シノワレコード

女性Vo60sサイケガレージ的Indiepopバンド"シノワ/shinowa"のGtヒラタによる色々レビュー&世間の話題

HICKORY WIND

2005年10月13日 | 米サイケ・ガレージ
 『レコードコレクターズ』2002年7月号は画期的なサイケ特集号だった。サイケの世界はすでに海外ではおなじみの『ACID FUZZ FLOWERS』というデータブックがあるが(最近改訂版が出ました)、日本ではあまりつっこんだレコードレビューがない。しかし、登場されたコレクターの方はすごいですねー。金持ちだなー。
 これを機会に本格的なガイドブック発売か?!と期待していたが、いまのところそんな動きはまったくなさそう。うーん。ちゃんとそういう本が出ればもっと再発も進むのになー。
 ここでは知らなかった盤も結構紹介されていて、このヒッコリーウインドもそうだった。

 数年前に、大阪アンダーグラウンド界の大御所マゾンナさんが店長である、アルケミーミュージックストアで再発CD(紙ジャケ)を見つけた。特徴あるジャケなので、よく覚えていた。

 このCDを聴いてみればすぐに分かるが、初心者でもわかりやすい、サイケな曲は一曲しかない(ちなみに二曲目である)。あとはかなり素朴でストレートなフォークロックをまじめにやっているという感じである。
 バーズの『ロデオの恋人』のなかにヒッコリーウィンドという曲があるので、おそらくそこからバンド名をとったのだろう。なお、「ヒッコリーウィンド」には同名バンドがある。聴いたことはないが、やっぱりカントリー的な感じの音楽みたいだ。つまり、「ヒッコリーウインド」とは、カントリーロックの代名詞であることになる。
 また、7曲目はディランの「ライク ア ローリンストーン」によく似てる。

 このアルバムは4ヶ月に一回は聴きたくなる。なんともラジカセ録音のような音が気持ちいいし、地味だが曲がとてもいい。今的にいえば、ガレージフォークロックだ。ボーナス・レアトラックにある、いわゆる「デモ」って、質感も含めて結構よかったりする。そういうよさなのかもしれない。

 この時代の、たとえば自主製作でプレス数が少なかったものは、レアサイケのカテゴリーでとらえられることがしばしばである。
 60年代半ば~後半では、サイケの波を受けないバンドの方がきわめて稀であり、特に66年以降のアメリカのB級バンドは、そうすればほとんどがサイケバンドと一括りにされてしまう。低予算で音がチープだったり、ファズを使っていたりするバンドは、まさにそうなってしまう。

 このヒッコリーウインドは、自分らがサイケをしているという自覚は、当たり前だが当然なかっただろう。もちろん、当時はそんなバンドばかりだったに違いない。
 そういう意味では「サイケ」のカテゴリーって完全に後付けだったりする。

 このアルバムには、後身バンドであるB.F.TRICKEの音源がボーナストラックで収録されている。ここでは「アメリカ人の アメリカ人による アメリカ人のためのロック」が聴ける。
 一聴の瞬間はダサく感じるかもしれないが、ちょっとカントリー入った、オヤジ臭ただよう乾いた歪みのギターは、そのうちに心地よささえ感じてくる。結構いける!

 こんな本領を見てしまうと、ヒッコリーウィンドは「レアサイケ!」といわれて心外だろうなー。


 ちなみに、再発元は韓国のbeatballrecords。ここの再発は日本のポップサイケファンとつるんでいるかのようなラインナップだ。
 なんと、BMXバンディッツの韓国ライブも実現させたみたい(ついでに日本にも来て欲しかったな)。
 他には韓国のGSみたいなのとか、レアサイケとか、リンダ・パーハックスのLPの再発までしている。しかもポスター付き!とてもディテールが細かく嬉しい。ディスクユニオンの特典なみの配慮である。

 さらに、日本ソフトロックの雄、「ボビーズロッキンチェア」の音源までリリースしている(!)。ここのブレインの森本くんとは自分と同じ大学で、一時一緒のサークルに在籍していたこともある。彼は妻と同郷でもある。
 シノワも負けてられないぜ!

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