「むしりっ」とナナのかぼちゃパンを真っ二つに割る雄作。焼きたてのかぼちゃパンからは、ほかほかと湯気と共に甘く誘うような香りが立ち上るのであった。
というわけで上の画像は、電子コミック【ナナのかぼちゃパン】のストーリーボード用鉛筆画です。
やっぱり線画は、物語やキャラクターを表現するうえで、「強い表現力」を持った画法だと思いますね。誇張したいところだけをダイレクトに加筆して、そうじゃないところは余白にして観る側の想像力にまかせる。描き手の意図を的確に伝えることができる強い表現力が、マンガというメディアに合致しているんでしょうね。
CGのように画面の隅から隅まですべてのピクセルに色が置いてある画像では、線画のような極端な誇張が難しく意図がぼけてしまったり、気色悪い表情になり勝ちです。
「じゃあ線画で描けばいいじゃないか」ということになりそうなもんですけど、そうはいきません。
自分の描きたい電子コミックは、静止画と文字だけで表現する伝統的なマンガではないからです。画像も動かすことを前提としているし、将来的にはマンガの中に出てくるガジェットに読者がアクセスすることができるような仕掛けも施したいという野望も抱いているので。
つまり画像も電子コミックを表現するための要素の一つと考えたとき、上の画像のようなマンガ的線画は向いてないと思うわけです。なぜならすべて併せ持って完成してしまっているから。
「むしり」という文字も含め、パンを二つに割るときの動作を表す線であったり、立ち上る湯気からキャラの気持ちまで、すべて一枚の静止画で完成しています。
なので我々は、紙に印刷されたマンガ雑誌のページから、ラーメンを旨そうにすするシーンでは読みながらゴクッと喉を鳴らし、のだめがピアノを弾けばそのきらびやかな音色が頭に響き、熱血な主人公のパンチと共に筋肉を動かしていたわけです。
そう、マンガ的線画の静止画にはかくもすばらしい表現力があるのです。
ところが、電子コミックを描く他のメディア(アニメ、音声サウンド、インタラクティブの仕掛け等)の中の一つの要素という観点からマンガ的線画を考えた場合、線画のすばらしい表現力が生きないし、コラボレーションすることによる相乗効果が発揮できないんですよね。
という自分なりの結論から、現在のところ他のメディアとのコラボレーションに適した画像/画法として、前回のブログでお見せしたセル画風タッチが気に入っています。
アニメーションの世界では、アメリカでは3DCGアニメーションが主流だけど、日本では手描きプラス部分的に3DCGを使用するなど日本のアニメにあった使用法を模索中という感じでしょうか。
セル画風は、日本では受け入れられると思いますが、世界ではわかりません。
アメリカのアニメ界では3DCG時代がしばらく続くでしょうけど、そのうち手描きの復権があるかもしれませんし、今後どのような時代が来るのか楽しみです。
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