江東区図書館生活

本棚の本をずいぶん少なくすることができました。

餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?

2007-01-29 09:51:22 | ★★★☆☆おもしろかった
餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか? (単行本(ソフトカバー))
林 總 (著)



場所:江東区図書館
再読:会計を経営判断に活かす方法の具体例が示された良書かとは思いますが、読み返すほどのものかというとそうではありません。
推薦:部門のそれなりのポジションになっちゃったとか、そろそろ経営判断を考えないといけなんだけども、会計のことはどうもと思っている人にはちょうどいいかも。

小説の形で、会計がいかに経営判断に役立つかを説明しています。
例えば、固定資産は会社の現金製造機であり、調達した資金がどれだけ有効に活用されるかは、この現金製造機の性能にかかっている。
もし、市中金利以下の稼ぎしか作り出せないのなら、売却して、借り入れを返すなり、株主に返すなりしないといけない。
逆に、資金を調達しても、市中金利を上回って余りある稼ぎを作り出せるというのなら、その資金は現金製造機たる固定資産に投資するに値する。
投資の判断って、そういうことですね。
おもしろかったのは在庫と回転率の話。
寿司屋でコハダと大トロを例にして。
一見したところでは、一個あたりの単価が高くて利益も大きい大トロの方が儲かりそうですが、一旦仕入れた大トロを捌ききるまでは在庫として滞留することを考えれば、資金がそこに固定されてしまうことになって、資金効率が落ちる。
その点コハダは、仕入れた分はその日に売切れてしまうので、一個あたりの利益は小さくても、資金の回転の高さで店の儲けには貢献することになる。
回転すしは、大トロでさえも仕入れた分を一気に売りさばいてしまうので、大トロが儲からないという常識をひっくり返した、さばききれるので多少安くしても大丈夫。
なるほどです。
高級化路線をとっても、回転率が下がるなら、それはNGなのですね。
回転率を保ちながら高級化路線を取って始めて儲けを増やすことができると。
いわゆる管理会計の問題点として、部分最適化がおこりやすいことを指摘して、製造工程全体のスピードを上げること、直接的には書かれていませんがスループットを上げることの重要性が指摘されています。
この辺はザ・ゴール当たりを読んでTOCの考え方がわかってないとちょっと難しいかなとは思いますが、よい指摘だと思います。
あとは、キャッシュフローの考え方だとか、月次決算書の重要性とPDCAサイクル、直接原価計算とCVP分析、無形資産とブランド価値、粉飾決算と決算書を用いたその見破り方、機会損失と埋没コスト、なんてことが書かれています。
会計数値は色んな要素が集約された結果であるので、会計数値で異常をつかみ、その後その原因はなんであるのかに思いを馳せることが重要なんですね。
当たり前のことですが、数字をまとめることが目的化してしまって、本来の目的であるその後につなげていないことになりがちであることを反省したいと思います。