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曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

オペラとミュージカルの違い(3)

2007-01-22 23:05:56 | 大学
以前、このブログで、「オペラとミュージカルの違い」について、2度ほど、説明の文章を書いたことがある。

→ オペラとミュージカルの違い (2006/03/10)

→ オペラとミュージカルの違い(2) (2006/05/04)

ところで、シアターガイド誌2007年1月号で、音楽評論家の山田治生氏が、「私もオペラが苦手だった…」という連載コラムの第8回として、「オペラとしてのミュージカルのススメ(その1)」という文章を書いている。

最初の方の文章を引用する。

形式的には、発声法(ベルカント唱法か地声で歌うか)、音響機材の有無(生声かPAを通すか)、アレンジのテイスト(ドラムスやエレキ・ベースなどの有無)、興行形態(数回の公演かロングランか)などの違いがあるが、本質的にはオペラもミュージカルも同じ根っこを持つ「歌芝居」に変わりない、と私は思う。(引用終わり)

この見解に私もまったく異論はない。

実は、以前に、玉木正之氏の「オペラ道場入門」を大変面白く読んだ記憶があるが、たしか、同書においても玉木氏の意見は、オペラとミュージカルに本質的な違いはない、というものであった。

玉木氏の主張のポイントは、言語の違いによって音楽のリズムその他に必然的に違いが出てくるので、オペラの二大勢力であるイタリア・オペラ、ドイツ・オペラと(英語中心の)ミュージカルを比べればその違いは明瞭だが、仮にどちらも英語を使って上演される作品同士を比較するのであれば、オペラとミュージカルはほとんど区別できない、というものだった。

オペラ道場入門
玉木正之著
小学館

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山田氏のコラムに話を戻すと、近年、従来にも増して、オペラとミュージカルの垣根が取り払われつつあるという。

その例として挙げられているのは、以下のような現象である。

・オペレッタの殿堂であるウィーン・フォルクスオパーで「サウンド・オブ・ミュージック」が上演され、数年前にはシカゴ・リリック・オペラで「スウィーニー・トッド」が人気バリトン歌手ターフェルの主演で上演された。

・ミュージカルでも、「オペラ座の怪人」などのオペラ的な作品が増え、日本でもアメリカでも音楽大学で声楽を専攻した人がミュージカル俳優になることが珍しくなくなった。

そうなのだ。オペラとミュージカルは、相互乗り入れが増えてきているのである。

日本では、芸術大学出身の若手声楽家が何人も劇団四季に入団してミュージカルの主役を演じている。

だが、上記の山田氏の挙げる例でも、「日本でもアメリカでも」としていることに注意が必要だろう。つまり、ミュージカルがオペラと同じかそれ以上に盛んな土地柄でないと、オペラ歌手がミュージカルにぞくぞく参入するという事態は考えにくいと言ってよいのではないか。(上記の「サウンド・オブ・ミュージック」はまだ珍しい事例と言ってよいと思う。)

ミュージカルがオペラ以上かオペラと同じ程度に社会的な地位を確立しているという状況があてはまる国としては、アメリカ、日本のほかにはイギリスがあげられるのだが、この点について、イギリスの事情はどうなのだろうか。








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