goo blog サービス終了のお知らせ 

詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

谷川俊太郎『こころ』(36)

2013-08-31 23:59:59 | 谷川俊太郎「こころ」再読
谷川俊太郎『こころ』(36)(朝日新聞出版、2013年06月30日発行)

 「シヴァ」は東日本大震災の翌月に発表される予定だったが、遅れて発表された。「事実」をことばとして受け入れる準備が、たぶんだれにもなかった。そのことを朝日新聞の担当者が配慮して、発表を見合わせたのだろう。

大地の叱責か
海の諫言か
天は無言
母なる星の厳しさに
心はおののく

文明は濁流と化し
もつれあう生と死
浮遊する言葉
もがく感情

破壊と創造の
シヴァ神は
人語では語らず
事実で教える

 地震、津波の描写よりも、いま、こうやって、大震災から間を置いて読んでみると2連目の「浮遊する言葉」が気になる。見たものをなんとかことばにしようとして、ことばになりきれていない。「浮遊」している。「浮遊」して、「シヴァ神」という「神話」(でいいのかな?)に頼っている。
 阪神大震災のあと、季村敏夫は『日々の、すみか』のなかで「出来事は遅れてあらわれた。」と書いた。出来事が出来事になるにはことばが必要だが、そのことばはすぐにはやってこない。「知らないこと」が起きたので、その「知らないこと」をどう書いていいのかわからない。
 そういう困難が谷川にもあったのだと思う。
 東日本大震災について書きたい--けれど、それが「肉体」のなかにうまく入って来ない。肉体のなかからことばが出てこない。「人語」にはならない。で、「頭」で知っていること、シヴァ神が出てきたのだと思う。

 ことばが動くには、ほんとうに時間がかかる。ことばは、遅れてやってくるしかないのだと思う。
詩人 谷川俊太郎 [DVD]
クリエーター情報なし
紀伊國屋書店

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 丁海玉「融解」 | トップ | 駱英『第九夜』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

谷川俊太郎「こころ」再読」カテゴリの最新記事