NPO集改センター(NPO法人 集合住宅改善センター)活動レポート

大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、福岡を中心に大規模修繕工事やマンション管理運営をサポートいたします。

第104回スキルアップセミナー報告

2013-04-15 17:42:46 | スキルアップセミナー

 集改センター(NPO法人 集合住宅改善センター)恒例のスキルアップセミナーが下記の要領で行われましたので、ご報告いたします。

 開催日:2013年4月10日(水)
 参加者:22名
 テーマ:①「ベランダ喫煙で賠償命令」~平成24年12月13日名古屋地裁について~
          ②「工事監理者の瑕疵に対する責任」~平成23年7月21日最高裁判決について~
 講 師:九鬼正光氏(弁護士、集改センター正会員)

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 【セミナーの概要と感想】
 ①「ベランダ喫煙で賠償命令」
 役所で受動喫煙被害が発生したことに対して役所に「安全配慮義務違反」があったとする判例はあるが、喫煙者に対して被害に対する責任を認めた判例は知らない。ベランダ喫煙について名古屋地裁は精神的被害として5万円の賠償を認めた。

 裁判官は、ベランダで煙草を吸うのを止めないことに対する配慮義務違反として不法行為があり得ると判断し、一方ではマンションに居住する特殊性からある程度の受忍すべき義務があるとして、150万円の請求に対して5万円の賠償を命じた。双方が控訴せず判決は確定した。

 これは果たして勝訴と言えるのか。(原告は弁護士費用の方が高く付いている) 配慮義務があるということをある程度認めてくれたことで満足できるのか。
 管理規約や細則で、ベランダでの喫煙を禁止するということを規定できるのか。
 室内で吸えないからベランダで吸う。換気扇の下で吸ってもその煙はベランダに排気される。
 と言うことになると、マンションでは吸えない? あくまで共同生活の「配慮」と「我慢」の限度問題であり、嫌煙者と喫煙者の考えの相違の問題でもある。

 ②「工事監理者の瑕疵に対する責任」
 瑕疵ある建物の建築・流通・施工者等の所有者に対する不法行為責任について、工事監理者に対する責任が認められた事案である。
 瑕疵とは、本来備わっているべき性能等が備わっていないこと。
 建築主から建物を譲り受けた者が、建物に瑕疵があることを理由に、設計者、工事監理者、建設会社に対して損害賠償の請求ができるのか。
 判決は、地裁⇒高裁⇒差戻し⇒上告審⇒差戻し、と判決は2転3転したが、最高裁判所は、3800万円の賠償責任を認め、判決は確定した。

 「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは生命・身体・財産を危険にさらすような瑕疵を言い、現実的に危険をもたらしている場合に限らず、これを放置するといずれ危険が現実化する場合についても「基本的な安全性を損なう瑕疵」と認められると判断したものである。
 建築士と施工業者に対して賠償責任が生じる場合、両者が連帯して賠償することになる。
 最高裁判決は「判例」として法律に準ずる(判例法)
 地裁・高裁の判決は「裁判例」として参考例に留まる。

これらの判例を基に、マンションで起こる問題と重ね合わせて、活発な議論が行われました。
 本年度最初のスキルアップセミナーは多数の参加で盛況に終了しました。

 <次回の予告>
 次回(5月8日(水))は、松山代表が作成された*「映像で体験する大規模修繕工事」です。
 工事現場の実写映像(動画)で大規模修繕工事が体験できます。奮って参加しましょう。

 昨年大阪市のタイアップセミナーで紹介した映像をもとに建築士・現場代理人を対象としたプロバージョン版です。
 大規模修繕工事に携わる会員・賛助会員の方々、是非参加して一緒に勉強しませんか。
 (記述者 枝 俊男)