goo blog サービス終了のお知らせ 

詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高橋睦郎『つい昨日のこと』(132)

2018-11-17 00:00:00 | 高橋睦郎「つい昨日のこと」
132  独裁者は

 「独裁者」が誰のことを指しているのか、私にはわからない。
 独裁者は、
 
夜半の誰もいない執務室で ひとり呟いている
誰か俺を殺してくれ 殺してらくにしてくれ と
しかし 呟きを聞いてしまった不寝の番は殺される
毎夜毎夜 一人ずつ殺される 両耳ずつ塩漬けにされる

 「耳」が切断され「塩漬け」にされるというのは、不気味で、強い。さすがに「独裁者」はやることが違うと感動してしまう。
 でも、

塩漬けされた耳たちは眠らない 眠らない耳たちに囲まれて
独裁者は不眠 何千日 何十年も 苛苛と不眠つづき
終わることのない不眠の中で 死への渇望はますます募る

 こう「論理的」に転換してしまうと、「結末」が「推理」できてしまう。
と書きながら、突然、三島のことを思ったりする。三島の華麗な文章は、とても「論理的」ではないだろうか。華麗さを「論理」で押さえている。記憶の中にある三島の印象で書いているので、どこがどういう具合にとは言えないのだが。「論理的」だから「人工的」という感じにもなる。
そして、この「論理的/人工的」という部分で、高橋と三島は重なり合うかもしれないなあと思ったりする。「野蛮」がない。「暴力」がない。







つい昨日のこと 私のギリシア
クリエーター情報なし
思潮社


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 高橋睦郎『つい昨日のこと』... | トップ | 高橋睦郎『つい昨日のこと』... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

高橋睦郎「つい昨日のこと」」カテゴリの最新記事