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深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

世の効果的なマーケティング手法は全て、何らかの形でカルト・マーケティングである

2025-03-28 09:44:56 | 一治療家の視点
世の中には驚く程多くのマーケティングに関する本があって、しかも日々新しい本が出続けている。その中には定評ある本も少なくないが、もし仮に私が「マーケティングを勉強したいので、オススメの本を教えて」と言われたら、いの一番に挙げるのが、この『危険だからこそ知っておくべき カルトマーケティング』だ。なぜなら、本書には効果的であることが歴史的に実証されているマーケティング手法が網羅され、世の中にある他のマーケティング本は全て、本書の内容の一部をブローアップして1冊の本にしたものに過ぎない、と言っても過言ではないからだ。

つまり、世の効果的なマーケティング手法は全て、何らかの形でカルト・マーケティングであると言える。著者の雨宮純はカルト・マーケティングについて
特定の教義に人々を心酔させ、顧客グループとしての一体感を醸成することで熱狂を生み出し、売上や労働力の確保に繋げるためのマーケティング
と説明している。ここでは「教義」という言葉を使っているが、天宮の言う「特定の教義」に「反戦」、「SDGs」、「103万円の壁の撤廃」といったものを当てはめれば、これはいわゆるカルト教団だけのマーケティング手法ではないことが分かる。

カルト・マーケティングの詳しい内容については本書を読んでもらいたいが、目次に書かれたセオリー1~6を列挙するだけでも意味があるだろう。

セオリー1 人々を「今、ここではないどこか」へ連れて行く教義を作る
セオリー2 共通敵を設定し、教義と個人を接続する
セオリー3 外部との接点を作る:福音の伝道と関係の構築
セオリー4 覚醒の物語を現実世界とリンクさせ、信者を没入させるスイッチを埋め込む
セオリー5 外部との差異を認識させ、仲間意識を醸成することで集団を強固なものにする
セオリー6 教義から金と労働力を引き出す

これらには宗教的な言葉が使われているが、上で述べたように、それを適当に別の言葉に読み替えればどんなビジネスにも、また社会運動にも当てはめることができる。実際、雨宮も「はじめに」の中で
本書では一部のオンラインサロンや、(恐らく意図的に)党員の間に熱狂を生んでいる国政政党である参政党、さらにネットでの炎上事例や、特定の思想を背景として破壊的な行為に及ぶテロリストについても取り扱う。集団を形成した人々が生む沸騰状態や、特定思想への没入が生む興奮は、カルト・マーケティングに魔力を与える重要な要素だからだ。
と書いている。

私は以前、成功本や成功セミナーにハマって、高額のコンサルティングまで受けていたことがある。そこで上のセオリー1~6をそれに当てはめてみると…
成功本や成功セミナーではまず「あなたは今のままでいいんですか?」と問われる。「あなたは変わらなければならない」と。それは現在を否定し、同時に「私(たち)の言うとおりにすれば、今とは違うところに行ける。あなたは成功することができる」ということを表している。これがセオリー1だ。
成功本や成功セミナーでは著者や講師の提唱するメソッドに読者や受講者を賛同させなければならない。そこで有効なのが「敵」を設定することだ、と前に私が受けたセミナーの講師は言っていた。「今は○○が正しいとされているが、ダマされてはいけない。本当に正しいのは××だ。そして私が提供するのが、その××だ」というように、「敵」を明確に決めろ、と。これがセオリー2に当たる。
そして(場合によっては合法非合法問わず)さまざまな形で○○を攻撃し、××を擁護する。攻撃が過激で極端であればある程、注目を浴びやすい。当然アンチも増えるが熱狂的なファンも増えるので、彼らと接触して「××によって人生が変わる。世界が変わる」と思い込むように誘導し、関係を構築していくのがセオリー3(例えば、成功本には著者によるネット記事やネット動画へのQRコードやセミナー案内などが挟み込まれている)。
そこで小さな気づきにつながるヒントをいくつも用意して、「××によって自分も覚醒しつつある」という実感を与えるのがセオリー4。
すると「××を知らない他の人たちは覚醒していない。覚醒した自分たちは特別だ」という、ある種の特権意識が芽生え、その本の読者やそのセミナーの受講者の間の結束力が高まり、著者や講師の強力なサポートメンバになる。それがセオリー5。
そして、そういうサポートメンバは黙っていても無償で著者や講師のことを宣伝し、新たな読者や受講者を集めてくれる、というのがセオリー6。

真っ当なビジネスであれ悪徳商法であれ破壊的カルトであれ危険なテロ集団であれ、成長し発展しているところは必ずこういうセオリーが機能している。そして、一度こういうセオリーに取り込まれると、抜け出すことは簡単ではない。特に他人のアドバイスなどは、ほぼ意味をなさない。なぜなら、このカルト・マーケティングのセオリーは人の心理や本能に深く根ざしたものだから。なので雨宮も言うように、必要なのは組織の教えや実践に疑問を抱いたり、陰謀論の矛盾点を自分で見つけて違和感を覚えるといった「自分で見つけた・考えた」という感覚である。そのためにも上の6つのセオリーは覚えておいた方がいい。

余談だが、実は私が成功セミナーやコンサルから離れたのも、ある疑問がきっかけだった。この手のセミナーやコンサルでは、オプションと称する別のセミナーやコンサルの案内がバンバン来る。そして受講者は講師に心酔するように誘導されているから、たとえ高額でも案内されるまま、それを受けるのが当然と思い込んでしまう。けれどもある時、ふと「こんなにセミナーやコンサルばかり受けていて、じゃあそれをいつ実践するの?」という疑問が浮かび、そうしたら急に成功本や成功セミナーなどに熱くなっていることがバカバカしくなってしまったのだ(ちなみに、成功セミナーの受講者の約8割はリピーターである、というのは笑えない事実である)。
 
※「本が好き」に投稿したレビューを採録したもの。


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