〈スタートライン〉 女優 久本雅美さん 人と会って語った時間が自分の最高の財産になる 2016年9月24日
今回は、テレビのMC(司会者)などで大活躍中の女優・久本雅美さんが登場。近著『人に心を開いてもらいたい時、私が必ずやること、やらないこと。』
(TAC出版)に懸ける思いや若者へのメッセージを聞くとともに、同書に寄せた“マチャミ流コミュニケーション術”を伝授してもらった。
――なぜコミュニケーションに関する本を書こうと思ったのですか?
私は、短大時代、友達から「3倍ちゃん」って呼ばれてたんです。“3倍しゃべる”からじゃなくて、人の“3倍考えてしまう”から3倍ちゃん(笑い)。
人前で明るく振る舞っても、“あの言葉はまずかったんじゃないか”って、よく落ち込んだりしていました。
それが、トークのお仕事や、地域の励ましの達人たちから対話の姿勢を学び、変わっていったんです。
コミュニケーションで悩んでいる人も多い時代ですから、自身の経験を通し、お世話になった方々への感謝の気持ちを込めて、会話で心掛けている点をまとめてみようと思いました。
――ずばり、どうしたら久本さんのように、コミュニケーション上手で、人を笑わせられる人間になれるんでしょうか?
心掛けるポイントはあるにせよ、コミュニケ―ションにマニュアルはないと思います。相手に合わせることが大事だし、会話の第一歩は、“相手を思いやる心”です。
ある時、勝俣州和さんが、萩本欽一さんに、「どうしたら面白くなれるんですか」と聞いたことがあったんです。そうしたら、「面白くならなくていいんだよ。優しくなればいいんだよ」って言われたそうです。
すてきな言葉ですよね。
笑わせようという気持ちも、人への優しさや相手への思いやりがあって、上手に伝わるのかな、と感じます。
私も、たくさんトークの仕事をさせていただいて、もちろん、テレビなので、目立つことが大切な場面もありますが、何よりも人への配慮やバランスが欠かせないと実感しています。
「秘密のケンミンSHOW」(日本テレビ系列)では、収録中に、あまりしゃべれていない人がいないか気配りできるよう、「メレンゲの気持ち」(同系列)では、アットホームな雰囲気がつくれるよう、心掛けています。
――10代、20代を振り返って、若い時代にやっておいた方が良かったことはありますか?
若いころは、寝るのがもったいなかったですね。私の知らないところで、面白いことが起こっていたらと思うと、うずうずして眠れなかったんです(笑い)。
当時は、24時間フル回転でした。自分一人でいるのはもったいなくて、どんどん人と会うようにして、良い意味で暴れていました。
今は、自分の時間を大切にする風潮が強くなっていますよね。それはそれで悪いことではないのですが、友達や職場の関係者からの誘いより、自分を優先してしまう子がいると、正直、「もったいない!」って感じます。
積極的に人と会い、語ったことは、私にとって最高の財産です。今があるのも、“仕事に誠実に”という自分なりのポリシーを貫き、さまざまな方々と関わり続けてきた結果です。
あと、若い時代に大切にしてほしいのは、逃げない姿勢かな。
私は、若いころ、夢を追い掛けて上京したのですが、お金も無く、現実の厳しさに心が折れそうなことが、いっぱいありました。諦めることもできましたけど、それでも、何とか逃げずに踏ん張りました。
だから夢を実現できたし、全てのつらい経験が、良い思い出になっているのだと思います。
やっておけば良かったと思うのは、語学ですね。私、海外に行くと、簡単なやり取りは、コミュニケーションを取ることができるんです。ボディーランゲージという“世界共通の武器”がありますから(笑い)。
でも、“やっぱり語学をやっておけば、もっと幅が広がり、深いコミュニケーションが取れる!! 分かり合える!!”と後悔することがあります。未来ある若者には、語学にも挑戦していってほしいですね。
「悩みがなさそうですね」ってよく言われるんですけど、私にもいっぱいあるんです(笑い)。人間関係も、苦手な人というか、“あっ、この人怖そう”といったマイナスの先入観を持つことはあります。
でも、実際に話してみたら、全然イメージと違うこともあるので、なるべく相手の良い面を探すよう心掛けています。
マイナスの先入観が、人と会う壁になってしまったら、もったいないですよね。人と話すためには、当然、会う努力が必要です。
友人との会話は“エネルギーの充電”にもなるので、私も、仕事の合間で友人と会う努力を続けています。
何かを伝えようとする時、一番つらいのは、“ノーリアクション”。リアクションは、会話のキャッチボールを成立させるために必須です。
以前、自動車教習所の学科授業で、自分に言い聞かせるために、「なるほど!」とか反応していたら、先生は私だけを見て講義するようになりました。
お願いですから、他の人も見て……と(笑い)。
おかげさまで、テレビでは、ワイプ(メーン画面の隅に表示される小窓のような画面)に自分のリアクションが映ることも多くなりました。
良いリアクションを心掛けると、プライベートも仕事も今以上に充実するかもしれませんよ!
一流の方は、相手のことを褒めてコミュニケーションを取る方が多いですね。
私も、例えば、後輩が仕事で成長したら、「頑張ったなあ」「力付けたなあ」と、具体的に言葉に出すよう意識しています。「褒める」「励ます」ことで、自分も元気になれます。
感謝の気持ちを表現することも大切ですよね。スタッフさんなどに対しても、「いつもありがとう」と素直な気持ちを表すようにしています。そうすると、心の距離が自然と縮まっていくんですね。
尊敬や感謝の気持ちを心の中にしまっておかず、自分なりの言葉で積極的に表現してみてください。
ひさもと・まさみ タレント、女優。大阪府出身。81年、劇団東京ヴォードヴィルショーに入団し、84年、同劇団の若手だった柴田理恵、佐藤正宏、演出家の喰始らとワハハ本舗を設立した。
舞台だけでなく、テレビ、ラジオなどでも幅広く活躍している。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます