小田博志研究室

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二風谷のマキリ

2007-08-29 | 北海道

 二風谷を訪れるのはもう5度目だ。

 はじめての訪問は、大学を卒業して大学院に入るあいだの春休みだった。

 舞鶴から船に乗って小樽に着いた。道内はJRの青春18きっぷを使って各駅停車で回った。その旅の中で、アイヌ民族が多く住む日高郡平取町二風谷に立ち寄ったのだった。

 そのときに目を引いたものがあった。高野民芸店で見たマキリだった。マキリとはアイヌ民族のナイフのことだ。山に入るときも、コタンでの生活でも肌身離さず持ち歩き、日常の中で使い込まれる。

 木彫り師・高野繁廣さんのお店にあった、美しい紋様が掘り込まれたマキリに目が釘付けになった。しかし、いかんせん学生には数万円の値段では手が出ない。指をくわえて眺めるしかなかった。

 今回その夢を実現した。

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 高野さんはきっとさらに腕を上げておられるのだろう。クルミ(ネシコ)材のさや(ケペシペ)にはシマフクロウ(コタンコロカムイ)や鮭(カムイチェプ)の意匠が見事に刻み込まれている。腰止めにはエゾ鹿の角(キラウ)が使われている。

 刃もよい物で、平取町の鍛冶師・故堀岡勝朗氏による鋳造だ。この大きさの刃はこれが最後の1本なのだそうだ。

 近くの食堂で食事をした。貝澤真紀さんが調理の合間にアットゥシ織の糸をつむいでいた。アットゥシにはオヒョウなどの樹木の内皮が使われるのだそうだ。6月頃に山の木から皮を剥いできて、時間をかけて煮る。柔らかくなったら手でもみほぐして割く。そうやってできた繊維をより合わせて糸にする。なんと手間のかかる作業か。向かいの小屋では真紀さんのお母さんが、手作業でアットゥシの帯を織っていた。和服に合わせる帯として京都の着物屋さんに販売するのだそうだ。

 日帰りの短い時間だったけれど、二風谷のゆったりとした空気の中でいろいろなことを学んだ。今度はゆっくりと滞在したい。


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