

横浜美術館で「篠山紀信展-写真力」と「2016年度コレクション展第3期「写真」」を見てきた。
篠山紀信という写真家、あまり私にはなじみがない。俳優・タレント等の写真が大きく引き伸ばされている。被写体になった方で被写体そのものの力を引き出していると感じたのは、作家の三島由紀夫が日本刀を構えている作品と、歌手の山口百恵の作品だった。
一世を風靡した宮沢りえの写真は同じ写真集からと思われる別の作品の展示であった。夫人の南沙織の現役時代の写真は強い目線が印象的で、惹かれるものはあった。だが、全体として私にはあまり「力」を感じない作品が並んでいた。チラシのオノ・ヨーコとジョン・レノンも空々しい。被写体との関係が希薄だと思えた。
また東日本大震災の被災者を撮影した作品も、私には被写体に迫る力、災害の爪跡も傷も、被写体となった方の力もいづれも感じなかった。
むろん私の鑑賞力の至らなさは棚に上げての感想だということは忘れないで読んでほしい。
それに比べて「2016年度コレクション展第3期「写真」」は、時代の諸相を切り取って、未だに新鮮な力をこちらに向けて発している作品が多かった。大半がいわゆる報道写真の範疇である。しかし少なくとも戦後70年代までの作品はいづれも写されたものの生命力が私には伝わってきた。申し訳ないが、私にはこちらの展示がお薦めと感じた。もう一度展示を見ながら戦後の世界を彷徨してみたい、と感じた。