詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

谷川俊太郎『こころ』(57)

2013-09-21 23:15:13 | 谷川俊太郎「こころ」再読
谷川俊太郎『こころ』(57)(朝日新聞出版、2013年06月30日発行)

 「ゆらゆら」は「ゆれる」こころを描いている。「ゆれる」というのは不安定な状態だが、谷川のこの詩は不安定な気持ちにならない。

ゆらゆら揺れる
揺れている
気づかずにいつの間にか
揺れ始めている

 ここまでは、「不安定」へつながることば。「気づかずに」「いつの間にか」というのは気持ちがよくてということもあるかもしれないが、「こころが揺れる」となれば、やはり「不安」の強い。これは、「流通イメージ」というものだろうけれど。

揺れている
木々が
こころが
私が
世界も
ゆるやかに揺れて
揺られて
不安

 ほら、やっぱり「不安」。
 それなのに、

でも赤ん坊のように
身をまかせて
ゆらゆら

 赤ん坊も、力のない感じ、弱い印象があるので、「不安」を増幅させるはずなのに、「身をまかせて」で印象ががらりと変わる。何か、愛情につつまれている感じになる。
 あ、そうか。
 激しくゆさぶられるのではなくて、「ゆらゆら」なら、どこかに「配慮」があるのかもしれない。そういう「感じ」がどこかにあって、その見落としているものを谷川はすばやくつかみとってくるのだろう。
 「身をまかせ」ることの不思議なあたたかさ。
 「身をまかせる」ように「こころをまかせる」と、こころのなかに「安心」が生まれるのだろう。「不安」が消えるのかもしれない。


大人になるまでに読みたい15歳の詩 全3巻
谷川 俊太郎,青木 健/和合 亮一/蜂飼 耳
ゆまに書房

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 坂多瑩子『ジャム煮えるよ』 | トップ | 高橋秀明『捨児のウロボロス』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

谷川俊太郎「こころ」再読」カテゴリの最新記事