花屋さんの店頭に、シクラメンの鉢が並んでいる。白い炎、
唐紅の炎、ぼたん色の炎、べにふじ色の炎、と多彩な炎の色だ。
かがり火花とか、かがり火草とか呼ばれるこの花には常に炎の
感じがある。
葉は密生していて、深い森を思わせる。その深い森の暗がりから
すっくとくきが伸びて花をつける。花のつけ方が一風変わっていて、
萼(がく)がうつむいているのに花びらは反り返って、上を向く。
見事なほど、一斉に上を向く姿がかがり火にたとえられるのだろう。
がんと闘って亡くなった著名な解剖学者、細川宏さんは、病床を
飾る数々の花を見つめながら歌った。
”夜になると / シクラメンの花に灯りがともって / やわらかい
ピンクの彩色光が / ハイウェーをくまなく照らす / シクラメンは /
花の国のハイウェーを飾る / スマートなデザインの照明灯りだ ”
病床の窓辺にあって、この花はどれほどたくさんの人々を励まし続けた
ことだろう。もろくてかよわい花に見えるが、葉も花びらも厚くて
触るとたけだけしい感じさえある。
葉をかきわけると、大小のつぼみが、噴き出る生命力を抑えるように
して出番を待っている。
炎や照明灯になって一隅を照らしだすこの花の強靭な命が、病者にも
伝わるのだろうか。
銀座で花屋を経営する鈴木昭さんによると、甘やかされたシクラメンは
逆境に弱いが、自然児として育てられたシクラメンは葉も堅く、砂漠の
ように乾いた室内でも強さを保つという。
過保護の戒めは人間と同じで、栽培さえきちんとすれば強靭な花らしい。
年が暮れる。大地を裂いて、福寿草の芽が姿をのぞかせている。
”逝く年のわが読む頁限りなし ”たくさんの宿題を残したような、
中途半端な気持ちのまま、今年もまた、除夜の鐘をきくことになるのだろうか。
今年もいろいろなミュージシャンのライブに出かけた。
印象に残る、ライブが甦る。その中で、12月に聴いた、TRIO’のライブ
は昨日のように鮮やかに、まだ三人の醸し出す音色が耳に残っている。
今年の最後に、とっておきの一枚を聴こう。。
”雨が降っても晴れた日も、君を愛してみせる・・・。
僕は君といつも一緒さ・・・雨が降っても晴れた日も・・・”
TRIO’ COME RAIN or COME SHINE・・・
全11曲中、福田重男(p)のオリジナルが2曲、他は、スタンダードで
構成されている。ナット・シモンの 「ポインシアーナ」ジョビンの
「フォトグラフィア」も収録されている。
福田氏のオリジナルは、学生時代に書いたという、美曲 「LULLABY」
布川俊樹とのデュオ盤のアルバムタイトルにもなっている 、
「CHILDFOOD’S DREAM」・・なんと良い曲を書く人だろう・・・
スタンダードの一曲、一曲のアレンジにも創意工夫がされていて、
月並みな曲で終わらないところも、三人のアーティストとしての
クオリティの高さを思う。
1・IT’S ONLY A PAPER MOON・・・2・LULLABY・・・3・ALL THE
THINGS YOU ARE・・・4・POINCIANA・・・5・WHAT A DIFFERENCE
A DAY MADE・・・6・COME RAIN OR COME SHINE・・・
7・HERE’S THAT RAINY DAY・・・8・WHEN LIGHT ARE LOW・・・
9・FOTOGRAFIA・・・10・CHILDFOOD’S DREAM・・・11・MY SHIP・・
福田重男(p)
森泰人(b)
市原康(ds)
2006年10月9、12日録音・・・
みなさま よいお年をお迎えくださいませ