市街・野 それぞれ草

 802編よりタイトルを「収蔵庫編」から「それぞれ草」に変更。この社会とぼくという仮想の人物の料理した朝食です。

他生の縁

2006-10-16 | Weblog
 日曜日、その朝も秋晴れの快晴だったので、山形屋付近の路地を撮影しようと昼ごごにやって来ると、すぐに人だかりがあり、まるくなってなにかを覗き込んでいた。寄ってみたら、囲いの中に一匹の黒犬がいた。

 小型犬で、この犬こそぼくが欲しいとかねがね思っていたグレートデンを小型化したような犬だった。すらりとした長い四肢、鞭のような尻尾、ぴんと立った耳がかっこいいい精悍な顔、そしてなめし皮のように真っ黒の短毛の筋肉質の体、それでいてまわりの見物客に千切れるほど尻尾をふり、前足や舌で甘えかかっていた。6ヶ月の幼犬だという。その里親を探しているというのだ。

 思わず「私が貰います」と口から出てしまった。
「いい人からもらわれて、おまえ良かったねえ」と飼い主さんから予防注射済み証明書、おやつ、フリスビー、引き綱を手渡され、まわりの観客から拍手で送られ、ぼくは、しあわせな気分で、このクロと午後の街を歩き出したのだ。

 おどろいたことに行き交う若いカップル、子供を連れた若夫婦、老夫婦、子供自身、女子高生から大学生まで、「かわいい」と声をかけたり、立ち止まって撫でようとすると、前足を挙げ、舌でなめ、狂ったように尻尾を振って愛嬌を振りまくので、人気沸騰した。こうして人と待ち合わせの清水町のラディッシュまで1キロ近くを自転車で引いていった。

 1時間ほどで用をすまし、急速に仲良くなったぼくらは、ふたたび山形屋にもどりしばし、前のベンチで休んでいると、母娘つれの上品な二人から「あらあ、ラディッシュにいらしたでしょう」と声をかけられた。知り合いでなくて、その駐車場で、このクロちゃんとあそんでいたのですよーというのであった。これほど魅惑的な犬なのである。この犬の魅力にいかれたぼくの意識もさもありナンであった。

 ほんのいっしゅんで人生は一変するのである。続きは明日、可能ならば。

 
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