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「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

レインボー・メディスン(虹の療法)

2017-10-08 19:04:36 | 心身宇宙論

レインボー・メディスン(虹の療法)は、アーノルド・ミンデルが2004年に発表(日本語版は2007年に刊行)した著書『身体症状に〈宇宙の声〉を聴く(The Quantum Mind and Healing)』の中に、量子的医療(クオンタムメディスン)、非局在的医療(ノンローカルメディスン)を実現するメソッドとして述べられている。

私にとって『シャーマンズボディ』以来2冊目となるアーノルド・ミンデルのこの本は、私とはちょっと奇縁がある。
普段、ネットで本を買う時はamazonを使うのだが、この本だけはなぜか楽天ブックスで注文した。実は注文ボタンをクリックした後、突然気が変わって取り消ししようとしたのだが、楽天ブックスは(現在はどうかわからないが、当時は)一度注文したものは事実上、取り消しができない仕組みになっていて、結局購入することに。が、そんな案配で買ってしまったせいか最初の数ページを読んだきり、ずっと放置していた。
私は基本的に数学書以外はできるだけ図書館で借りて読むことにしているが、それでもなぜか本は増えていく。で、この先もう読まないであろう本を14冊ほどブックオフに持ち込んだのだが、この本だけは天の部分に1個、直径1mmほどのシミがあることを理由に買い取りを拒否され、持ち帰らざるを得なかった。
それで半分仕方なく読み始めたのだが、これは今の私にこれ以上ないくらい必要な本だった!

『身体症状に〈宇宙の声〉を聴く』は、買った当時は訳出されたミンデルの著作の中で一番新しいものだった。
もともとミンデルはMITで理論物理学の修士号を得た後、臨床心理学を修め、世界各地のさまざまなシャーマンのもとを訪ねる中で、ユング派の心理学をシャーマニズムと融合させ、ドリームボディ(後に『シャーマンズボディ』を書いた頃からは、ドリーミングボディへと変わったが)というコンセプトとしたプロセス指向心理学(POP)を構築し、それを推進してきた。
そのPOPを更に量子論と結びつけ、「合意的現実」を越えた多次元の中で身体に現れる問題(症状)を解いていく、Quantum Mind and Healing(量子レベルの意識と治癒)という新たなメソッド、レインボー・メディスンを打ち立てたのが、この『身体症状に〈宇宙の声〉を聴く』である(注)

この本の中からレインボー・メディスンについてのミンデル自身の言葉を引用すると

虹が多くの色から成り立っているように、身体は──他のあらゆる物質と同じように──さまざまな「色」の現実を持っている。そのうちのある一つの「色」は「合意的現実」であり、私たちみんなが慣れ親しんでいる、実体的で、物理的な、生物医学的現実の諸側面である。(中略)しかしながら、すべての物質と同様、身体は他の「色」、あるいは他の「周波数」をもっている。
身体は夢に似た次元をいくつも有している。それは容易に測定したり、時空間内に位置づけたりすることができない。(中略)それにもかかわらず、多くの人たちは、そのパターンが顕現して認識できる以前に、それの微細な傾向性を感じることができる。
レインボー・メディスンは、物質的現実の実際の時間や空間とともに、身体の心理的現実における夢のような次元をも含む。(中略)
レインボー・メディスンは少なくとも以下の現実の三つの次元に取り組む。それぞれの現実(次元)は自覚の特定のあり方と結びついている。
1.合意的現実──時間、空間、重量、再現可能な測定の観察
2.ドリームランド(夢の次元)──主観的感情、夢、夢に類似したイメージ経験
3.エッセンス──微細な傾向性の知覚。沈黙の力から夢が生起するプロセスに対する明晰な感覚

そしてミンデルは、このドリームランドに入るための後押しとなる「沈黙の力」について、このように述べている。

量子論のもう一人の生みの親であるヴェルナー・ハイゼンベルクは、物質的現実の背後にある量子波動関数は、日常的現実に向かう想像(界)的かつ予測不可能な「傾向性」を説明していると述べた。(中略)アボリジニーの人々にならってシンプルに言うならば、世界は(物理的時間ではなくそれ以前の)「夢の時間(ドリームタイム)」に始まったのである。「沈黙の力」とは、このドリームタイムの感知可能な諸々の影響力のことである。
ドリームタイムの沈黙の力はあらゆる現象の背後にある。(中略)沈黙の力は、諸現象の源の初期の初期に関する概念であり、経験である。

ここでミンデルは「合意的現実」を越えた「夢の次元」として、4次元、5次元、…といった高次元空間だけでなく、量子論の多世界解釈に基づく分岐した世界全体まで包含するものを想定しているようだ。

が、この点に関しては(仮に多世界解釈を認めるとしても)実数と同じ濃度を持つはずの分岐した世界全てを認識し治癒することは、たとえ彼の言う「沈黙の力」を持ってしても不可能ではないか、という理由から私は懐疑的だ。それに、そんな分岐した世界など仮に存在しなくても少しも悲しむ必要はない。そんなものがなくても、夢の次元は十分すぎるほど豊かなのだから。

私はこれまでも数学からは連続性や微分可能性常微分方程式論における解の存在と一意性位相の概念、そして代数的トポロジーにおけるホモロジー代数などを、また中医学からは陰陽五行論、更にカバラにおける「生命の木」シュタイナーのオカルト生理学などを、心身(ボディマインド)への観点に加えることを試みてきた。
西洋医学的な解剖学、生理学、生化学といったパラダイム(枠組み)によって作られた医学の「合意的現実」からしたら、そうしたものは雲を掴むような荒唐無稽な話、ドリームランド(空想世界)の子供じみたおとぎ話にしか見えないかもしれないが、決して完全無欠ではない西洋医学の体系にある綻びのその向こうに、数学や中医学、カバラ、神秘学といったものが「合意的現実」を越えた別の現実(夢の次元)として確かに存在しているのである。
実際、私がそうした「別の現実」にアクセスするやり方は、ミンデルがレインボー・メディスンにおいてドリームランド(夢の次元)にアクセスするやり方にとてもよく似ている。

そういう意味で、私は自分でも全く気づかないまま、(ミンデルとは異なる切り口ではあるが)レインボー・メディスンへと近づいていたのだ。それがこの本と出合ったことで、更にミンデル的に変容しようとしている。その結果がどういうものになるかは、まだ見えないが。

(注)スピ系も含めて何らかのヒーリング・メソッドを量子論と結びつけたり、量子論にその根拠を置いたりすることは特に珍しいことではない。ただ、ミンデルのそれが他の類似物と違うのは、彼が実際に理論物理学を専攻していたところにある。つまり彼の論は、物理学の基礎も知らずにどこかの誰かが言った量子力学の解釈論をテキトーにパクってきて使っているのではない、ということだ。


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