「慎重」ということば
自民党憲法改正草案を読む/番外46(情報の読み方)
天皇の生前退位をめぐる有識者会議の専門家ヒアリングが2016年11月30日に「ひととおり」終わった。専門家の意見の集計が新聞社によって違う。(いずれも2016年12月01日、西部版・14版)。
安倍に一番近いと思われている(世間的に)読売新聞は「賛成」という表現を使っていない。「反対・慎重」を「慎重」とひとくくりの見出しにしている。
この「表現」とヒアリングに応じた専門家の「意見」をもとに、私は「有識者会議」が提言する「内容」を予測してみる。
「特別法」で「摂政設置」の条件に「天皇の高齢化」を付け加え、いまの天皇を「天皇」という地位のままにしておき、実質的な「行為」を「摂政」に譲る。
簡略化して言うと、そういう内容になると思う。
専門家の中では、私が注目したのは、桜井よしこである。桜井よしこは、ヒアリング前は「条件付き退位」を認めていた。なぜ、退位に賛同できない立場になったのか、と有識者から質問されて、こう答えている。(11月25日読売新聞西部版・14版、有識者会議議事録参照)
ここに「摂政制度の活用」という表現も出てくる。
なぜ、注目するかというと、「内容」もそうだが、「意見を変えた」ということが大事である。「専門家」というのは自分の考えを変えない。「有識者会議のメンバー」に「専門家」がいないのも、専門家では意見の対立が起きたとき、まとまらなくなるおそれがあるからだ。
「有識者会議」が提言をまとめるとき、専門家の意見を「羅列」しただけでは具体的な提言にならない。なんとかして「統一」しないといけない。「統一」するためには、「意見」を変更しなければならない。
この「変更」の「手本」を桜井よしこが示したのだ。
桜井がつかっている「軽々」ということばにも私は注目した。「軽々」の反対は「慎重」である。(桜井の意見の「要約」には、「国民の圧倒的多数が(陛下の退位の)希望をかなえさしてあげたいと考えていることも事実だが、慎重にも慎重でありたい」と書かれている。)「国家の基盤は軽々に変えてはならない」とは、
ということである。
「交渉」とは「ことばの調整」のことである。どのような「意味」を含めるか。「解釈」の可能性をどこまで「広げる」か。あるいは「許す」か。
新聞各紙の表現にもどる。
朝日新聞、毎日新聞は「反対」と「慎重」を明確に区別している。読売新聞は「慎重」ということばでまとめてしまっている。「反対」は「軽々には賛成しない」「賛成することには慎重である」と言い換えられている。
「慎重」ということばなら、「容認」に対しても応用できる。天皇の生前退位には「賛成」であるけれど、さまざまなことを考慮しなければならない。「賛成」であるにしても、全面的に退位を認めてしまうのではなく、「慎重」に認める「範囲」を検討しなければならない、という具合に。
「慎重」ということばに「判断」の基準を置くと、どっちつかずというか、「両義的」なことろに結論を持っていくしかない。
八月八日の天皇のことばは「摂政はだめだ」(天皇の務めは「象徴」であり、天皇が天皇である限り「象徴」の務めは天皇についてまわる)というものだった。けれど「有識者会議」は最初から「摂政」をテーマに組み込んで会合を始めている。
「摂政」と「退位」をどう組み合わせるかを「慎重」に調整しようとしている。
退位に反対の意見を述べている専門家は、もちろん「特別法」にも反対しているのだが、そこにも「慎重」ということばを付け加えることはできる。「摂政」を設置したあとの、天皇の「つとめ」をどうするか。それを「慎重」に定める。(摂政の権能を「慎重」に定める、と言いなおすこともできるが。)
「慎重」ということばは、「容認(賛成)」「反対」を結びつける「接着剤」のようなものである。
この便利な「慎重」は、これからどんどん出てくるだろう。一番の危険は、「慎重」は同時に「あいまい」に通じることだ。「両義的」と先に書いたが、「両義的」とはどちらともとれるということ。
「権力」は、それを「自在に」解釈できる。「摂政」の「権能」は自在にあやつれる。
自民党の憲法改正草案を思い出そう。第6条の第4項目
現行憲法には存在しない「進言」ということばがつかわれている。「進言」は当然「摂政」にも適用される。「摂政」は内閣の「進言」によって動かされる。
安倍の狙いが、ますます露骨に見えてきたように思う。桜井よしこは安倍の代弁者のようである。
*
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このブログで連載した「自民党憲法改正草案を読む」をまとめたものです。
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自民党憲法改正草案を読む/番外46(情報の読み方)
天皇の生前退位をめぐる有識者会議の専門家ヒアリングが2016年11月30日に「ひととおり」終わった。専門家の意見の集計が新聞社によって違う。(いずれも2016年12月01日、西部版・14版)。
朝日新聞 賛成8人 反対7人 慎重1人
毎日新聞 賛成8人 反対6人 慎重2人
読売新聞 容認9人 慎重7人
安倍に一番近いと思われている(世間的に)読売新聞は「賛成」という表現を使っていない。「反対・慎重」を「慎重」とひとくくりの見出しにしている。
この「表現」とヒアリングに応じた専門家の「意見」をもとに、私は「有識者会議」が提言する「内容」を予測してみる。
「特別法」で「摂政設置」の条件に「天皇の高齢化」を付け加え、いまの天皇を「天皇」という地位のままにしておき、実質的な「行為」を「摂政」に譲る。
簡略化して言うと、そういう内容になると思う。
専門家の中では、私が注目したのは、桜井よしこである。桜井よしこは、ヒアリング前は「条件付き退位」を認めていた。なぜ、退位に賛同できない立場になったのか、と有識者から質問されて、こう答えている。(11月25日読売新聞西部版・14版、有識者会議議事録参照)
お年を召した目下天皇皇后両陛下への配慮は大事だが国家のあり方とは分けて考えなければならない。国家の基盤は軽々に変えてはならない。摂政制度を活用することで、(陛下の)負担はうんと減ると思う。
ここに「摂政制度の活用」という表現も出てくる。
なぜ、注目するかというと、「内容」もそうだが、「意見を変えた」ということが大事である。「専門家」というのは自分の考えを変えない。「有識者会議のメンバー」に「専門家」がいないのも、専門家では意見の対立が起きたとき、まとまらなくなるおそれがあるからだ。
「有識者会議」が提言をまとめるとき、専門家の意見を「羅列」しただけでは具体的な提言にならない。なんとかして「統一」しないといけない。「統一」するためには、「意見」を変更しなければならない。
この「変更」の「手本」を桜井よしこが示したのだ。
桜井がつかっている「軽々」ということばにも私は注目した。「軽々」の反対は「慎重」である。(桜井の意見の「要約」には、「国民の圧倒的多数が(陛下の退位の)希望をかなえさしてあげたいと考えていることも事実だが、慎重にも慎重でありたい」と書かれている。)「国家の基盤は軽々に変えてはならない」とは、
国家の基盤を変えるときは「慎重」でなければならない。
ということである。
「交渉」とは「ことばの調整」のことである。どのような「意味」を含めるか。「解釈」の可能性をどこまで「広げる」か。あるいは「許す」か。
新聞各紙の表現にもどる。
朝日新聞、毎日新聞は「反対」と「慎重」を明確に区別している。読売新聞は「慎重」ということばでまとめてしまっている。「反対」は「軽々には賛成しない」「賛成することには慎重である」と言い換えられている。
「慎重」ということばなら、「容認」に対しても応用できる。天皇の生前退位には「賛成」であるけれど、さまざまなことを考慮しなければならない。「賛成」であるにしても、全面的に退位を認めてしまうのではなく、「慎重」に認める「範囲」を検討しなければならない、という具合に。
「慎重」ということばに「判断」の基準を置くと、どっちつかずというか、「両義的」なことろに結論を持っていくしかない。
八月八日の天皇のことばは「摂政はだめだ」(天皇の務めは「象徴」であり、天皇が天皇である限り「象徴」の務めは天皇についてまわる)というものだった。けれど「有識者会議」は最初から「摂政」をテーマに組み込んで会合を始めている。
「摂政」と「退位」をどう組み合わせるかを「慎重」に調整しようとしている。
退位に反対の意見を述べている専門家は、もちろん「特別法」にも反対しているのだが、そこにも「慎重」ということばを付け加えることはできる。「摂政」を設置したあとの、天皇の「つとめ」をどうするか。それを「慎重」に定める。(摂政の権能を「慎重」に定める、と言いなおすこともできるが。)
「慎重」ということばは、「容認(賛成)」「反対」を結びつける「接着剤」のようなものである。
この便利な「慎重」は、これからどんどん出てくるだろう。一番の危険は、「慎重」は同時に「あいまい」に通じることだ。「両義的」と先に書いたが、「両義的」とはどちらともとれるということ。
「権力」は、それを「自在に」解釈できる。「摂政」の「権能」は自在にあやつれる。
自民党の憲法改正草案を思い出そう。第6条の第4項目
天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。
現行憲法には存在しない「進言」ということばがつかわれている。「進言」は当然「摂政」にも適用される。「摂政」は内閣の「進言」によって動かされる。
安倍の狙いが、ますます露骨に見えてきたように思う。桜井よしこは安倍の代弁者のようである。
*
『詩人が読み解く自民憲法案の大事なポイント』(ポエムピース)発売中。
このブログで連載した「自民党憲法改正草案を読む」をまとめたものです。
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