ビートルズの曲だけで構成されたミュージカル。マイナーな作品ながら、なかなか面白かったので紹介しておく。
主人公はリバプール出身のジュードという、ポール・マッカートニーによく似た青年。アメリカで出会ったルーシーやプルーデンスとともに、反戦運動や芸術、そして恋に悩む姿を描くもの。
名前からも想像できるように、「ヘイ・ジュード」や「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」「ディア・プルーデンス」が歌われる。また、冒頭の給料支給係の男が64歳だったり(これは言うまでもなく「ホェン・アイム・シックスティフォー」を意識したもの)、女の子がバスルームの窓から入ってきたり(She came in through the bathroom window...)、〈マジカル・ミステリー・ツアー〉みたいな小旅行に出掛けたり、その到着地が〈LSD教団〉だったり、ビートルズのエピソードがあちこち散りばめられていて、ファンなら楽しめることと思う。
そして最後は、ニューヨークのビルの屋上でのライブ。これまたおなじみの光景。
ただ、ベトナム戦争時代の話なので、同じ歌でも少々厭世的な意味で歌われていることが多かったし、そういう歌が選ばれていたように思う。ビートルズなら他にも「オブラディ・オブラダ」とか「ハロー・グッバイ」とか明るい歌はたくさんあるのに。
そうそう、女の子が歌う「抱きしめたい」もいい感じだった。
ところで、ビートルズ4人のメンバーのうち、あまりにカリスマ的だったジョンは銃殺され(この時はホントにショックだった)、ひ弱そうだったジョージは病死と、何となく亡くなり方や亡くなる順番がそのキャラクターに合っているように感じる。
残るはポールとリンゴだが、リンダとの死別や離婚裁判でお疲れ気味のポールを差し置いて、最も楽天的そうなリンゴが一番長生きするんじゃないかと思っている。
また、どんなに偉大なメンバー、どんなに偉大なバンドであっても、時代の流れには逆らえないのだとつくづく思う。彼らの場合、60年代の空気に影響を与え与えられていたのは間違いのないところ。ただし今も聞き続けられているように、普遍性ももちろん持ち合わせている(字幕で歌詞を見ながら、あ、こんな意味だったのか、と改めて気付かされた次第)。
そして思う。その時その時に感じたこと、考えたことを書くブログではあるが、できるだけ一般化した内容にしたいと思っている。事件・事故の起きたその時点では理解できても、数年あるいは何十年か経って読み返された時に理解されないんじゃ、そこでその文章は〈死んで〉いることになる。いつ、誰が読んでも腑に落ちるような文章、というのが理想なんだろうと…。
映画は数え切れないほど見ているが、『アクロス・ザ・ユニバース』は佳作だった。そして次に見たいのは、これまたマイナーながら『僕らのミライへ逆回転』という作品。

〔写真は、allcinemaより〕