降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★圧巻の乱歩賞受賞作❶

2014年08月12日 | 新聞/小説

第60回江戸川乱歩賞受賞作『闇に香る嘘』(下村敦史さん(33)講談社、本体1,550円=写真)を読んだ。
すでに買っていて読もうとしていた
『遺譜(上・下)浅見光彦最後の事件』(内田康夫さん(79) KADOKAWA・角川書店編集、本体各1,700円)
を後回しにして、やはり渾身の新人デビュー作を読んで良かった。

邪魔にならない程度の『闇に香る嘘』ストーリー。
ある大嵐の夜、横浜港に密航中国人集団を乗せたフルコンテナ船が着岸した。
入管職員や警察が駆けつけ、捜査を始めると、ほとんどの密航者はコンテナ内で死に絶えていたが、1人だけ逃亡した。
一方、東京。
68歳・視覚障害者の村上和久は孫のために腎臓移植検査を受けるも「移植不可」だった。
故郷の岩手に向かい、兄の中国残留日本人孤児・竜彦に移植を頼もうとしたが、
兄は検査すら頑なに拒んだ。
さらに、優しかった兄は「中国人によく見られる攻撃的性格」になって、和久らを糾弾してきた。
「性格も変わり、検査さえ受けぬ〝兄〟は本物なのだろうか........」
和久は、日本に来た折の〝兄〟の顔を見ていない。
終戦直後の満州引き揚げ避難行で入れ替わったのではないか。
全盲の和久は、当時の関係者たちを調べはじめたが................。


一気に、読んだ!
濃い一作だった!
目が見えない人の、見える世界の緻密な描写に加え、
地獄絵図そのままだった満州避難行を徹底的に調べあげた取材力(作者は30代!)
さらに、暗号解読、多彩に張り巡らされた伏線が最終章で一気反転する、ミステリーに欠かせぬ要素がてんこ盛りなのだ。
むしろ、てんこ盛り過ぎるのではないか(笑)。
今野敏選考委員(58)は選評で、
「完璧なミステリーを構築している。
多くの布石があり、それをすべて拾っている」
おっしゃる通り!膝をたたきました!
だから、読むとき、たった1行でも油断してはならないのだ.........用心深く読み進んだので、とても疲れたけど(笑)。

............長くなったので、続く(かな)。