イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

1年と4カ月ぶりのマンチェスター!!感無量!行けずにいたパンデミックのさなかに人知れず取りこわされていた「壁」

2021年05月18日 06時39分27秒 | 気になる出来事、社会情勢

昨日、マンチェスターに買い物に行きました!!


コロナウィルスのパンデミックが始まる少し前、2020年の1月末以来、じつに1年と4カ月ぶりです!

感慨無量、大した用事もないのにフラッとマンチェスターに電車で行ってしまえるほどにはパンデミックが終息に近づいているのです。


ロックダウン明けの第二段階(映画、演劇などのエンターテイメントが1年ぶりに再会、飲食店の屋内飲食が可能に!)の、それでもパンデミックが終わってはいないマンチェスターのようすと、気がかりなインド変異株 India variant の、特にここ北西部における感染拡大に関しては次回以降、記事にします。

今回の話題は....お待たせしました。「壁 The Wall 」。



ストックポート日報では私が創刊当初からしつこくしつこく追い続けた、ピカディリー・ガーデンズ Picadilly Gardens を囲むように点在していた、コンクリートの打ちっぱなしの「壁」です。

設計は現代日本を代表する建築家、安藤忠雄。

電車でマンチェスター・ピカディリー駅に着くと雨がザーザー降っていたので、街の中心まではトラム(市電)に乗っていきました。
たったの一駅です。

下りてすぐ目に入ったのは...


プラットフォームと並ぶ湾曲した「壁」の一番大きい部分です。

あら!



「壁」はロックダウン中に人知れず取りこわされたと聞いていたのですが...
大きな「壁」の中を通って、ピカディリー・ガーデンズの中に入りました。

ボールを蹴っていたらしい若者たちが雨宿りをしていました。
大きな「壁」の内側はカフェになっています。

お!


おおおおお…!! いくつかに分かれて公園を囲っていたフリー・スタンディングの壁が取り払われています!



スッキリ!
解放感!!

(上の写真の街灯の向こうの打ちっぱなし壁の一部は大きな壁の端の部分です)



安藤忠雄デザインのコンクリート打ちっぱなしの壁群と、壁に囲われた公園部分は2002年に完成しました。

モダンな噴水と広い芝生の部分は市民の憩いの場として、以来親しまれています。

私がマンチェスターに留学していた30年ぐらい前のピカディリー・ガーデンズは、左右対称に手入れが全くされていない花壇がずらーっと並ぶ、流行おくれのショボい公園( gardens )でした。
真ん中にはいつもおしっこの匂いがしていた古代ローマ風(?)の、モザイクタイルが剥がれかかったみすぼらしい小さい丸い噴水盤がありました。

街の中心の景観の汚点といった感じでした。


現在の、モダンな噴水と緑の芝生のオープンスペースはとても気が利いているのですが、いかんせん打ちっぱなしのコンクリート壁は市民にそれはそれは評判が悪かったのです。

コンペティションで入賞した安藤の案は検討の段階から専門家の間でも論議が分かれていたそうなのですが、どういう経緯でだか着工されてしまったようです。

以来、建築の専門家ではないマンチェスター市民の憎悪の的、取り壊し要請が20年近くも絶えることがなかったそうなのです。
威圧感、閉塞感が、市民の憩いの場にはふさわしくなかったようですね。

都市のオアシスを市電や高層商業ビルなどから遮蔽する意図で建てられた「壁」なのですが、一般の人たちは「囲い込まれた」という気分になったようです。



分断の象徴、悪評高い「ベルリンの壁 Berlin Wall」にそっくり、ということで長い間「マンチェスターの壁 Mancester Wall」と呼ばれてきました。

以前にも書きましたが、私は、壁そのものはそれほど悪くないと思っていました。
簡素で力強く、手入れさえ行き届いていればむしろ美しくさえあるとも。

イギリス人は打ちっぱなしのコンクリート壁を蛇蝎のごとく嫌います。
「ベルリンの壁」や戦争中に海岸線を防御するために設置されたコンクリートの要塞壁などをイメージするのでしょうね。

要するに全く場違いのデザインだったわけなのです。

.....明らかに、ない方がいいということが取り払われた後でわかりました!




壁の所有権が市の公園管理課からプライベートな業者に移行するなど実に様々ないきさつがありましたが、ロックダウン中の去年、ついに取り壊しが決まりました。

去年の11月23日にひっそりと取り壊されていたことを、オンライン新聞記事で突き止めました。


「壁」が緑のオアシスを遮蔽している時の写真を多数載せた、「壁」に関する過去の主な記事のリンクです☟
ぜひぜひ、あけて読んでみてください。



電車のプラットフォームに新しく取り付けられたガラスの壁です。


(市の紋章に使われているハチはマンチェスターのマスコットでもあります。
多くの若い人たちが犠牲になった2017年のテロ事件以来、暴力に屈しない市民の連帯の象徴として街中いろいろな場所で見かけます)

コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (kakowaka)
2021-05-20 12:42:19
そうですかー!
ついに壊されましたか…
でも、全部壊したわけじゃないんですね。
全体の何%くらい壊したのでしょう?
Unknown (江里)
2021-05-20 17:26:06
Kakowakaさんへ:
はんぶんぐらい?内部がカフェとして使われている部分は壊さなかったってことは、建築物として機能はしてるってことですよね
もしかしたらテナント契約が切れたら壊すとか??などの事情は報道されてませんでした。
たとえ商業ビルとして残すとしても、たぶんトラムのホームから目立ちまくりの、カフェの裏側の壁の表面はなんとか処理するとおもいます。
植物をはわせるとか?タイルで覆うとか?
犬と暮らせば (浅井洋)
2024-03-24 20:27:39
日本人に 設計させる なんて
  きっと 英国での 日本の 評価が 高かった
   のでしょうね
でも 嫌なものは 嫌を
  時間をかけて
    お金と 手間をかけて
     治す所が 良いですね

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