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国連児童基金(ユニセフ)は、世界の子どもたちのための国連機関である

2022年04月13日 | 人権

危機の時代を生きる〉 国連児童基金(ユニセフ) ロベルト・ベネス 東京事務所代表2022年4月13日

  • 危機の克服には長い時間が必要
  • 草の根の支援が大きな力に

 国連児童基金(ユニセフ)は、世界の子どもたちのための国連機関である。1946年の国連総会で創設されて以来、約190の国と地域で、子どもたちの命と未来を守る活動を行っている。今回のウクライナ危機においても人道支援の取り組みを続けており、その活動について東京事務所のロベルト・ベネス代表に聞いた。(聞き手=南秀一)

全ての子どもの未来を守る

 ――ウクライナの子どもの人口は750万人とされますが、そのうち200万人が国外に避難し、250万人が国内で家を離れて避難することを余儀なくされています(3月30日時点)。ユニセフではどのような支援を行っているのでしょうか。
  
 ユニセフは今回の危機が起こる前からウクライナで活動を行っています。

 3月時点で同国には約140人の職員に加えて他国からの応援スタッフがおり、事務所を首都のキーウ(キエフ)から西部のリヴィウに移して支援を続けています。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や市民団体などと協力し、緊急支援として医薬品、医療機器、子ども用冬服、衛生キットなどの物資を届けています。

 これらの活動には、多くの支援が必要です。ドナー(寄付者)の皆さま、特に、ウクライナや周辺国の子どもと女性の命を守るための活動を拡大するために、世界的なリーダーシップの模範を示し、ユニセフをご支援くださった日本政府に心より御礼申し上げます。皆さまのご支援に、私個人としても、とても感謝しています。

 ウクライナ危機を受けて、ユニセフはあらゆる分野で人道支援を実施してきました。子どもや妊婦を支援するための病院や診療所への医療機器や物資の提供、必要不可欠な栄養物資の調達、新型コロナのワクチン接種の促進、暴力行為によってトラウマ(心的外傷)を負った子どもたちの社会心理的支援、安全な飲料水や衛生キットの配布、保健ケア機関や学校での清潔な水と衛生施設の確保などです。

 さらに、移動教育センターを100カ所設立し、故郷を追われた子どもたちが教育を受け続けられるように支援しています。また、26万5000世帯のぜい弱な家族を対象に現金給付支援も行います。

ウクライナからポーランドに避難してきた子どもたち(1日、メディカで)。ウクライナの子どもの半数以上が国内外で避難生活を送る(UNICEF提供)
ウクライナからポーランドに避難してきた子どもたち(1日、メディカで)。ウクライナの子どもの半数以上が国内外で避難生活を送る(UNICEF提供)

 ――子どもたちのケアに当たる上で、何が求められているのでしょうか。
  
 子どもたちの中には、親を失ったり、避難の途上で離れ離れになったりした子がいます。戦闘の悲惨な現場を目の当たりにした子どもも数多くいるのです。そうした、つらく悲しい体験によるトラウマへの対応など、心理的なケアが喫緊の課題です。同時に、遊びや教育の機会を提供し、子どもたちの周りに“日常”を少しでも確保していく必要があります。

 私たちはUNHCRや周辺国の政府などと連携し、「ブルードット」と呼ばれる子どもたちと家族にとって安全な場所を、周辺国の国境付近に設置しています。ここでは、子どもが安心して休み、遊ぶことができるほか、専門家による心理的なケアや法的な支援・情報の提供や、同伴者のいない子どもや親と離れ離れになった子どもを特定し、保護できるように努めています。既に32カ所で展開しており、今後、規模を拡大していく予定です。

家族の探索も

 ――ウクライナ国内には、避難できずにいる子どもも多くいると報じられています。
  
 その多くが、障がいのある子どもや、さまざまな事情で親と離れて暮らしていたり、児童養護施設にいたりした子どもたちです。ユニセフでは子どもたちに聞き取りを行い、家族の探索、時には一緒に避難してくれる身内に引き合わせる支援をしています。

 一方で、このような複雑な緊急時には、子どもたちが人身売買や児童労働、性的搾取などに遭遇する危険性が非常に高まります。ユニセフは、最優先課題の一つとして注意を払い、子どもたちの保護に努めています。

モルドバとウクライナ国境付近に設けられたブルードットで、児童心理学者らが子どもたちの遊びをサポート(3月16日、UNICEF提供)
モルドバとウクライナ国境付近に設けられたブルードットで、児童心理学者らが子どもたちの遊びをサポート(3月16日、UNICEF提供)

 ――教育機会の喪失による影響も大きいと思います。
  
 今の学年で学ぶべき内容を学ばなければ、取り返すことが困難になる場合もあり、教員の方々も懸念しています。

 ウクライナ国内では現在までに13の地域でオンラインを活用した遠隔教育が再開しており、ユニセフとしても約1万8000人が避難しているハリコフ市内の地下鉄駅に、アートセラピー(芸術療法)や遊び、読み聞かせ、学習、情緒的支援のための学習教材を備えた「子どもにやさしい空間」を設置。未就学児や子どもたちに学習支援や心のケア支援を提供しています。

 ――事態の終息が強く望まれるとともに、子どもたちがその後、どのような暮らしを送ることができるかが大きな課題です。
  
 国外に避難した子どもたちの中には、親を失った子どももいれば、親が他国にとどまる決断をする家庭もあるでしょう。日本の皆さまからのご支援が示してくれたように、困難な状況に置かれた子どもたちと家族に最も良い選択肢を提供するためには、国際社会の協力が不可欠です。暴力を受けたりトラウマを負ったりした子どもたちにとって、この危機を乗り越えるには長い時間がかかるでしょう。

 私は2004年のインド洋大津波の際にインドネシアのアチェ州で復興支援に従事しましたが、この災害によって子どもたちが心に負った傷を乗り越えるには何年もの時間を要しました。その意味で、子どもたちに寄り添い、中長期的に支援を続けていくことが大切であると思います。

避難してきた人々を迎え、食料や水など命を守る支援物資を提供(3月11日、ポーランドのメディカで。UNICEF提供)
避難してきた人々を迎え、食料や水など命を守る支援物資を提供(3月11日、ポーランドのメディカで。UNICEF提供)
青年たちの連帯

 ――私たち一人一人には、どういった貢献ができるでしょうか。
  
 創価学会の皆さんのように、ユニセフの活動を支援してくださることは大きな力になります。

 貴会が日頃から草の根のレベルで発信されているメッセージこそ、平和への貢献です。市民といっても、さまざまな職業、能力を持った方々がいます。一人一人が自分にできる支援をすることが大きな力になります。私たちユニセフはFBO(信仰を基盤とした団体)とも長い協力の歴史がありますが、平和や対話の文化を築くことによって国際機関や行政の支援を補完する力がFBOにはあります。

 何より貴会には素晴らしい青年たちの連帯があります。そうした若い人たちとも力を合わせながら、共に世界平和への連帯を広げていきたいと思っています。
 
 

 Roberto Benes インドネシアやメキシコ事務所、中東・北アフリカ地域事務所での勤務を経て、モンゴル事務所とアルゼンチン事務所の代表を歴任。ユニセフがリードする若者のためのパートナーシップ「ジェネレーション・アンリミテッド(無限の可能性を秘めた世代)」のディレクターを務めた後、2021年4月より現職。

 こちらから日本ユニセフ協会によるウクライナ支援の特設ページが閲覧できます。

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