つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

冬木立

2012-12-21 16:09:56 | ジャズ

 きょうは冬至。一年中でいちばん昼が短い日だ。日の影が一年中でいちばん長くなる日でもある。

 冬至の日はゆず湯を使い、大根のなますやかぼちゃを食べる、と風習はいまでも残っている。この日にこんにゃくをを食べるのは、
 おなかの掃除、という意味があるらしい。

 冬至のころは冬木立が美しい。東京近郊の雑木林は、木の葉の衣脱ぎ捨てて、裸の姿で立ち並んでいる。
 木々のこずえが大空に自在の模様を描く姿は、いくら見てもあきることがない。

 冬木立がひときわ美しく見えるのは、ニューヨークの街らしい。
 平手打ちのような鋭さで、ある日、厳冬がやってくる。乾いた灰色の路上に、セメントの粉をまき散らしたような初雪の粒が、風に吹かれて
 渦を巻く。零下10度、耳の中にくいこんでくる寒さの中で、街の裸木は厳然と立つ。
 枯葉がからからと音を立てて転がる。ニューヨークがいちばんニューヨークらしくなる季節。

 この街を舞台にした小説では、その破局のやま場を「酷寒のニューヨーク」に設定した作品が多い。『ミスター・グッドバーを探して』が
 そうだった。『真夜中のカウボーイ』がそうだった。『ラヴ・ストーリィ』もそうだろう。

 ニューヨークの酷薄さ、非情さ、そこに生きる人々の精神風景を描こうとすれば、やはり冬木立の季節がいちばんふさわしいのかも知れない。冬ざれの木々には、詩的な荒涼感がある。死の気配がある。


 もっと近づいてみると、一本一本の木は、眠りながらも小さな芽を守って冬を越そうとしていることが分かる。
 冬木立の中に死の気配を思うか、あるいは、堅い麟片に包まれた芽の中の生命力を思うか。人はさまざまだろう。

 冬至の日、一陽来復を願う心の中には、まちがいなく再生への祈りがある。


  今日聴いたジャズ・・・

  ROBERT LAKATOS TRIO・・・「NEVER LET ME GO」



  本作は、1988年生まれ、ハンガリーのジャズ・ピアニスト ロバート・ラカトシュのリーダーアルバム。

  繊細なタッチ、端正に刻みこまれるフレーズは、あくまでも麗しく、聴き手の心に寄り添うな真摯なピアノを聴かせてくれる。
  音の美しさに定評のある澤野工房だけあって、本作も透明感があり、スローな曲も、アップテンポに演奏される曲も、実に音が美しい。

  全12曲、スタンダード中心で聴きごたえ十分の作品に仕上がっている。個人的にも好きな曲が多く収録されているところも嬉しい一枚。


1・ALL OR NOTHING AT ALL・・・2・NEVER LET ME GO・・・3・MY FAVORITE THINGS・・・4・LAST TIME TOGETHER・・・
5・WEAVER OF DREAMS・・・6・RAY’S IDEA・・・7・THE MORE I SEE YOU・・・8・ESTATE・・・9・WALTZ FOR SUE・・・
10・WHEN WILL THE BLUES LEAVE・・・11・TILL THERE WAS YOU・・・12・YOU’RE MY EVERYTHING・・・


   ROBERT LAKATOS(p)
   FABIAN GISLER(b)
   DOMINIC EGLI(ds)


   2006年10月22&23日録音・・・