DREAM/ING 111

私の中の「ま、いいか」なブラック&ホワイトホール

Kate Bush ★THE DREAMING:美しい狂気が紡ぐ極上の悪夢

2006-05-21 | 音楽

400記事達成をうけて、ブログ名の元でもある
ケイト・ブッシュの『THE DREAMING』をご紹介。

THE DREAMING
※音の奥行きの10分の1も伝わらないですが、雰囲気だけどうぞ。
 で、できればCDでお聞き下さい。


■ケイト・ブッシュ

ケイト・ブッシュは数ある女性ミュージシャン(というか、あえてロッカーと言いたいのだけれど)の中で、ちょっと特別の思い入れがあり1番好きな存在です。

16歳でデビュー。妖精のような美しさも手伝って、日本でも一気に人気に。ただ、その可愛い容姿とは裏腹(?)に、天才的な作詞・作曲能力をもつ超実力派ミュージシャンとして長く英国音楽界に君臨、初期の作品群の高い評価とともに、今なおマニアックな信奉者が世界中にいます(私もその1人なり)。初期の代表曲「嵐が丘」はセイコーのCMで使われたハズ。

Wuthering Heights

デヴィッド・ボウイも師事したリンゼイ・ケンプとの交流で、パントマイムとバレエエッセンスを取り入れた独特のアクションは、どちらかといえば演出含めてかなりシロウト臭いものが多いのですが、ベタな等身大のケイトのにおいがします。ちょっと傾向違うんだけど、ユーミンのPVに似てる気が・・・垢抜けていないんだけど「あぁ、これがしたかったのね」とダイレクトに伝わってくる感じ。

■アルバム紹介

今回の『THE DREAMING』は彼女の4枚目のアルバムタイトルであり、その中の1曲でもあります。82年発表。
72トラックでのレコーディングが当時話題となりましたが、その実験的な音作りは、ファンの間でも賛否両論を巻き起こしました。また納得しきれずアルバムを録音しなおしたことで、レコード会社を嫌がらせたというエピソードもあります。
これと思う「音」が得られるまで幾日も試行錯誤したというケイト・・・多重ダビングの作りだす摩訶不思議な、すこし歪んだ・それでも澄み切った空間。耳ではなく脳に直接はいってくるような生理的な音・世界。

この作品を送りだしたあと、精神病院に入ったというウワサ(デマだったようですが)が飛び交ったくらい、複雑な、でも毒々しくも魅惑的な奥行きのある作品集です。
プログレ色が強いと評されるのもわかります・・・。初期クリムゾンの狂気を煮詰め生々しくしたような要素があるかも。

■曲紹介

1曲目「Sat In Your Lap」はいきなりヤバサ炸裂。PVも非常にブラックマジック色が強く、狂気の叫びにも似た歌声。でも曲の構成は今聴いても斬新で秀逸です。

「Sat In Your Lap」

2曲目「There Goes A Tenner」3曲目「Pull Out The Pin」4曲目「Suspended In Gaffa」は「LIONHEART」系の曲をちょっと複雑にした感じで、自在に操られる「ケイトらしい歌」を堪能できます。・・・とはいえ、3曲目の“I love life”の叫びと後半のアレンジはやっぱりちょっとヤバイ?
ただ、高く低くなんどもかぶさってくるケイトの声を聞いてると、人の声ってこんなにいろんな表情をもってるんだ、と思わせてくれます。そして彼女の声には抗いがたい魅力が・・・「Suspended In Gaffa」はストレートに好きです。フレディの曲作りにも似たトリッキーなきらびやかさ。
5曲目「Leave It Open」は音的にかなり実験的な曲。そしてこの曲はすごくROCKだと思います。

6曲目(レコードではB面1曲目)タイトル曲の「THE DREAMING」。アボリジアニの覚醒夢(予知夢)を意味するドリーミング現象をテーマとした曲。ここでの曲作り・音作りは、ケイトの真骨頂。複雑でありながら繰り返す呪文のようにけだるいトーン、それは気持ちをミステリーゾーンにひきずりこむようなスペルにも似ています。そして高まる狂気・・・。
PVでは宇宙服(?)に身を包んだケイトが、アボリジアニをイメージさせる男性ダンサー3人と絡む寸劇的な構成で、彼女の美しくも魔女的な表情が印象的。

7曲目「Night Of The Swallow」は1番聞きやすいかも。8曲目「All The Love」はシンプルながら声の糸が空間を縫い込んでいくような、不思議なのびやかさが魅力。9曲目「Houdini」も途中、ちょいヤバですが全体として映画を見ているように、ストリングスの流れがキレイで好きな曲。「THE KICK INSIDE」系。
最後はまた狂気系のアレンジで、彼女としては新しい音作りでもある「Get Out Of My House 」

こうしてみると、すっごく濃い狂気は1曲目、3曲目、6曲目、10曲目だけ?ただ、全体を通して、エネルギーを絡み取られるような触手のような、音のまとわり感があります。胎内宇宙・・・それが私は大好きなのですが、ダメな人は受け付けないかも。

あー、でも今回通して聴いてると、やっぱり天才だと思ってしまう。

目が覚めたまま見る万華鏡のように美しい悪夢・・・
休日の心安らかな一時に、いかがでしょうか?(にっこり


THE DREAMING

1. Sat In Your Lap
2. There Goes A Tenner
3. Pull Out The Pin
4. Suspended In Gaffa
5. Leave It Open
6. The Dreaming
7. Night Of The Swallow
8. All The Love
9. Houdini
10. Get Out Of My House


■ディスコグラフィー

1. 「THE KICK INSIDE(天使と小悪魔)」(1978)
2. 「LIONHEART(ライオンハート)」(1978)
3. 「NEVER FOR EVER(魔物語)」(1980)
4. 「THE DREAMING(ドリーミング)」(1982)
5. 「HOUNDS OF LOVE(愛のかたち)」(1985)
6. 「THE WHOLE STORY(ケイト・ブッシュ・ストーリー)」(ベストアルバム)
7. 「THE SENSUAL WORLD(センシュアル・ワールド)」(1989)
8. 「THIS WOMAN'S WORKS(ディス・ウーマンズ・ワークス)」(ベストアルバム)(1990)(8枚組)
9. 「THE RED SHOES(レッド・シューズ)」(1993)
10. 「AERIAL(エアリアル)」(2005)(2枚組)

■参考サイト

公式ページ
KATE BUSH GALLERIES
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18 コメント

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懐かしいなぁ(≧∇≦) (うおこ♪)
2006-05-21 17:13:47
ケイト・ブッシュの名前を見るのってどれくらいぶりだろう?

しばらく聴いていませんでした。

昔はTV番組でもちょくちょく出ていたけど。

妖精のようなイメージがあったなぁ。

懐かしい記事ありがとん~。(≧∇≦)

返信する
うおこ♪様 (なる@ちゃっと)
2006-05-21 17:28:00
おお!

記事修正してましたぁー(誤植・大杉!



うおこ♪様もお好きでしたかー!!

嬉しいっす!



最近(っていってもちょこっと前)2枚組がでたのですが、かなり環境系にいかれて、スピリチュアルモードで

もはや「悪魔」ではなくなってましたー(泣;



私はやっぱりダークな彼女が好きだなぁ。
返信する
私も大好きです (attitude)
2006-05-21 19:16:53
サイト名はケイト・ブッシュのアルバムからだったのですね!!

そういえばなるもにあさんとの始めての話題はリンゼイ・ケンプのお話だったですね。納得(^^)



セイコーのCM覚えていますよ!子供心に「この不思議な人は誰?」と気になっていて、高校時代にアルバムを買いまくりました♪



私もダークな小悪魔的な彼女が好きです。

HOUNDS OF LOVEまでの初期4アルバムが大好き。



心の奥の開かずの扉が開くようなサウンドですよね・・・・



あー聴くと何も手につかなくなりそ~(笑)

返信する
神! ()
2006-05-21 22:39:23
ケイト・ブッシュ、神!(笑)

アルバムTHE DREAMINGは、彼女の作品群の中では、最も狂気を感じさせるもののような気がします。でも、それゆえに「抗いがたい」魅力がありますね。

Sat In Your Lap、好きです!イントロのリズムを刻まれただけで、もう別の世界に引きずり込まれるような、なんとも表現し難い感覚は、他のアーティストからは感じられないものなのですよ、私にとっては。

Night Of The Swallow、確かに最も聴きやすいかも。これも大好きです。このアルバム中、唯一安心して(?)聴ける曲かも。



この次のアルバムHOUNDS OF LOVEがマイベストアルバムなのですが、その中のUnder The IceやWaking The WitchはTHE DREAMINGの流れを引き継いでいるように感じられるのですが。



なるもにあさんのケイト・ブッシュ観が拝見できてうれしいです。また、他のアルバムについてもぜひ、語ってください。
返信する
attitude様 (なるもにあ)
2006-05-22 03:50:00
QUEEN、KATE と1番好きなミュージシャンで

attitude様と共感しあえるのはすごく嬉しいです!

リンゼイ・ケンプもそうですが、初期からのQUEENが好きな方って、アートやいろいろな部分で接点があって、それはフレディの美意識に

響く部分があるような気がします。あとは「英国」。



>サイト名はケイト・ブッシュのアルバムからだったのですね!!

はい。はじめは夏目漱石大先生にあやかったのですが

英語にする時にINGをつけて、ケイト的覚醒夢扱いにしてしまいましたー。



>HOUNDS OF LOVEまでの初期4アルバムが大好き。

どのアルバムも似てるようで個性があって

どの曲も飽きないですよね。



>心の奥の開かずの扉が開くようなサウンドですよね・・・・

おお!まさに!!!

緊張しつつもリラックスする、という不思議な感覚があります。

いつもと違う部分が開いてるんですね、きっと。
返信する
R様 (なるもにあ)
2006-05-22 03:51:13
来て下さる皆様に、ケイト・ブッシュファンが多くて嬉しいです!

(ブログ回っていてもなかなか出会えないので、この密度は奇跡かも!?)



>でも、それゆえに「抗いがたい」魅力がありますね。

彼女の1つの臨界点という感じですよね。

そして狂気をこんなに美しく表現できるのが素晴らしいです。



>なんとも表現し難い感覚は、

>他のアーティストからは感じられないものなのですよ、私にとっては。

同感!

ケイトの歌声って、セイレーン系だと思ってます。

虜になったらひきずりこまれるんですよね。



>Under The IceやWaking The WitchはTHE DREAMINGの流れを引き継いでいる

こちらも同感。ある意味よりディープになった気がしました。(Under The Iceなんてコワイくらいですー



今回とても楽しく書けたので、またトライしてみますね♪

R様のアルバム感想もぜひぜひお聞かせ下さい。
返信する
なるほど (einnonti-H)
2006-05-23 01:14:55
ブログのタイトル・・・

なるほど。
返信する
einnonti-H様 (なるもにあ)
2006-05-23 03:07:03
なんかミニマムアートのようなコメント、サンクスでございます。



えっと、簡単に説明させていただきますと



DREAMING

+

夢十夜

百物語+1(で妖怪召喚♪<え?



→111



=DREAMING111



となっております。;;



einnonti-H様は

Kate Bushもきっとお好きですよね?(確信犯的質問;
返信する
はい (einnonti-H)
2006-05-23 22:25:36
ハイ、好きです。



完璧主義者は大好きです。

そしてお会いしております。
返信する
einnonti-H様 (なるもにあ)
2006-05-24 04:29:36
>そしてお会いしております。



ええーーーー!!!



それはいつのお話でしょう???



なんか絶対的に凄い方ですね?einnonti-H様。



うーーーーん、謎が深い・・・深すぎる。
返信する

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