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動画・音声・インタラクティブ性などで織り成す新スタイルのマンガ制作日記

人生はCGだ!(iBooks Author制作日記19)

2012-12-27 19:52:40 | iPad版制作日記

先日(12月24日)米誌ニューズウィークが、紙版としては最終号を発売しました。

これで完全デジタル化というわけで、来年からはiPadやKindleなどへの配信のみということになります。

それにしてもスッパリやめますよね。そのへんの割り切りのよさはやっぱりアメリカ的だなと思うわけで、曖昧な状況を長々と続けていく日本的なやり方考え方と正反対です。

「白黒をはっきり着けない」「あまり自己主張をしない」といった良くも悪くも日本的なやり方考え方は、このグローバルな時代には誤解をまねいたり不利な立場に追いやられてしまいます。

でもその一方で、日本人の謙虚さ誠実さも徐々に世界に理解されつつあるような気もしてるんですけどね。

紙版ニューズウィーク最終号から、そっちに話は向かうか!?向かうんですよね私の場合(*^▽^*)b。

とはいえ日本人的な長所欠点が、グローバル時代に云々という話は置いといて、コンテンツが紙への印刷物として存在することと、ディスプレイに表示して見るデジタルデータとしてあること、についてちょっと考えてみました。

というのは自分は、手描きの絵をスキャンしてデジタイズ後加工してデジタルコンテンツとして使用したりするので、アナログデータとデジタルデータの間に境界線をあまり意識しません。というか気にしないんでしょうかね。

でも人によっては、物として手に取れることとそうじゃないことの間に大きな違いを感じ取るのではないか、とふと思ったので改めて考えてみたわけです。

たとえばキャンバスや画用紙などに描く絵画。

筆に絵の具を付けてペタペタと描いていきます。今日は、ざっと下描きができました。

翌日、さらにペタペタと描きます。だいぶでき上がってきました。

次の日も描き、かなり完成に近づいてきました。

というわけで毎日完成に向かって少しずつ仕上がっていく作品がそこにあります。手にとってしみじみと眺めてみる。手に触れるキャンバスの質感。その画布の上には絵の具が盛り上がっています。

虫眼鏡でその画をのぞいてみると、そこには絵の具やその下の画布のテクスチャーが拡大されて見えます。仮に顕微鏡でのぞいてみたとしても、そこにはミクロの世界にまで拡大された絵の具が見えることでしょう。

そうです。自分が精魂込めて描いた作品がそこにはあります。抱きしめようと思えば抱きしめられるんですよね、しないけど。

一方、ペイントソフトで描いたCG画像はというと、パソコンのディスプレイの中に表示されています。さわろうと思っても手に触れるのはディスプレイの質感。プリントアウトすればさわれるけど。またどんどん拡大していくと最後はピクセルに行き着いてしまいます。

そして電気を切ると消滅。保存してあるハードディスクがクラッシュでもしようものなら、精魂込めて描いた作品と永遠にお別れです。

というふうに考えてみると、アナログ作品は確固たる存在で、デジタル作品の方は儚い頼りない存在のような気がしてしまいます。

とここまで思いをめぐらしたとき、ふと気付きました。『人生に似ている!』と。

宇宙の悠久の流れの中で、自分の人生なんて瞬きほどの時間も無い儚いもの。そしてほんとに存在しているのかも疑わしい頼りないもの。電気が通っている間だけディスプレイ上に存在するCG画像のようなものではないか。

そう、そうなんですよ!だからデジタルデータは儚いかもしれないけど、価値のあるもの。

つまり『人生はCGだ!』

というわけでデジタルデータに儚さを感じてしまう人は、そこに無意識に人生を投影しているのかもしれません。

でも大丈夫!「我思う、ゆえに我あり」。どんなに自分の存在を疑っても疑いきれない「疑っている自分」がそこに存在するのですから。

さて、上の画像ですが、マルチタッチコミック【ナナのかぼちゃパン】の本編7ページ目です。

「お尻ペンペンだ!」ナナにお仕置きをしようとする雄作。

ナナ、危うし!

途中からマンガ的展開が止まらなくなってしまった( ̄▽ ̄;)。






ナナのテーマ(iBooks Author制作日記18)

2012-12-19 18:56:36 | iPad版制作日記

今日は、iPad用マルチタッチコミック【ナナのかぼちゃパン】の、ストーリーボード7ページ目です。

ナナの父・雄作が、ナナの秘密基地(屋根裏部屋にパン焼き機を持ち込んでるだけ)を突如強襲。その顔には怒りの表情が...必殺のお仕置き炸裂か!?ナナ危うし!!

というシーンです。さあ、いよいよクライマックスに向けてちょっとだけ盛り上がってきました。「え!?...もうクライマックス?( °O °;)」『はい!短編ですから(* ̄∇ ̄*)b』。

以前書いたように、アメリカでは「e-シングル」という短編電子書籍が流行っているそうです。ちょっとした空き時間や移動中に気軽にダウンロードして楽しめるということで、電子書籍初心者にとってもとっつきやすいんでしょうね。

私も、iPad版電子コミックに挑戦して、まず長編の【時空マジシャン】で挫折。次の読み切りの予定でしたが短編とは言い難い【Wings ウイングス】は、retinaディスプレイの高解像度対応がきっかけで同じく挫折。このあたりでは、開発環境のあまりの変化の早さに追いつけなかったというのが実情だったと思います。

そしてオーサリングツール「iBooks Author」に出会って、現在描いている短編【ナナのかぼちゃパン】にたどり着いたというところです。

「iBooks Author」は、ウィジェットという形で動きのあるコンテンツを取り込むことで、私が作りたいマルチメディアスタイルのマンガができます。そのウィジェットを作るためにFlashコンテンツをHTML5用にパブリッシュしてくれる「Toolkit for CreateJS」という拡張機能にタイミング良く出会えたのも大きかったですね。

さあ、というわけで短編【ナナのかぼちゃパン】。短編、短編といいながらなかなか完成しないんですが
( ̄∇ ̄;)ゞ。

残り作業で大変なのはサウンド関連があります。とくに音声が日本語版と英語版をそれぞれ用意してオーサリングしなくてはならないので。

それから「おまけコンテンツ」を付けたいと思っています。おまけの候補としては、「かぼちゃパンのレシピ-あなたも焼ける!ナナのかぼちゃパン」「How to draw マルチタッチコミック」「ナナのパンクイズ」などを考えています。現実的なのは、やっぱり「かぼちゃパンのレシピ」。他の候補は、本編より作るのが大変そうなので。

【ナナのかぼちゃパン】を描いていて、だんだん見えてきました。この物語のテーマが。

はじめのうちは、ナナという小学校4~5年生の女の子のいたずら物語で、単に短編としてまとまりやすかったからなんですけど、実はナナと父・雄作、母・佳恵をめぐる遺伝子の葛藤物語でした。そうだったのか...( ̄△ ̄;)。

といっても今回は母・佳恵は出てこないし、「ナナ登場」ぐらいの内容ですが。

さて、年末年始はマンガ描き放題といきましょうか。

嬉しいような、嬉しくないような。





ちょっとした迷いからの復活(iBooks Author制作日記17)

2012-12-07 18:58:58 | iPad版制作日記

ナナがかぱっと大口を開けてかぼちゃパンにかぶりつこうとするところ...予想外の苦戦( ̄∇ ̄;)。

上の画を見ると、別にそんなに難しそうに見えないでしょ?ところがここにたどり着くまでに、ずいぶん悪戦苦闘してしまいました。

マンガやアニメで「さあ、食うぞー!」というシーンでは、美味しそうな食べ物を前におもいっきり大口を開けて、その直後におとずれるであろう快楽への期待感をキャラと読者・観客が共有ところ。

でも3DCGって大きく口を開けるのが苦手なんですよね。基本的にリアルな人間をベースにしてあるので、顎の造りや物理的な構造を無視してめちゃくちゃデフォルメ可能なマンガやアニメのようにはいかないんです。

それに口の中のすべての1ピクセル1ピクセルに色を置いて描写するので、グロテスクになりがち。

ようやくグロテスクさ回避しつつナナっぽさも表現できて、なんとか上の画にたどり着いたという感じです。

そういえば過去のブログでも同じような大きな口の表現のことを書いた覚えがあるので、今ちょっと調べたところ、ありました...2010年1月6日のブログで書いています。タイトルは「キャーッという口の表現」。

でも内容はずいぶん違うことを書いているんだろうと思ったら、「口の表現で苦戦」とか「3DCGでは...うまくいかない」とか「人体の仕組みや構造を無視したデフォルメは...不気味な顔になる」とか、同じようなことを書いているではありませんかΣ(゜Д゜;)。

う~む、進歩してない...

それに「口腔内が唾液で光っているので...明度や彩度、歯のサイズや色味、舌の生々しさ具合などを調節して何とか完成」とか、つまらないことを長々と書いていて、我ながら改めて読んでみると恥ずかしくなってしまいました。

あんまり細かいこと書いてもしょうがないよね...そんなことだれも求めてないし、おもしろくないし...う~む、このブログのアイデンティティが揺らぐなぁ...

いったい自分はこのブログでなにを言いたいんだ!?...それは、...自分の持ち味を最も活かせるマンガ表現の模索、そしてそこにたどり着くまでの試行錯誤の記録。

だからマンガとその制作に関係したこと意外は極力ブログのネタに取り上げない、という方針。

巷で盛り上がっている話題で書きたくなるときもあるけど、極力避けてきました。だってそういうネタは多くの人が書いてるし、自分ならではの気が利いたこと書けると思わないし。

でもこのブログで書いていることは自分にしか書けないし、たぶん。そう、だからこれでいいのだ!

『おっ、立ち直った(m^ェ^m)』。ブログ書きながら短時間で迷いから復活、よっしゃ!

マルチタッチコミック【ナナのかぼちゃパン】では、ポストワークで2次元ぽい手描き風タッチにしているので、マンガ風デフォルメ表現は比較的取り入れやすいんですが、あまり積極的にやっていません。

というのは、それをやるゆとりがあるのであれば、マルチタッチコミックならではのタッチイベントで何かおもしろいことをやりたいとか、ページを戻ってみたら「さっきと何か違う?」みたいなしかけをしてみたらどうだろう、みたいなところに時間を使ってしまうのでマンガ風デフォルメ表現が後回しになりがちです。

だから先ほどの「キャーッという口の表現」のときから進歩してないのかもしれません。

マンガ風デフォルメ表現が、キャラの魅力や作者の個性と切り離せない重要な要素だということを忘れてはいないのですが。