2025年冬アニメは再放送を含めて15本を見ている。そのうち本放送終了から連続して再放送に入った『烏は主を選ばない』を除く14本のネタバレなしの感想と評価。この「1」は、3/22までに(一旦)放送が終わった4本について。
ちなみにアニメの評価については、私の場合、何より物語が面白いことが重要で、作品全体の評価の少なくとも半分はそれで決まる。逆に萌えやエロといった要素にはさほど興味はないし、作画崩壊も(目に余るほどヒドくなければ)問題にはしない。
以下、並びは50音順で、評価はA~E。
『SAKAMOTO DAYS』分割2クールの第1クール
最強の殺し屋として恐れられた坂本太郎だったが、愛する女と出会って結婚し引退。雑貨屋のオヤジとなり、そして坂本は太った。そんな坂本の元に、彼を殺そうとする凄腕の殺し屋たちが現れる。だが(その体型にもかかわらず)坂本の殺し屋としての力は全く衰えていなかった。
一部に今期の覇権候補という声もあったが、私にとっては今期の箸休めアニメ。この手のシチュエーション・コメディはまず状況(シチュエーション)設定が命で、それに関して『SAKAMOTO DAYS』は非常にエッジが効いていて絶妙だったと思う。ただシチュエーション・コメディは単発でこそ強みを発揮するもので、連続ものには向かない。実際、『SAKAMOTO DAYS』も第1話は面白かったが、それ以降は初期設定を上回るサプライズがなく、普段はやらない倍速視聴するほど退屈だった。原作勢からは「原作のよさ(=絵の迫力)をアニメ化し切れていない」という意見も出ているようだが、書店で「お試し」の第1巻だけパラパラ見た感想を言えば、アニメは原作のシチュエーション・コメディとしてのカラーやトーンに上手に合わせていると思う。あんな軽いコメディを重々しい絵で動かしても、(原作勢を除けば?)違和感ありありで、ただ気持ち悪いだけだ。
バトルシーンの作画に文句を言っている人は『鬼滅の刃』などが念頭にあるのかもしれないが、『鬼滅』のバトルシーンはufotableが原作を盛りに盛って制作したもので、あんな変態的なアニメは基準にならない。それにバトルシーンの迫力のなさばかりが不人気の理由のように言われているが、それなら同じ土曜日に『SAKAMOTO DAYS』の後に放送されていた『チ。-地球の運動について-』を見てみればいい。『チ。』はただの地味な会話劇だが、そこで語られる言葉の深さは圧巻で、なまじっかバトルシーンの作画をよくした程度ではまるで勝負にならないだろう。
『SAKAMOTO DAYS』のアニメ制作はトムス・エンタテインメント(TMS)で、「制作ガチャに外れた」との声もあちこちに見られるが、TMSは例えば「ジャンプ」作品では『Dr.STONE』のアニメなども制作していて、決して「外れ」の制作会社ではない。むしろTMSの方が、ちょっと絵が上手いだけで中身のない作品をアニメ化しなければならなくなって「原作ガチャに外れた」と言えるのでは?(今期、ENGIが制作することになり「制作ガチャに外れた」と言われていた『メダリスト』は蓋を開ければ出色の出来で、もう誰も「制作ガチャに外れた」などと言う人はいない。それは恐らく、原作に制作スタッフを本気にさせるだけの力があったのだろう)。
で『SAKAMOTO DAYS』も、話が進むにつれて巨大な殺し屋組織だとかORDERと呼ばれる幹部たちだとか×(スラー)という名の謎の敵だとか、「ジャンプ」マンガにおける定番の設定を出してきたが、第1クールは結局、ギャグにもシリアスにも振り切れない何とも中途半端な立ち位置のまま終わってしまったように思える。
評価はD~D+。ネットでは「第2クールは期待できる」との情報が流れているが、見るかどうかは秋期に見たいアニメが何本あるかによる(見たいと思う作品が少なければ入れてもいいと思う)。
『チ。-地球の運動について-』第2クール
C教が支配する15世紀ヨーロッパのP王国にあって、異端とされた地動説の研究に文字通り、命を懸けた人たちの群像劇──のように見せて、最後の2話でそれを一気にひっくり返してくる。特に最終話は、サブタイトル「?」の通り、視聴者の頭にいくつもの「?」を残して終わる。
アクションシーンやバトルシーンはほとんどなく、物語の大半(回によっては、ほぼ全て)が登場人物たちによる会話劇なのだが、そこで交わされる言葉の一つひとつが素晴らしくて何度も見直してしまう。同じ土曜日に『チ。』と前後して放送されていた『SAKAMOTO DAYS』は「原作に比べてバトルシーンの作りが…」などと叩かれているが、それ以前に(比べるのも申し訳ないが)正直、「モノが違う」という感じ。
「宗教」と「科学」、「信じること」と「疑うこと」、「真実」と「虚構」、「何かを追い求めること」と「それを阻むこと」…誰の心にもある二項対立を描きながら、そのどちらが正しいかを断ぜず、むしろ「それって本当に正しいの?」と視聴者/読者を激しく揺さぶってくる(例えば、ある時に「正しい(ように見える)もの」と「間違っている(ように見える)もの」が、常に誰にとってもそうであるとは限らない)。そういう意味で『チ。』とは、まるで禅の「公案」のような作品だ(もしかしたら、繰り返し見続けると、そのうち「悟り」に至るかも)。原作者である魚豊(うおと)が大学で哲学を専攻していた(2年で中退したようだが)ことが、この作品のバックボーンになっていると思われる。
評価はB~B+。
『ラディアン』(再放送)2期第2クール
いよいよ役者が揃い、魔法使いたちが治めるシファンディール大陸を、魔法使いを敵視する異端審問所が急襲し、全面戦争に突入する。魔法使い騎士団、異端審問所のほか、シファンディールの森に住む精霊たち、この戦争の裏で暗躍する商人男爵のグループまでが入り乱れての戦いになるが、敵の中にも味方がいたり、味方の中にも敵がいたりと、一筋縄ではいかない。このシファンディールの戦いはどのような決着を迎え、セトたちの運命は?
私は本放送も見ていたので『ラディアン』は今回が二度目だが、冒険活劇としても面白さや物語の深さでは『リゼロ』と比べても決して遜色ない(もちろん見た目の残酷さでは『リゼロ』の方が遙かに上だが)と思っていて、そんな作品が本放送の時も全く話題にならなかったのが悲しい。返す返すもグダグダすぎて多くの視聴者が離れてしまった1期の前半が悔やまれる。
評価は迷うことなくA~A+。まだ回収されていない伏線がたくさん残っており、ぜひ3期もやってほしい。
『るろうに剣心』2期第2クール
明治政府転覆を目論む志々雄真実(ししお まこと)一派による京都焼き討ち計画を描く「京都大火編」の後編。
『るろ剣』1期は各地で不平士族の反乱が頻発した時期の話でもあるので、物語自体は虚構とはいえ多少なりともリアリティを持って見ることができた。だが2期は、史実では西南戦争も終わり社会が動乱期から安定期に変わる頃で、この時期にこのような企てが起こることには違和感がある。「所詮は作り話なんだから、面白ければそれでいいんだ」という意見もあるだろうが、この「京都大火編」は、これまで短いエピソードでつないできた『るろ剣』が本格的に長期連載できるようになり、まとまった話数を稼ぐために分かりやすく国家転覆というネタを持ってきただけ、という気がしてならない。その結果、「十本刀」と呼ばれる志々雄一派の幹部連を出してきたり、京都焼き討ちは陽動で実は…といったヒネりもありながら、そこで構想が尽きてしまったのか、「俺たちの戦いはこれからだ」的な何とも中途半端な終わり方になってしまった(ネットでは「原作と違う」という批判も出ているが、私は原作も旧アニメ版も知らないので、それについては分からない)。
…といろいろ書いたが、少年マンガっぽい熱い展開もあり、決してつまらない作品ではなかったので、評価はB-。公式サイトによれば、3期の制作も決定したとのこと。今回のアニメ化では連載中?の「北海道編」までやることも視野に入っているようなので、3期はそれか?
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