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動画・音声・インタラクティブ性などで織り成す新スタイルのマンガ制作日記

Paperman

2013-02-26 19:31:01 | Weblog

オンラインで公開されているディズニーの短編アニメ「Paperman」を観ました。

「Paperman」は、現在アメリカで主流の3DCGアニメの長所と、昔ながらの手描きアニメの魅力を斬新な手法で融合させた作品で、アカデミー賞の短編アニメーション部門にもノミネートされています。

今回この「Paperman」を取り上げた理由は、丁度自分も3DCG画像にフィルターや手描き修正を施してセル画風の手法を試行錯誤中だからです。

先日のブログ、「マンガ的線画の魅力」でもまさにそのことを書いたばかりで、「おおっ、オレも時代に乗り遅れてないじゃん!ていうかディズニーと波長があってるかも」とちょっと喜んでしまいました。

その先日のブログで、「3DCGアニメがしばらく続くであろうアメリカでは、セル画調アニメは受け入れられないのでは?」というようなことを書きました。でも、そうでもなさそうです。

「Paperman」の監督が、ディズニーのベテランアニメーターの手描きの作画によるアニメの良さを改めて認識し、3DCGと手描きを融合させる方法を考えたそうです。その結果、「Meander」というソフトウェアを開発することでその融合を実現させたとのこと。

「Meander」をちょっと調べてみたんですけど、3DCGのレンダリング画像にアニメーターがベクトルベースの線画を上から描き重ねることで、セル画調にする技術のようです。えらいざっくりした説明ですいませんが(o^皿^o)ゞ。

3DCGアニメの一連の動きの、最初の部分に重ねるように線画を描くと、その後のアニメの立体の動きに合わせて線画が変形しながら追随するようになってるんですね。

手描きというアナログ的な手法を取り入れるにしても、ちゃんとアメリカ的にシステマチックに、無駄な作業をしないように修正がしやすいように、また一人の熟練の絵師に作業が偏らないように徹底的に合理的に作られているんでしょうね。

私のように、1枚の画像ごとにペンタブで手垢を擦り付けながら、キャラに血を通わせる手法とは大違いです( ̄∇ ̄;)ムウ。

で上の画像は、「Paperman」の冒頭シーンを真似してみました。

駅で電車を待つ主人公とヒロイン。その背後を反対方向の電車でしょうか、勢いよく通過していきます。

主人公の立っている位置に、現在制作中の電子コミック【ナナのかぼちゃパン】の登場人物・雄作を、そしてヒロインの位置にナナを立たせてみました。もちろん最近お気に入りのセル画調にして、「Paperman」と同じくモノクロにしました。

「Paperman」は、ぱっと見完璧に手描きタッチですが、上の画像はけっこう3DCGの質感が残っています。

自分としては今後さらに3DCG感を無くしていくか、まだもう少し試行錯誤が必要です。

もしかしたらアメリカでも予想以上に手描きの復権が早いのかも( ̄ヮ ̄*)フム。





iBookstoreは?(iBooks Author制作日記24)

2013-02-17 19:49:18 | iPad版制作日記

先月、日経新聞に「Appleが月内にも日本語書籍の販売を始めiPadなどに配信」という記事がありましたよね。『おおっ、iBookstoreがついに動き出したか!?』とちょっと喜んだものですが、その後特に動きは見られないようです。

ぬか喜びしないように、そんなに期待していなかったのでまあいいですけど。

iBookstoreに動きがまるっきり無いというわけではなく、夏目漱石や宮沢賢治などの青空文庫のコンテンツが追加されているようなので、じわじわと準備を進めているといったところなんでしょうかね。

iBookstoreで有料電子書籍が販売されるようになり本格的に動き出したら、iBooks Authorを使い始める人達も増えて盛り上がってくるのかもしれません。

さて電子コミック【ナナのかぼちゃパン】の進捗状況は...あまり捗ってません(u_u,)。

上の画像は、雄作がナナのかぼちゃパンを「むしり」っと真っ二つに割るシーン。このあたりは、2ページ内に収めるつもりでしたがちょっと無理そうです。

父・雄作のモットーや口癖を逆手に取り、自分のパンを認めさせようとするナナ。一方、娘の躾けと自分のモットーに板ばさみになる雄作。その葛藤を描くにはもう2ページ必要、というわけで都合4ページに増量しました。

それと各ページ、背景は1枚にしてその上にコマを入れ替わり立ち替わり出現させることで、1ページといえども2~3ページ分の内容を詰め込めるつもりでした。

つまり背景を固定することによって、その上のコマはいろいろ変化しても同じページだぞ、というこだわりというほどではありませんが自分なりのちょっとしたルールにしていました。

でも背景を替えたいという場合もあって、そのあたりは変にルールに縛られるより、臨機応変に替えることにしました。重要なのはどちらがより表現力があるか、なので。

自主制作というのは、自分の裁量一つでこのように決められるところがうれしいですね。

チーム開発の仕事では、まずチーム内でコンセンサスを得て、その後クライアントや代理店の担当者と打ち合わせをして、そこでまた内容が変わったりして、チームに持ち帰り「えーっ、それでOKしちゃったんですか?」なんてもめたり大変です。

とはいえ自主制作は、スケジュールも簡単に変更できちゃうので、いつまでたっても完成しません。

いやいやもう本当に終わらせないと(°°;)。




漫画貧乏

2013-02-08 19:48:48 | Weblog

「漫画貧乏」(佐藤秀峰著)という本を読みました。今日のブログは久々に読書感想です。

以前は自分の電子コミック制作日記の合間に、マンガや小説などの読書感想をブログに混ぜていたんですけどね、最近はもっぱら制作日記オンリーでした。

たしかにここのところあまり本読んでなくて、久しぶりに読んだのがこの「漫画貧乏」。「ブラックジャックによろしく」や「海猿」の佐藤秀峰が、理不尽な漫画業界に七転八倒し、オンラインコミックサイト「漫画 on Web」を立ち上げるまでの悪戦苦闘を記録した本です。

そういえば「ブラックジャックによろしく」は、このブログでも感想を書いたことがあるんですけどいつごろだっけ...と調べてみたら、2007年4月12日のブログでした。もう6年も経つのかΣw(゜д゜* )wなんと!!

病気で苦しむ患者の身になり、その治療にあたる医師の立場になり、その現場に肉薄して描く「ブラよろ」には圧倒されたものでした。医療現場の矛盾や問題に苦悩し戦う主人公と共に、作者・佐藤秀峰の戦う姿も透けて見えるような作品でした。

あれから6年、同じ作者の「漫画貧乏」を読みました。やはりここでも作者は戦っていました。戦場をマンガの出版業界に移して。

本の中で著者は、適正な原稿料を求めるために雑誌編集部に「原稿料の定義」について説明を求めます。

お金の話をすることが下世話という風潮がある日本人としては、なかなか編集者や編集長に「原稿料の定義についておしえてください」とはなかなか聞きにくいですよね。私の偏見かもしれませんが、とくにマンガ家という人種にとっては苦手な分野かもしれません。

私はITの世界で飯を食ってきたんですが、見積書や請求書を書いたり、たまに契約書に印鑑を押したり、自分の仕事の範囲を決めたり、といった制作や開発の現場で実戦を通して否応無く交渉術のようなものを身に付けてきました。

でも昔、マンガの原稿料を少しですがいただいたこともあるし、出版社のメディア事業部の社員として出版の現場で働いたこともあります。

その時の印象としては、お金について他の業界にはないアバウトな考え方というか、後回しというか、「言わなくてもわかってるよね?」的な雰囲気があったような気がします。まあ自分が知っている業界なんて高が知れていますが。

原稿料がいつ支払われるのか分からなくて電話で確認したら、「末締めの翌々末です」とかいわれて、『あ、そうですか...(まだ2~3ヶ月も先か、がっくり)』なんて若かりし頃のほろ苦い気持ちを、今この文章を書きながら思い出しました。

「漫画貧乏」に話を戻すと、マンガの出版業界の理不尽なシステムの中で、割の合わない待遇を押し付けられているマンガ家の状況を変えようと孤独な戦いに挑む著者。

やがて出版不況に加え、時代がデジタルに向かう中、著者はネットの海に漕ぎ出します。

それにしても業界の体質的な「ひずみ」や「問題点」に挑むのは、普通はマンガの中で主人公にやらせるものですが、この著者はリアルの世界で自らやってしまうところがすごいですね。マンガを描くエネルギーをそちらに吸い取られてしまいそうなもんですが...

佐藤秀峰曰く、「漫画はもうかりません。本当だよ。」

しかし、世界に誇るべき日本の文化であるマンガとアニメ...「漫画貧乏」と「赤貧アニメーター」。なぜかくも過酷な現場なのであろうか?

そんな現場で生命を削って紡ぎ出される作品だからこそ、何かが宿るのかも(‐ω‐)ふむ。

あまりにも日本人的すぎる(TДT*)!




マンガ的線画の魅力(iBooks Author制作日記23)

2013-02-01 19:17:01 | iPad版制作日記

「むしりっ」とナナのかぼちゃパンを真っ二つに割る雄作。焼きたてのかぼちゃパンからは、ほかほかと湯気と共に甘く誘うような香りが立ち上るのであった。

というわけで上の画像は、電子コミック【ナナのかぼちゃパン】のストーリーボード用鉛筆画です。

やっぱり線画は、物語やキャラクターを表現するうえで、「強い表現力」を持った画法だと思いますね。誇張したいところだけをダイレクトに加筆して、そうじゃないところは余白にして観る側の想像力にまかせる。描き手の意図を的確に伝えることができる強い表現力が、マンガというメディアに合致しているんでしょうね。

CGのように画面の隅から隅まですべてのピクセルに色が置いてある画像では、線画のような極端な誇張が難しく意図がぼけてしまったり、気色悪い表情になり勝ちです。

「じゃあ線画で描けばいいじゃないか」ということになりそうなもんですけど、そうはいきません。

自分の描きたい電子コミックは、静止画と文字だけで表現する伝統的なマンガではないからです。画像も動かすことを前提としているし、将来的にはマンガの中に出てくるガジェットに読者がアクセスすることができるような仕掛けも施したいという野望も抱いているので。

つまり画像も電子コミックを表現するための要素の一つと考えたとき、上の画像のようなマンガ的線画は向いてないと思うわけです。なぜならすべて併せ持って完成してしまっているから。

「むしり」という文字も含め、パンを二つに割るときの動作を表す線であったり、立ち上る湯気からキャラの気持ちまで、すべて一枚の静止画で完成しています。

なので我々は、紙に印刷されたマンガ雑誌のページから、ラーメンを旨そうにすするシーンでは読みながらゴクッと喉を鳴らし、のだめがピアノを弾けばそのきらびやかな音色が頭に響き、熱血な主人公のパンチと共に筋肉を動かしていたわけです。

そう、マンガ的線画の静止画にはかくもすばらしい表現力があるのです。

ところが、電子コミックを描く他のメディア(アニメ、音声サウンド、インタラクティブの仕掛け等)の中の一つの要素という観点からマンガ的線画を考えた場合、線画のすばらしい表現力が生きないし、コラボレーションすることによる相乗効果が発揮できないんですよね。

という自分なりの結論から、現在のところ他のメディアとのコラボレーションに適した画像/画法として、前回のブログでお見せしたセル画風タッチが気に入っています。

アニメーションの世界では、アメリカでは3DCGアニメーションが主流だけど、日本では手描きプラス部分的に3DCGを使用するなど日本のアニメにあった使用法を模索中という感じでしょうか。

セル画風は、日本では受け入れられると思いますが、世界ではわかりません。

アメリカのアニメ界では3DCG時代がしばらく続くでしょうけど、そのうち手描きの復権があるかもしれませんし、今後どのような時代が来るのか楽しみです。