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ユリゴコロ

2017-10-01 23:23:43 | 趣味人的レビュー

映画『ユリゴコロ』を見た。

私は原作を読んでいないが、沼田まほかるの同名の原作はミステリの中でもイヤミス(=イヤなミステリ)と呼ばれるジャンルの作品であることは以前から知っていた。そして「心を持たず、次々と殺人を重ねる女の話」ということから、サイコパス物を想像していた。

私は子供の頃からミステリを山のように読んできたし、虫酸が走るようなイヤな話、おぞましい話もいくつも知っている。もしかしたら、かつて読んだそうした話を凌駕するような衝撃を与えてくれる映画なのかワクワク、と期待して見に行った──

──んだが、実際に見てみると全然違っていた。



え、これがイヤな話? いや、普通にいい話じゃんよ~コレ。確かに物語の中で人はたくさん死ぬし、ミステリっぽくクライマックスにどんでん返しもあるが、そこにこの作品の核心があるわけじゃない。「人を殺しちゃいけないよ」なんていう倫理上の些細な問題を除けば、家族のヒューマン・ストーリーとして完全に成立してる。映画『ユリゴコロ』は、イヤミスどころか心温まる泣ける作品だ(キッパリ)。

物語に難があるとすれば、美沙子が子供時代からあれだけ人を殺してる(あるいは、美沙子の周囲であれほど人が死んでる)のに犯人が挙げられず迷宮入りしてしまっていることで、さすがにこれは都合よすぎるだろう(うち1件は事件ではなく事故として処理されたことが語られているが)。

ともかく、原作と映画では物語そのものが違う、というのでない限り、これのどこがイヤミスなのか私にはサッパリわからない。これを「イヤミスだ」なんて呼んでるバカは、ミステリどころか普通小説すらマトモに読んだことがないんじゃないか(普通小説にだって、これより遙かにエグイ話はいくらでもあるぜ)。

最高におぞましいラストが待っている作品なら、浦賀和宏の『彼女は存在しない』、あちこちで人を殺していく女の話なら、ピエール・ルメートルの『その女アレックス』、心を病んだ人間の話ならロバート・ブロックの『サイコ』(ヒッチコックの同名の映画の原作)くらいは読んで勉強しろよ。


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