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★選評も面白かった乱歩賞受賞作❸止

2014年08月14日 | 新聞/小説

【きのう8月13日付の続きです。
ちなみに『止』は、記事分割出稿時に入れるもので〝コレで終わり〟の意味です】

第60回江戸川乱歩賞(*1)受賞作『闇に香る嘘』(下村敦史さん33歳、講談社・本体1,550円=写真)を読んだ。
テンポいい展開、ミステリーとして圧巻の大どんでん返しだった。
この夏、読んでおきたい一冊(かな)。

面白かったのは、小説だけじゃなかった。
満場一致で決まった同作、5選考委員「選評」もなかなか味わい深かった。
どの選考委員も
「(応募時の)タイトル『無縁の条闇に嘘は香る』を何とかしなさい!」
と指摘していることは、さておき。
石田衣良選考委員(54)の、人間味&温情あふれる選評を読んでグッときた。
努力報われましたね、下村さん。
石田衣良さんって(あまりたくさん読んでいないけど)いい人そう(笑)。

有栖川有栖(55)選考委員
「結末はまさに盲点を突くもので心憎い」
→うまい言い方。確かに〝盲点〟を突いている。

石田衣良(54)選考委員
「(応募時の)タイトルが意味不明だが、なによりも緻密な取材と全開の想像力で、困難な設定の主人公を造形した力量を買う。
下村敦史さん、受賞おめでとう。
あなたの略歴をみて、選考委員はみな感心していた。今回は何度乱歩賞の最終ではじかれても、決して諦めなかったあなたの勝利だ。」

→満場一致の受賞も嬉しいけど、この石田さんの選評が一番の勲章ではないかしらん。
ちなみに、下村さん、2006年から毎年「乱歩賞」に応募し、第53、第54、第57、第58回の最終候補に残り、9回目で見事受賞したのだ。
9年連続応募ですよ!

京極夏彦(51)選考委員
「受賞作はたった一つのアイデアで組み上げられた作品である。
物語もキャラクターも、表現や展開も、些細なディテールまでもがその一つのアイデアによって支えられており、またそのすべてが伏線となっている。
しかもそれらは見事に回収される。」


桐野夏生(62)選考委員
「盛り沢山という声もあったが、ツーマッチがこの作品の身上なのだから、削る必要はない。」

今野敏(58)選考委員
「完璧なミステリーを構築している。多くの布石があり、それをすべて拾っている。見事な構成力。」
→京極選考委員とほぼ同じですね。


(*1)江戸川乱歩賞
1954年10月30日、江戸川乱歩が自らの名を冠して創設した、推理小説の登竜門。
主催は日本推理作家協会で、講談社が後援(第38回からフジテレビも参加)。
正賞として江戸川乱歩のブロンズ像、副賞として1000万円が贈られ、
さらに、講談社からの出版印税!
いいなぁ。