RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語 (小学館文庫) 価格:¥ 580(税込) 発売日:2010-04-06 |
映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」公式HP
「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」から見える主体性とキャリア
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【「依存的なあり様」から「主体的なあり様】へ(1)】
私は、大阪の松原第七中学校にて、校内の研究主任として、文部科学省指定の研究開発学校の取組を校区としてとりまとめてきました。研究主題は、新教科「人間関係学科」の発展と拡充でした。トータル8年間に及ぶ研究でしたが、始めの4年間は先代の研究主任の先生を中心にして、先輩たちが人間関係学科のカリキュラムをつくりあげました。私たちは、それを引き継いで、人間関係学科の意義づけと理論化をしました。そして、これを小学校、幼稚園までひろげ、校区における11年間のカリキュラムを打ち立てるということが、私たちの使命となったわけです。
「人間関係づくり」といっても、普段、授業として行う人間関係学科の実施(一次支援)、いじめなどの未然防止(二次支援)、不登校などの子どもの教室復帰、学校復帰(三次支援)という幅の広いものでした。さらに、幼・小・中の学校間連携をもとに、子どもの成長・発達に即した教育内容の追求ということで、私自身は、二年間、小学校をメインにしながら幼稚園まで出向き、考察を続けてきました。その結果、最終的に行き着いたところが、この記事の表題にもあらわしている【「依存的なあり様」から「主体的なあり様」へ】というテーゼなのです。
本来、人間はこの世に誕生した時点においては、絶対依存の状態にあります。すべての事をまわりの人たちに任せなければなりません。そのような依存的なあり様から、まわりの人たちの愛情に育まれながら、体と心が成長し、ひとつずつ自分で判断し、働きかけることができるようになり、主体的なあり様で生きていくことができるようになります。これが本来の人間の成長のあり方であると言えるでしょう。
しかし、現実は、そうはなかなかうまくいきません。人間は信頼関係で結ばれることが理想ですが、依存的なあり様で人間関係を結んでしまうことが、多々あります。小学生や中学生は、大人への成長の過程の中にいますので、依存的なあり様から主体的なあり様へと成長していく途上であると言えるでしょう。したがって、依存的なあり様の関係性から結びついた人間関係から、様々なトラブルが生まれ、現実問題として「いじめ」があったり「不登校」があったりします。ですから、人間の心のなかみをどう育んでいき、主体的なあり様の人間を目ざすことができるのか、ということが教育の最大の課題となります。
残念ながら、現在の日本の教育には、この観点での尺度が不完全にしか確立されていません。昨年、内閣府から発表された「ひきこもり及びその予備軍、225万人・・・調査年代の人口比にするとおよそ6%」という実態も、ここに起因するにちがいありません。また、本年度、4大疾病に精神疾患が加えられたような現実も、同じ事が言えるのです。義務教育が終了すれば、このような状態に対するセイフティーネットが極端に弱くなります。最近、大人の発達障害に焦点があてられる現状や、働きたくても働けない労働人口の増加による将来への不安というものが、教育現場では、大きな壁となって鬱積したものになっていると言えるでしょう。
RAILWAYSの主人公・肇の生き方の中で、見事に描かれていた依存的なあり様が主体的なあり様にどう変わっていったのか、検証していく意味がここにあります。小説や映画の主人公のことですが、子どもも、大人も包括した人間としての課題であるということに、気づかなければならないのではないでしょうか。
さて、それでは、RAILWAYSから、肇の依存的なあり様を、まず探っていきましょう。
(4)へつづく 2011.11.3
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