

この書には36人の36作品の論考が納められている。いづれも5頁ほどの短いものである。
このうち、「ユディット」(クラナッハ)、「春」(ボッティチェリ)、「死せる恋人」(グリュネワルト)、「悦楽の園」(ヒエロニムス・ボッス)、「鏡の前のウェヌス」(ベラスケス)、「スザンナと老人たち」(グイド・レーニ)、「女友達」(クリムト)、「花嫁の衣装」(エルンスト)、「黄金の階段」(バーン・ジョーンズ)、「一つ眼巨人」(オリドン・ルドン)、「みずからの純潔性に姦淫された若い処女」(ダリ)、「トルコ風呂」(アングル)の12編を読んだ。
1970年1月から1972年12月まで36カ月間「婦人公論」の巻頭に書かれた解説である。澁澤龍彦の文章は1970年初めに幾度か挑戦したが、よくわからなかった。読解力が追い付かなかった。また西洋の絵画についての知識もほとんどなかった。
最近はようやく分かるようになってきた。
「ユディット」(クラナッハ)に描かれたホロフェルネスの生々しく切断された頭部が男根の消長であるとの指摘から読み解く鍵は与えられたが、回答は読者に委ねられている。
特にルドン、ダリ、エルンスト、ヒエロニムス・ボッスについて興味深く読んだ。
これから展覧会で見る作品を読み解き鍵として、利用してみる。すべてを読み解く鍵ではないが‥。残りはまたボチボチと読んでいく予定。