図書10月号を読了。結局今月号は16編のうち12編。今回は簡潔に短く引用。
・高い塀の中の世界を救う博士の夢 司 修
「救済のメッセージが聞けるだけではなく、それを耳にするだけで世界は救われるはずでした。‥‥待合室の囚人は増え続け、博士の重大なメッセージは永遠の謎となり、塀の中の謎となり、塀の中に入ったことを嘆くしかなかったのです。」
・新元号「令和」の文化背景 興膳 宏
「王義之『蘭亭序』(主題)→王渤風の駢文(文体)→張衡『帰田の賦』(語彙)という三段階にわたる回路を経て、「梅花歌の序」は誕生したことになる。(奈良朝の知識人たちは)その共通の形式におそらく日中という国境の意識を持たなかった。その具体的な証しが「梅花歌の序」ともいえる。奈良時代の文化のひとつの形がそこに示されている。‥かな文化の誕生する夜明け前の光景がそこに垣間見えるからである。」
・顔真卿墓探訪記 魚住和晃
・家の形を求めて四〇年 小松義夫
「人間はたった4キロメートル強の空気の層の中でしか、子孫を残し生きられないことを、身をもって知った。」
「『生きているだけでいいなんて、そんなことは思いもしていなかった』という女子学生の感想に、学生たちが普段、能率重視の空気や同調圧力などに縛られ、何かに追いかけられていることを感じた。このごろ、世界各地で日本の若者が旅をする姿を見かけなくなった。なぜだろう、といつも思う。生きているだけで絶対よい、と感じるために、日本社会に距離を置いて外国に出て、旅をしたり、‥ネット環境でなく自分の目で見て感じる体験を過疎寝るとよい。」
・中島敦・土方久功とポナペ島ジョカージ叛乱 小谷汪之
・田中美津を追ったドキュメンタリー映画撮影機 吉峯美知
・標準語との距離感について 藤原達也
「韓国語の初歩の初歩をかじって気づいたのは、敬語の煩雑さと、述語にもっていくまでの意識の流れという点で日本語とよく似ていることでした。」
「言葉が現実にたどり着かない苛立ちを存分に味わったうえで、なおも言葉を発するならば、出会った人たちを忘れるなこの単純そうにみえて実は難しい行為を心身に続けられるしかない、いうことですね。」
・癌になって考えること 長谷川櫂
「癌を宣告されたことは死そして生について、あらためて考える絶好の時間を私にもたらしたのである。 『しんかんとわが身に一つ蟻地獄』 櫂」
・借金・長江・胡耀邦 さだまさし
・神、おそろしきもの 三浦佑之
「鬼あるいは妖怪や怪物を、風土記は積極的に記載していない。五項目にわたる撰録要求のなかに該当する内容がないから拾わなかったというのてはなく、われわれがいう鬼あるいは妖怪や怪物といった明確な概念を持っていなかったからではない。一方、いずれの風土記においても、神はそれぞれの土地に祀られていばかりではなく、恐ろしいものとしても存在する。」
「八世紀初頭の「今」は悪しき力を発揮するような存在ではない。悪しき神から鎮まる神へと変貌して、神は今に存在する。」
「ヤマトの天皇の威力が神をも凌いで存するということを語ろうとしているというふうにも読める。」
・同音反復 片山杜秀
「武満の音楽は、オーケストラ曲でもピアノ曲でも映像音楽でも映画音楽でも、『論理的に流暢なもの』からいかにして距離を取るかということへのこだわりから、いつもとらえられるように思われる。」