レッドゾーン | ||
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読了日 | 2009/09/11 | |
著 者 | 真山仁 | |
出版社 | 講談社 | |
形 態 | 単行本 | |
ページ数 | (上)370 (下)354 |
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発行日 | 2009/04/23 | |
ISBN | (上) 978-4-06-215433-8 (下) 978-4-06-215434-5 |
津市立図書館のサイトを見ていたら、市民体育館図書室の蔵書が貸出可になっていたので、借りてきた。
木更津市の図書館では長いこと貸し出し中だったから、もう少し待たねばならないと思っていたので、こんなに早く借りる事が出来たのはラッキーだった。
6月に公開された映画も影響しているのだろうが、今年4月に刊行されたばかりだから、続編を待っていた読者も多いのだろう。
この前の「ハゲタカⅡ」に続いて君津市のお世話になる。
さて今回登場する人物たちは、鷲津政彦、リン・ハットフォード、サム・キャンベル、前島朱美のサムライ・キャピタルのメンバーを始め、企業再生を業務とするターン・アラウンド・マネジャーの芝野健夫、日本ルネッサンス機構(NRO)の総裁・飯島亮介という、いわばレギュラーメンバーとも言える面々と、新たに敵対するキャラクターは、上海の買収王、賀一華(ホー・イーファ)。
以前には(今でもそうかも知れないが)欧米人の目には、日本人は常に薄笑いを浮かべて、何を考えているかわからない不気味な存在として映っていたようだが、今回登場する香港や、中国系のアジア人たちのキャラクターがまさにそれで、不気味な存在として描かれており、昔の話を連想した。
もちろんこの他に、TOB(Take-Over Bid:株式の公開買付け)の対象となる、アカマ自動車の経営者、芝野健夫が再生を手がける企業・マジテックの経営者たちが重要なキャラクターとして登場する。
なにわのエジソンといわれる金型製作会社・マジテックの社長藤村登喜男が亡くなって、苦戦を強いられている社長となった妻の藤村麻子から、相談を受けた芝野は、その昔藤村と付き合いのあったことから、再生の兆しの見えてきた曙電気を辞して、専務としてマジテックを応援することにした。
アルコール依存症の回復も目覚しい妻の亜希子の後押しもあっての決断だった。
一方、アカマ自動車の社長・古屋貴史ならびに、社長室長・大友成行から、賀一華のTOB宣言に対する対応の相談を受けた鷲津は、サム・キャンベルに情報の収集を指示するが・・・。
僕は、今回も鷲津政彦の縦横無尽とも言える活躍?に胸躍らせながら読んだ。
今までに無い最強の敵を迎えた鷲津が、どのような手段を持って危機を乗り越えるのかといった興味のほかにも、前作「ハゲタカⅡ」で謎の死を遂げたアラン・ウォードに関連する複雑に交錯するエピソードもあり、安心と不安とが交互にやってくるストーリーに翻弄させられる。
このシリーズの面白さの要素はたくさんあるのだが、一つには実在の人物や機関、あるいは事象を連想させるところにもある。著者が巻末で「あくまでもフィクションである」旨の断り書きを付記しているが、それでもなおかつ実現象を想起させることは否めないだろう。しかし、僕を含めた読者は即ここに書かれたことが現実だとは思わないだろう。
やはり、現実を連想させる物語として楽しめればいいのだと思う。
本書の終わりには例の"to be continued"は無いので、どうやら本書がシリーズ最終作となるのかと思うと、ちょっと寂しい。また、違う形でサムライ・キャピタルの活動を見たい?気がする。
豆タンクと呼ばれる前島朱美や、鷲津の手足となって情報を収集するサム・キャンベル、時には母親のようなやさしさをも示すリン・ハットフォード等々、魅力的なキャラクター達がこれっきり姿を見せないなんて、切ないではないか! まだある。「ミカド・グループ」と、松平貴子のその後はどうなったのだろう?戦場ヶ原でのイヌワシとの出会いはもう無いのか?激しくも心惹かれるシリーズだった。
ころで、登場する主だった人物のイラストを映画のキャストをモデルに描いたのだが、映画では買収王の賀一華が劉一華に、アカマ自動車の社長・古屋貴史が古谷隆史に変えられているようだ。映画やドラマに映像化されたものと、小説とは別の作品と考えたほうがいいということを過去何度か書いてきたが、このシリーズのドラマや映画も同様だろう。
映画のキャスティングをみると、NHKドラマに登場した原作には無い三島由香(倒産して自殺した町工場の経営者の娘で後に、記者となる)や、西野治(老舗旅館・西野屋の息子で、後にIT企業を興す)も、再び登場しているようなので、林宏司氏の脚本は、NHKでのドラマを継承して、原作に大分脚色を施しているのではないかと思われる。
6月公開の映画だから、DVD化されてレンタル店に並ぶのはもう少し先のことだろう。早く見たいという期待と、原作のイメージが壊されるのではないかという不安とがせめぎあっている。
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