしれません。現に、大阪市長選では、そういうことが起こったのですから。橋下市長には、大阪府教育基本条例案(府議会HPより)が念頭にあるようです。教育を根底から破壊する問題点だらけの条例案ですが、その中の最たるものが人事評価です。教員の人事評価が5段階中の最低ランクD(5パーセント:相対評価)を2年連続でつけられれば、分限(免職)できる【別表3の第1項、28条4項】となっています。自由法曹団大阪支部からの反対意見書に詳しいことが書かれているので、ひとつの考えとして紹介しておきます。

折しも、今日、こんなニュースも入ってきました。「心の病 教職員、18年ぶり減 昨年度、5000人」(読売新聞)

減ったとはいえ、グラフを見れば5000人超の高いレベルにあります。厳しい教育現場の中で、多くの教員が倒れています。教員に支援をさしのべるのではなく、弾圧と恐喝で迫ろうとしている行政とは、いったい何なのでしょう。そんな「社長(j-castニュース)」のもとで、ちゃんと働けますか? 日々の恐怖感に怯えて、いじめを解決できますか? 不登校を撲滅できますか?

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2011/12/21

【「RAILWAYS49歳~」を地でいっている人が・・】

びっくりしました。Railways49歳~を地でいってる人たちがいました。

自腹700万円で、養成費を自己負担して、「いすみ鉄道」(千葉県大多喜町)の公募で訓練生となった40~50歳代の元会社員4人が、ディーゼル列車の運転資格である国土交通省の「動力車操縦資格試験」に合格されたそうです。

 

40~50歳台の方たちですが、ほんとうに切り換えポイントをご自分で換えられたのですね。

すごい

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2011/12/20
やっと、RAILWAYSの(7)をちょっと書きました。監督の錦織さんと小説を書いた小林さんは、ほんとうにすごい人です。わかっている、そういう人でないと、人間の成長過程をあんなふうにあらわすことはできませんよね。特に「無」の境地の事、瞑想から自己認知に至るという部分です。知識だけでは書けないです。

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2011/12/19
今、ブログの「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」(7)を書いているところです。島根のNさんが、ブログを読んでくれていて、更新を待っておられるのですが、肝心なとことへ来て、少々時間がかかっています。もう少し待ってくださいね。今日も、(7)に2件アクセスがありました。

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「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」から見える主体性とキャリア(7)

2011-12-14 11:23:29 | コラム
RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語 (小学館文庫)
小林弘利,錦織良成
小学館

 

  RAILWAYS レイルウェイズ 49歳で電車の運転士になった男の物語[中井貴一/高島礼子] [レンタル落ち]
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Railways

映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」公式HP

「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」から見える主体性とキャリア

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8)

【「依存的なあり様」から「主体的なあり様】へ(5)】

なぜ私が、この「railways 49歳~」にはまってしまったかというと、原案を作成され映画の監督をされた錦織さん、小説として文章化をされた小林さんがあらわしている人間のあり様というものに共感したからです。私自身も55歳にして、学校の教員を退職し、人間関係づくりのための授業をひろめていくという「あいあいネットワークofHRS」を始めたときの気持ちに通じるものがありました。私の場合は、今だに時間講師として松原第七中学校に関わっています。あいあいネットワークofHRSの仕事は同じ教育に関することなので、主人公の肇ほど、追いつめられていませんでしたし、苦しむこともありませんでした。私はこれまでの自分自身の仕事を通じて、必然的にそうしたいと感じたのと同時に肇が経験したような瞑想状態におけるひらめきのようなものがありました。

私がamazonにて購入した、この文庫本はもうすでに、ペンによるマーキングだらけです。金属製のピンチで挟んだり、角を折り曲げたり、もうぼろぼろといってもいいくらい、読み込んでしまいました。ものごとをどう捉え、感じるのかということは、自分自身の生き方の課題にとっても、教育の現場の課題にとっても大きなことなのです。たまたま、主人公の肇は、知らず知らずのうちに会社人間となり、依存的な生き方をしてきました。しかし、肇はそんなことには気づきもできず、自分の関わりから起こってきた事象(自分が引き起こしてきた事象)により、気づくこととなったのです。ほんとうに、これで良かったのか? 人生に悔いはないのか? 心を無にして、ほんとうの自分のこころに気づくための瞑想を通じて、自分がしたかったこと、自分がありのままにできることにたどりついたのです。それがバタデンの運転手だったのです。

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肇がバタデンの運転士になるための、必死の努力が始まります。そんな姿を見た妻・由紀子は、いるだけでうっとうしいと思っていた肇への気持ちに変化が起こってきたのです。

【それからの半年間、筒井肇は鉄道マンとなるための研修に追われた。了が倖を相手にシジミマンを気取ったとき、何というガキだ、こいつは! と思ったものだったが、いま自分が鉄道マンになるため、脂汗と冷や汗を交互に流す日々を送っていると、ガキだってことなら自分のほうが上だと妙な自慢をしたくなる。

ぼくは電車の運転士になるんだ。】

【手放すことで手に入る。風呂の湯を両手でかき集めようとすれば、湯は逆に自分から遠ざかっていく。反対に湯を向こうに押しやれば、今度は逆に自分の方へと引き寄せられてくる。それは日常的に、もっとも避けたかったことばかりが自分に引き寄せられてくるように感じるのと同じだ。苦手な人だと思う相手に限って自分の担当相手になったりする。

同じように、肇と由紀子も、互いを自分の思い通りに支配しようとしていたときは反発しあうだけだったが、、相手の自由と独立を認めた途端に、互いへの思いが強くなり、心が寄り添いはじめた。由紀子との遠距離別居という形が、肇の人生に潤いを取り戻させ、それがさらに夢への活力に変わる。】

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晴れてバタデンの運転士となった肇は、初めて自分が運転をした電車の中で、こう感じたのでした。

【一畑電車が走っていく。肇の運転する電車が快調に線路の上を滑っていく。カタタン、カタタン。リズムが刻まれる。それは肇が生きるリズム。肇が自分の意志でマスコンを握り、走り始めた人生のリズム。

線路の上を肇が電車を走らせる。誰か他の者の意志で走る電車に乗って運ばれているだけ、という思いがもうよぎることはない。誰かに責任転嫁ができる人生は過去になった。彼は自分の責任で、自分の電車を走らせる。】

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宮田大悟は、同期入社の若者です。肇が実は大悟が、プロ野球選手を夢見て、プロ入りまで決まっていたにも関わらず肘の故障で、あきらめざるを得なかった事を知ります。肇は大悟を追いかけます。

【「宮田くーん。おーい。宮田投手!」

何度か呼ぶと、ついに大悟が怒鳴り返してくる。

「うるせえよ!」】

【「肘、壊したんだって?」単刀直入に尋ねると、その遠慮なさが意外だと言うように、大悟は眉を上げてみせた。そして投げやりなため息をつく。

「その話はしたくないってこと、わかんないですか」】

【「すねてるだろ、普通に。でも、当然だと思うよ。その歳で挫折は辛い」

「同情するなんて言ったらぶん殴りますよ」

「言わない。同情なんかしないよ」】

【「なんすか、それ」

「・・・・・二十歳まで生きられるかどうかわからない少年がベッドの上で彫ったらしい。よくできてるだろう?」

そう聞くと、荒削りの未完成状態とも見えるその木彫りに、別の力が宿るような気がした。大悟の目にもその鷲が飛ぼうとしている空の遠さがわかる。この翼で飛んでいきたい。けれどそれが叶わない。飛ぶことを自分は禁じられているから。けれど、禁じられても、お前には無理だ、望んでも叶わないと言われても、それでも空を舞う夢を諦められない。すべての見えない鎖を断ち切って、チャンスがくれば必ず飛んでみせる。もの言わぬ木彫りの鷲がそう言っている。その声が大悟にも聞こえるような気がする」】

【「その子の父親は前の会社で俺の同期だった。学生時代からの親友でな、本当に勇気のあるいいやつだったよ。やつは工場長で、俺は会社の利益を守るためにその工場を閉鎖させた」

肇は言う。何を話してるんだ、俺は、と思いながら。こんなことを宮田大悟に話すつもりはなかった。

けれど大悟は他のどんな話よりもこの話に関心を示した。初めて肇の語る言葉の続きを待つように、彼は肇に目を向けていた。

「閉鎖を命じたすぐ後で、そいつ、交通事故で死んじまったよ」

大悟が「えっ」と小さな声を上げた。

「奥さんとベッドの上の子供が残された」と肇は言う。この話を出してしまった以上、すべてを言い切ってしまおう。「あいつ、俺に最後に言ったんだよ。自分の人生は自分の好きに使わせてもらうって。それを聞いて俺は思ったよ。何してんだ、俺って。やつが死んで、俺はもう居ても立ってもいられなくなった」

「それがエリート人生、自分で捨てた理由ですか」

「俺はエリートなんかじゃない。自分のことしか考えてこなかったやつがエリートなわけはない。・・・・・・これから先の人生をどう生きるのかって考えたとき、ようやくわかったんだ。いまが自分の夢に向き合う、最初で最後のチャンスなんじゃないかってな・・・・・・。まあ、君にとっては電車の運転士がその夢だなんて、笑っちまうだろうけど」

「・・・・・・・」

大悟は答えない。彼もまた川平が残したあの言葉を胸の中で反芻していた。自分の人生は自分の好きに使う。】

【肇は板の上に置いた木彫りの鷲をつまみ上げると、たいせつそうにポケットに戻して、ポンと上から叩くと控え室の方へ戻って行った。

大悟は肇を見送る。いや肇のポケットの中の、。翼を広げた鷲を見送っているのかもしれない。

翼を広げ、空を見上げ、さあ飛ぶぞ、と身構えている小さな鷲。次の風が吹いたら、俺はきっと大空に舞い上がってみせる。だってそこが俺の夢見た場所だから。鷲がそう言っている。そして宮田大悟、お前はどうするんだと、木彫りの人形が問いかけてくる。

大悟は考える。俺はどうする? 俺が待っている風はいつになったら吹いてくる?いやその前に俺はいったいどんな風を待っている? 大悟は問い掛ける。彼の心の中で、「もうひとりの自分」が静かに見つめていた。】

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大悟は、肇の言葉により、肇が体験したのと同じような、問いかけを自分自身に行いました。そこに見つけた「もうひとりの自分」というものが、本来の自分の姿であることに気づいたに違いありません。まさに、肇のあり様が大悟へのモデルとなり、大悟も依存的なあり様から主体的なあり様への道を開こうとしていたのです。

実は、このことに教育が本来持つべき姿があるのではないでしょうか。知識を教えて、処理能力を高めるということではなく、様々な課題をどう受けとめ、どうつなぎ合わせて発展させていくのか。つまり、自分の核をどうつくっていくのか、というプロセスが秘められていると、私は思うのです。

これ以降、肇と大悟はバタデンの新人運転手として共に働きはじめます。好きで好きでたまらない仕事に取り組んでいる肇の姿に、肇は心を育てられます。川平の死、母の病気という運命の果てにたどり着いたバタデンの運転手だからこそ、電車を動かす様々な人たちへの感謝と心遣い。バタデンを生活の糧として活用し、バタデンに乗ることでバタデンを支えてくれている人たちへの心からのサービス。仕事ということが、実は肇の人間としてのあり様を表出させている手段であるということ。大悟は、肇の姿を見つめていたのでした。

 

(8)へつづく(2011.12.22)

Bataden

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2011年12月6日 大阪府柏原市立堅下南小学校 校内研修会

2011-12-05 21:58:29 | 研修会

レジメ(携帯用)

堅下南小学校の皆さん。お久しぶりです。今回は大急ぎの研修でしたが、何とか認知の実習と「依存的なあり様から主体的なあり様へ」のところまで到達しました。コミュニケーション力をつけるということは、単に、好ましい人間関係をつくるというだけにとどまらずに、人間にしかできない人間らしい成長をとげていくために必須のスキルを身につけるということなのです。コミュニケーション科というのは、そういうものをめざすものではないでしょうか。岡田先生からは、しっかりとしたフィードバックをいただきました。校区のプログラムを提供いたしましたので、ぜひとも出来るところから実践してみて下さい。また、機会がありましたらコーディネーションさせていただきます。

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