隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1087.ベイジン

2010年08月19日 | 経済
ベイジン
読了日 2010/7/27
著 者 真山仁
出版社 東洋経済新聞社
形 態 単行本
ページ数 361/319
発行日 2008/7/31
ISBN 978-4-492-06147-3(上)
978-4-492-06148-0(下)

 

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ながら単純だな、と思うが「虚像(メディア)の砦」を読んで、未読の著者の本が読みたくなり、木更津市立図書館の蔵書検索をしたら貸し出し中だったので、君津市立図書館まで行って借りてきた。
そういえば君津の図書館で借りたのは前回も真山氏の「レッドゾーン」だった。君津に2か所ある図書館のうち、市民体育館の図書室は割と貸し出し中なことが少なくて、便利に利用している。もちろん自宅から車で10分余りの距離だから、行きやすいということもあって、木更津の図書館を検索して、貸し出し中の時はすぐに君津の方を検索することにしているのだが。
僕の住まいの近くではもう一か所袖ヶ浦市の図書館もあるので、こちらも機会があったら利用しようかと思っている。
図書館をもっと利用して、スムーズな読書生活を楽しもうと考えるものの、生来の貧乏気質というのか、自分のものにしないと安心できないみたいなところがあって、まあ、しかしそれはそれで、書店めぐりの楽しさでもあるから、仕方がないのかもしれない。
なんだか訳のわからない話になってきた。

 

 

先ず、この単行本上下巻の表紙イラストが素晴らしいではないか!
イラストレーター西口司郎氏の力作だが、無数の龍が暴れて大地震による地球(儀)を崩壊するがごとき動きを示す絵は、読む前からこのイラストの表す内容が、想像できるようだ。タイトル(ベイジンbeijing=peking北京)から推しても龍は中国の象徴として描かれたのだろう?
内容もその通り、中国が舞台だ。途上国とはいえその経済発展は、今や世界経済のカギを握るとまで言われる中国で、急速に伸び行く電力需要を賄うために、世界一を目指す原子力発電所建設の計画が持ち上がった。
そして、その技術顧問、運転開始責任者として中国側から要請されたのは、DHI:大亜重工業の田嶋伸悟だった。大亜重工業で、若狭原発プロジェクトを担当していたが、計画が中止となって腐っていたところへ、この話が舞い込んで、田嶋は中国へと単身赴任することになる。
中国は大連市の北に位置する、紅陽市(架空の都市)に一大国家プロジェクトである、世界一を誇る核電(原子力発電所)の建設が始まった。

 

 

が、中国側から要請されたとは言いながら、一筋縄でいく相手ではなかった。考え方も、環境もまったくと言っていいほど日本とは隔たりのある現状は、末端の工事関係者までに意思を伝達することさえままならぬ毎日に、田嶋は心身ともに疲弊していく。
一番のネックは、副首相夫人と、彼女の率いる企業集団との関係だった。建設工事に必要な資材は一切が関係企業からの供給を受けていたのだ。
品質に問題がなければいいのだが、まるで不良品ともいえる資材は、建築の必要強度等のレベルに達していないどころか、工期を遅らせる原因ともなっていた。
発電の開始は、北京五輪の開始日となっているのである。
そうした副首相夫人の暴挙には、中国当局も監視を強めるために、重要な人物を送り込んできたのだが、その人物さえ、田嶋にとっては心を許せる相手ではなかった。

数多くの試練の中で、それらに立ち向かう田嶋の奮闘ぶりとは別に、北京五輪の公式記録映画の監督に任命された、若手女性監督のエピソードや、現場に送り込まれた人物のエピソード等も描かれ、ストーリーは複雑な展開を見せていく。
ハゲタカシリーズとは趣の違うスリルを満喫させるストーリーは、フィクションとはいえ、現実の中国事情をうかがわせる描写が素晴らしい。

 

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