小田博志(ODA Hiroshi)
北海道大学大学院文学研究院 教授
専門分野は人類学です。
いま「自然」と「いのち」というテーマに強い関心をもっています。自然と人間、自然と文化を分けるのではなく、両項を切れ目なく捉えることができる視座とはどのようなものだろう、という問題を、「自発性」をキーワードに考えています。具体的な事例としてがんの自発的寛解、森林再生、自然栽培などを、ドイツ、北海道、紀伊半島などの現場で調べてきました。
90年代には「健康」というテーマに取り組み、「がんの自然(=自発的)寛解」という現象に関してハイデルベルク大学医学部で学位論文を書きました。
その後コソボ紛争の現場に赴いたことから、00年代からは「平和」をテーマに据えました。特に、ドイツにおける市民による歴史和解と平和構築について調べてきました。この頃、教会アジール(草の根の難民保護活動)についても調べたことから「歓待」というテーマも重要になりました。
ドイツで平和というテーマの調査を続けるうちに、ドイツと旧アフリカ植民地との関係を、先住民族の遺骨のrepatriation(返還・帰還)を事例に研究しています。
植民地主義と脱植民地化というテーマにつきあたり、そこから「自然」と「生命」という現在のテーマが浮上してきました。自然こそが近代において植民地支配されてきたことに気づいたからです。人間と切り離され、研究、支配、収奪の対象とされた自然ではなく、人間も含めた「生きている自然」を捉えられる新しい研究分野を、「生きている」ということ、および生命的自発性を前提として生命論的に基礎づける試みをしています。
研究上の関心
- 生命論:生命的自発性、生命論的基礎づけ、自然と人間のつながり、生きている自然、森林再生、自然栽培
- 平和研究:歴史和解、下からの平和構築、歓待、民衆史、植民地主義と脱植民地化、先住民族遺骨のrepatriation、植民地トラウマとケア
- 質的研究方法論:エスノグラフィー、ナラティブ(語り/物語)、アクションリサーチ
- 真言密教による経験の学の基礎づけ:空海、根源、法界、瑜伽(yoga)
- スチュワードシップ、大地のケア、いのちの網の目、いのちの風景、生業(なりわい)、紀伊半島、熊野
学歴
- 大阪大学人間科学部卒業の後、同大学院修士課程修了
- 2001:ハイデルベルク大学医学部で博士号(Dr.sc.hum.)取得
職歴
- 2001―:北海道大学大学院文学研究科助教授
- 2007―:北海道大学大学院文学研究科准教授
- 2007-11:国立民族学博物館国内特別客員教員
- 2016―:北海道大学大学院文学研究科教授
- 2019―:北海道大学大学院文学研究院教授
- 2021—:高野山大学密教文化研究所受託研究員
所属学会
- 日本文化人類学会(編集委員77巻1号‐79巻2号担当、評議員2014-2017、社員・編集委員2020-)
- 北海道民族学会(運営委員2017-)
- European Association of Social Anthropologists
所属市民社会組織
- 難民支援協会
- ナショナルトラスト・チコロナイ(監事)
紹介サイト
リンク