Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

やっぱり益子好き

2014-03-18 13:40:25 | その他

土曜日の大和骨董・古民具祭りはお天気に恵まれた。つい一か月まえは雪に祟られて露天の骨董市は散々だった様子である。相鉄線さがみ野駅の近くの遊歩道では早咲きの河津桜が満開になっている。お天気につられて朝から大和駅前周辺の会場へと吸い寄せられる群衆の一人になって数時間を遊ばせてもらう。いつも寄っている駅前東側の遊歩道内にあるあさましい雰囲気の2点で1000円というガラクタ品の山積み露店ものぞいてみる。この前は益子焼の椎茸の絵付けにユーモアを感じて湯飲み茶碗を買った場所だ。慌てて買った為にそのうちの1個にひびが入っていることに後から気がついたという代物だった。

ここのガラクタ品はどこか一軒家の解体時に丸ごと引き取ってきた家庭内の調度品がジャンルを無視して山積みになっている。底の方にお宝が沈んでいるのではないかと品物を皆がひっくり返すので、その無秩序ぶりが際立っている一角だ。今回も昔風の大柄な花器や安っぽい盆類に紛れてキラリと光っている小品が紛れていた。いつもそこのコーナーに群がっている隣接する人の人品もときどき鑑察することがある。今回は40代中期とおぼしき珍しく目が効いている人物に出会った。その人は茶道にこっているわけでもなさそうだが、愛らしく、飄々とした香合を物色している。京焼風のウサギや松ぼっくりの香合をゲットして、もう1個は桐箱に署名まで入った香合を手にしている。いいものを見つけたね。と声をかけてみる。その人物が「これ いりますか?」と応じる。「実は蓋があって相棒の台がいくらさがしても見つからないです」と続ける。よく見るとたしかに台がない。おめでたい「こづち」をあしらった大桶焼の飴色釉がそそられる逸品だ。この大桶は楽家の分家で昔は大名家、今はプチブルジョア階層の御用窯として全国的な有名なブランドである。うちにも中村長阿弥という大桶の作家が作った飴色の地に薄緑のビードロがたっぷりとかかった古いお菓子皿があることを想い出す。この山積みの散らかった場所をしばらく探してみたのだが、片割れは出てこないので諦めることにした。

今度は駅の西側にある会場で大ぶりな急須に引き寄せられる。いかにも益子風の灰色の地に白い椿をぼってりとあしらったものだ。花弁の背後の四隅には青い葉っぱが描かれていてその筆描きは美しい控え目を心得ている。花芯の鉄絵の運び方も素晴らしい。これは1200円という値段がついている。売っている同年輩のお二人は全くのアマチュアの延長ですれた海千山千の商人の面影がない。はったりも虚栄もないから友人同士のような会話になってくる。こちらが「ちょうどにならないか」と水を向ける。すると相手は「値段つけたときに嫌な予感がしてましたよ。もっと上の方の値段にしておけばよかった」といいながら200円を値引いてくれる。

この急須はもう離反してしまった女友達と益子へ出かけたときに、その友人へ共販センターの一角で薦めて買った素焼の通称「南蛮手」の大ぶりな急須とフォルムがそっくりだった。もし南蛮手だったらどこでも10000円は下がらないグレードである。その友人の後日譚では、お母さんが土瓶という解釈をして火にかけて罅をもたらしたと聞いている。200円を値引きした出展者は最近、105円にて買って読んだばかりの瀬川正仁「六十歳から始める小さな仕事」という本にでも登場してきそうな典型的な俄か骨董商の感があって、今後もそうした手の内を明かす態度の良さに惚れて足を運んでみようと思っている。

西側の展示には目を引くような、益子の水差し、岩田久利のガラス作品などがあったが、この日の戦利品はあと一つ志野焼のかけ花入れを購入する。山に萌え出るワラビの鉄絵模様にしびれてしまったからである。