6月の終わりから7月の初めにかけて約1週間、ベリック・アポン・トゥィード Berwick Upon Tweed (以下、ベリック)というイングランド北東の小さな美しい町に滞在しました。
私の還暦祝いの「イベント」です。還暦が何かぜんぜん知らない、興味もない同行の夫にとってはただ10年ごとの節目記念の旅行でしたが。
ホテルに5泊はちょっと贅沢でした。と言っても、ホテルの「格」は決して高くはありません。英国の昔ながらのパブの上階に部屋のあるB&B(ベッド&ブレックファースト)です。 連泊割引きも魅力でした。
私はベリックなんて知りませんでした。さすがに夫はスコットランドとの国境にそんな名前の町がある...ぐらいの知識はありましたが。
私の60歳の誕生日はどこか景色のいい静かな場所で迎えようと以前から計画していました。
ここという目的もなく行き先を探していました。滞在先の希望は国内で海のそば。
「海辺の休暇」を希望すればそれこそ候補地が(一説には)1,800を下らないという海洋国、英国では漠然としすぎの希望です。
イングランド内で、南部、中部は遠いのでまず除外。 ここ北西部で人気のブラックプールやモーカム、サウスポートなどの観光地として発展した「通俗」な海岸地も夫がイヤだと言うので除外。...結局は北東部の北海 North Sea 沿岸の漁港もある、静かな海岸線上の海辺の町のいくつかに目的地が絞られてきました。
短時間の検索で、鉄道の便と、河口と砂浜の美しい海岸と古城と、古い街並みと、B&B連泊割引まであるベリックを見つけた時は満場一致(2人ですが)で即決しました。
滞在したホテルは鉄道開設以来、イギリス各地の駅前に必ずと言っていいほどある、発車時刻までエール(英国特有のビール)で時間をつぶせる駅前パブ「レイルウェイ・イン railway inn」です。
古城のふもとの通り、カースル(城)・ストリートの始まりにあるその名もカースル・ホテル Castele Hotel、その名の通り上階が小規模なホテルになっているパブの名前です。
パブ上階のホテルに滞在する泊り客も、伝統的に鉄道利用が前提なので、今どきのホテルにしては珍しく駐車場がありません。
荷物が多かったことや、近隣の比較的知られた名勝地にも足を延ばす計画があったため、結局クルマで行くことにしたのですが(クルマは通りにとめました)。
着くまで、知りませんでした!
12世紀にスコットランドの王様によって建てられた古城(現在は風格のあるボロボロ遺跡)と同時代にたてられた石壁がぐるっと町全体をかこむ,中世の城塞町だったのです。
なんて、ロマンチックな!
本当に小さな町ですから、どの方角にも20分ほど歩けば必ずアーチ型の抜け道のある石造りの壁に突き当たります。
日本人の私たちは「ヨーロッパの石壁に囲われた小さな中世のコミュニティ」になぜか心がときめかされますよね?!
完全無欠の状態で残るこの石壁は、実は16世紀の実用にかられた「再建」だそうですが。それでも十分に古い!
中世のイングランド、スコットランド間の血なまぐさい国境争いに決着がついて久しいエリザベス朝時代にもまだ、河口の町は国防の要だったらしく数百年前に建てられてすでにぼろっちくなっていた石壁をわざわざ当時の最新土木技術で作り直したということです。
日本人に全く名前が知られていないイングランド北限のこの小さな町には日本人が好みそうな観光資源が満載なことに驚かされることしきりでした!
さすがにスコットランドまでたったの2kmの国境の町、スコットランド風のかわいらしい家々も多数。
住民の話すことばも、イングランド南部の人から揶揄の対象になるジョーディと言われる強烈な北東部訛りやスコットランド訛りが混然としています。
芝生が生い茂った、こんもりと盛り土のしてある石壁の上はぐるっと一周、歩けます。
続きます。
お帰りなさい
楽しく読ませて 頂きました
国内で不満を持つ 人間を アメリカに出せた
ので 古い綺麗な物が 残って居るのでは と
勝手に 思っちゃいますが
国内で不満を持つ人間が難民としてひっきりなしに入ってくるのが英国です。
近頃移民排斥の政策や発言が目に耳に入るイヤな英国になってきました。
「おいてやろうよ!」と思う、自身が永住権を持つ外国人の私です。
私は勝手に内陸の地域を想像していたのですが、江里さんの記事を読んで、「造船業に携わっているのなら、やっぱり海辺の地域の人達だったのか?」と今になって気付きました。
「ツイード」って川の名前からきているのですね。全く知りませんでした!
ジョーディGeordie はイングランド北東部に固有だそうです。大都市、ニューカッスルが知られた本拠地。
オーストリアにお住まいのW.H.さんがシンガポールでジョーディ話者と会うなんて、奇遇です。
ただ同じ国境地域でも西よりのカーライルあたりではジョーディではなく、単なる北西部訛りのようです。
ジョーディはただの強い訛りではなく、特有の単語も多く部外者には理解が困難な「地域語」です。
ベリック中みんな、複雑に訛ってました!流石に観光客の私たちに独自の言い回しで話す人はいませんでしたが。
イエス、ノーのかわりにアーイ、ネーイと言うのが全国的によく知られたジョーディ語彙でしょうね。
マンチェスターエリアも実は北西部訛りが強いですよ。私は話せません。
でも、クセはうつっているかも。
ネイティブには「外国語訛りが抜けないくせに地元に溶け込んだふりをしてヘンチキリンな北部訛りを頑張って使っているイタい英語」に聞こえているかもしれません。
日本語風発音が抜けないのは自覚ありです。
W.H.さんはドイツ語を習得されてから、渡墺されたのでしょうか。ロシアでの留学経験もおありだとか。日本で聞く機会ももちろん習得する手段も限られている2つの言語をどうやって身につけられたか興味があります。
私は英語が話せるようになる前にロシア語を習ったことがありますが、すぐぽしゃりました。