つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

山頭火と枯れ草

2012-12-09 17:07:55 | ジャズ

 暦の大雪を過ぎると、師走の日々はもうまっしぐらに冬至へ向かう。いまは野草の花の少ない季節だけど、それでも日当たりのよい
 ところでは西洋タンポポが咲いている。白いスミレが一輪だけ咲いていることもある。

 「晩秋初冬は私の最も好きな季節」だといった種田山頭火はよく枯れ草をうたった。「やつぱり一人はさみしい枯草」
 「枯れゆく草のうつくしさにすわる」。亜麻色の世界には人を包み込む温かさがあるが、時には人を寄せ付けないぶきみな感じになる。

 よく見ると枯れ草の世界は亜麻色一色ではない。根元にはもう、小さな緑の命が萌え出ている。
 ハコベやヨモギが姿を見せている。ぽっちりと紅色のつぼみをつけたホトケノザもある。

 枯れ草や落葉は土を覆うふとんになって、早春の草を守る。それは冬が春を抱え、冬の命が春の命を守っている姿だ。
 季節は、秋から冬へ、冬から春へと一斉に移り変わるのではない。

 木枯らしの中にすでに萌える春がある。

 師走。風の冷たい今ごろの季節になると北国生まれの室生犀星の詩『雪くる前』を思い出す。

 ”ひとすじに逢ひたさの迫りて / 酢のごとく烈しきもの / 胸ふかく走りすぐるときなり / 雪くると呼ばはるこゑす /
はやも白くはなりし屋根の上 ”・・・



  今日聴いたジャズ・・・


  CHRIS ANDERSON & SABINA SCIUBBA・・・「YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS」
  (with BILLY HIGGINS and DAVID WILLIAMS)



  本作は、ブラジリアンガールズのボーカリスト、SABINA SCIUBBAと盲目のピアニスト、クリス・アンダーソンのデュオ・アルバム。
  曲によっては、ベース、パーカッションがかすかに聞こえる。
  クラブミュージック色の強い彼女が、スタンダードを力むことなく、リラックスして歌っている。

  クリス・アンダーソンは、ハービー・ハンコックやバリーハリスが感銘を受けた盲目のピアニスト。
  独特の感性を持った個性的なミュージシャンでもあり、リーダー作は少なくて、表舞台に立つことのなかったピアニスト。

  昼下がりのひとときにBGMとして聴くのに最適な一枚だと思う。


1・THE MORE I SEE YOU・・・2・YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS・・・3・MY ROMANCE・・・4・ESTATE・・・
5・POLKA DOTS AND MOONBEAMS・・・6・HOW LONG HAS THIS BEEN GOIN’ON?・・・7・AIN’T MISBEHAVIN’・・・
8・THE GYPSY・・・9・TOO LATE NOW・・・10・LAZY AFTERNOON・・・


  CHRIS ANDERSON(p)
  SABINA SCIUBBA(vo)
  BILLY HIGGINS(perc)
  DAVID WILLIAMS(b)

 1998年7月、ニューヨークにて録音・・・