隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1381.八月の魔法使い

2013年08月17日 | 経済
八月の魔法使い
読 了 日 2013/08/02
著  者 石持浅海
出 版 社 光文社
形  態 文庫
ページ数 348
発 行 日 2012/07/20
I S B N 978-4-334-76434-0

 

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たまたBSイレブン・「宮崎美子のすずらん本屋堂」の登場だ。たびたびこの番組にコメンテーターとして出演する、劇団キャラメルボックスの総帥・成井豊氏があるとき推薦していたのが本書だ。成井氏は自分の率いる劇団の出し物としての観点からも、さまざまな本を読んでいるようで、時々この番組でこれという本を持参して、面白かった内容など紹介している。
僕も番組は毎週見ており、氏の話を参考にすることもあるが、いつも好みが合うわけではないから、参考にするといっても取捨選択は自分の判断を優先させるのはもちろんだ。
いや、つい先ごろ、といっても3―4ヶ月前になるか、成井氏ご推薦の本を読んで、がっかりしたこともあるから、ある程度は内容を把握しておくことも必要だ。特に初めての作家の場合は。
本書の著者・石持浅海氏については、もうすでに7冊ほど読んでおり、好きな作家の一人なので、素直に成井氏に賛同して読む気になった。
成井氏のサラリーマン・ミステリーだという紹介に、僕はいつもの思い込みで、連作短編集だと思っていたら、長編だった。

 

 

物語は洗剤メーカーを舞台としたストーリーだ。
洗剤メーカーといえば、これを書きながら僕ははるか昔を思い起こした。昭和55、6年の頃だったと思う。まだ企業におけるコンピュータシステムがそれ程浸透していない時期だった。大手洗剤メーカーの老舗、花王石鹸のシステム開発部(部署の名前は正確ではない)が、開発したパソコンによるシステムについて(残念だが何のシステムかも覚えていない)聴きに言ったことがあった。
当時僕はパソコンを覚え始めた頃で、8bitパソコン・PC-8801を買ったか、あるいは買う寸前だったか、とにかく覚えたてのBASIC言語で、見よう見まねのプログラミングに励んでいた頃だ。当時は怖いもの知らずで、花王のシステムがどんなものかという興味だけで、電話でアポイントをとって花王の本社に乗り込んだ。
花王の担当者はまったくの素人である僕に、親切丁寧にシステムの解説をして、実際にパソコンを動かして見せた。
今思えば、当時勤めていた会社・ケーヨーはまだ中小企業で、花王の担当者が名も知らぬ小さな企業の社員である僕を、よく迎え入れてくれたものだと思う。と、今頃になって冷や汗をかいても間に合わない。

 

 

によってわき道にそれた。
それにしても毎日暑い日が続く。僕の6畳の部屋にはエアコンがないから、扇風機を背にして使いづらいノートパソコンに向かって、汗をかきながら書いている。かなり昔に買ったノートパソコン用の冷却パッド―ゲル剤の入ったパッド―を敷いているが、半日も経つとそれも高温になって、使い物にならないほどの暑さだ。
そのせいかどうかはわからないが、たまにWordやExcelが突如としてダウンする。自動的に復元するときもあれば、時として「ファイルが壊れているので回復できません」というようなメッセージが出て、わずかだが入力したデータの消失を招く。
こまめにデータの保存・バックアップをしておかないと、とんだ目にあうのだ。MicrosoftのOfficeもバージョンを重ねるごとに、いろいろ機能も充実してある面では使いやすくもなっているが、こうしたトラブルを完全に防ぐことに、全力を注いでほしいものだ。ネ!ゲイツさん。
気象情報によればしばらくこの暑さが続くという。年寄りは熱中症にも気をつけないと。

タイトルにあわせたわけではないが、たまたま八月に読むことになった本書は、リアルタイムで進行するドラマのごとく、役員会議の一日を追うストーリーだ。
株式会社オニセンの経営管理部に所属する主任・小林拓真は、社印の必要な書類を持って、総務部長室に行くと、部長席の前にじきに定年を迎える万年係長の松本が立っていた。いつも部下に対して上から目線をはずさない中林部長が、呆然とした表情だ。拓真の差し出す書類にもめくら判といった感じで捺印した。
拓真は礼をして部長席から離れようとして、松本係長の手元の書類が目に入り、「えっ!」と驚く。
同じ頃九階の会議室では、新しい企画についての役員会議が行われていた。プレゼンターの大木課長とともに、プレゼンテーションのオペレーターとして会議に臨んだ金井深雪は、大木課長の指示によりパワーポイントの31ページを写した。ところがなんとそこにはあるはずもないものが映し出されたのだ。
社長も集積している会議は、映し出されたデータによって、喧々諤々たる様相を示し始めた。

総務部長室で松本係長が部長の下に出した書類と、会議室に映し出されたものは同一のものだった。
はたして誰が何のために、あるはずもない書類を作ったのか?騒動がどう収束するのかといった、サスペンスに満ち溢れた会社の一日が描かれて、ドラマを見ているような気にさせる。

 

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